レポート

若い社長ほど「年収の壁」に関心?2026年キーワードで読む社長年齢別リスク認識

情報統括部 情報統括課
主任研究員 石井ヤニサ

2026年が幕を開けて早々、国際情勢の不安定な状態が深刻化しています。中国は軍民両用品レアアースを含む日本への輸出規制を厳格化すると発表し、日本経済への影響が懸念されています。他方、アメリカはベネズエラで軍事作戦を実行し、同国の大統領夫妻を拘束したほか、グリーンランド領有の意向を示すなど、いわゆる「アメリカ・ファースト」主義を推し進めています。

こうした状況下、帝国データバンクの調査[1]によると、企業が選ぶ2026年の注目キーワードのトップは「チャイナリスク」で7割超となりました。次いで、「アメリカ・ファースト」が6割台で続き、海外取引の有無に関わらず地政学リスクを懸念する企業が多くみられています。また、「円安インフレ」が5割台、「賃上げ圧力」が5割近くで続き、企業のコストアップの原因となるキーワードが上位にランクインしました。

2026年の注目キーワード トップ3

同調査の結果を社長年齢別にみると、すべての年齢層で1位~3位は「チャイナリスク」「アメリカ・ファースト」「円安インフレ」で完全に一致していました。そのうえで特徴的だったのは、社長の年齢が上がるほど「アメリカ・ファースト」や「少数与党」などの割合が一貫して高まっていた点です。また、「チャイナリスク」も経営者の年齢が高い企業ほどより意識する傾向がみられました。実際に、「トランプ氏の自国保護政策や武力行使の動きが続くなか、中国が台湾へどう動くかも不透明。世界経済はさらに混乱し、先が読みづらい年になる」(めん類製造、社長年齢70代以上)という声も寄せられています。

2026年の注目キーワード 社長年齢別差分ヒートマップ

一方で、社長の年齢が下がるほど一貫して割合が上昇したのは「年収の壁」や「AIバブル」でした。特に「年収の壁」は、社長年齢が10歳若い企業の選ばれやすさがおよそ3割高い結果となりました[2]。企業からは「AIの活用は必須。また、働き方改革による労働時間の減少は気になる」(土地売買、社長年齢40代以下)といったコメントがあがっています。

総じてみると社長が高齢である企業ほど、国際情勢や政策決定など“マクロ環境”への関心がより高い一方で、若年層であるほど年収の壁を含む制度改革といった“現場レベルの経営課題”に加え、AIなどデジタル技術への注目度が高まる傾向がみられました。

国際情勢の不安定さに加え、長引く物価高や気候変動リスクなど、2026年は企業経営に大きな影響を及ぼし得る要因が複雑に交錯する一年になりそうです。企業には、地政学リスクをはじめとする多様なリスクが自社に及ぼす影響を正確に見極め、その影響を最小限に抑える備えがこれまで以上に求められます。

さらに、今回の調査で明らかになったように、社長の年齢によって注目するリスクや関心領域には違いがみられました。こうした世代間の認識の差も踏まえつつ、自社にとって最適なリスクマネジメントの在り方を検討していくことが、2026年の経営において一層重要になるといえます。


[1] 帝国データバンク「2026年の注目キーワードに関するアンケート」(2026年1月16日発表)
[2] 各キーワードの選択有無を目的変数とした個別のロジスティック回帰分析を行い、社長年齢(10歳単位)の効果を推定した。推定にあたっては、業界、地域、従業員数、資本金、会社年齢を統制変数として同時に投入した

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