レポート

かつての「趣味」が経済を動かす「原動力」に!?

情報統括部 情報統括課
主任研究員 池田直紀

近年よく耳にする「キダルト(Kidult)」という言葉は、「Kid(子ども)」と「Adult(大人)」を組み合わせた造語です。

子どもの頃に憧れたヒーロー、夢中になったアニメ、集めていたカードなど、それらは単なるコレクションではなく、個人のアイデンティティや感情に深く結びついた存在といえるでしょう。かつては「いい年をして…」という否定的な視線もありましたが、今やキダルト文化は「個性を尊重する時代」を象徴するものとなっています。

株式会社ハピネットの調査によると、全国の18~60歳の男女のうち約535万人がキダルト層に該当し、市場規模は約780億円に達していると推定されています。この数字は、趣味が単なる娯楽にとどまらず、経済を動かす力を持っていることを示しています。

キダルト市場にはいくつかの特徴があります。まず、客単価が高いこと。子ども向け商品に比べ、数万円から数十万円の高額商品も売れています。さらに、クリスマスなどのイベントに限らず、季節を問わず購入される傾向があり、年間を通じて安定した需要が見込めます。そして、撮影技術や情報発信力を持つ層が多いため、SNSでの拡散によるプロモーション効果が非常に高い点も見逃せません。こうした特徴から、かつて「趣味」と呼ばれていたものが、今や経済を動かす「原動力」になりつつあるのです。

いま、最も身近で熱狂的な盛り上がりを見せているのが「シール」の世界です。子どもだけでなく、20代、30代、40代の女性たちを中心に幅広い層が魅了されています。帝国データバンクが実施する景気動向調査では、企業からのコメントとして「世の中のシールブームの影響を受け、近隣の原紙メーカー、印刷会社は生産が追い付かないほどの注文が殺到している」(パルプ・紙・紙加工品製造)といった声が寄せられており、経済効果が顕著に表れています。

子ども時代のときめきを原動力に、年齢の壁を超えて広がり続けるキダルト市場。大人たちが解き放った『純粋な情熱』こそが、今、経済を回す最大のエンジンとなっているといえます。この現象は、これからの日本経済を活性化させる大きなヒントとなるかもしれません。

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