レポート

そのデータ、実態とズレていませんか!?

情報統括部 情報統括課
主任研究員 池田直紀

地域の「人口データ」は、事業計画やマーケティング戦略の根幹をなす重要なデータです。しかし、公的統計で使われる「国勢調査人口」と「住民基本台帳人口」には集計基準の違いがあり、数値に大きな差が生じることがあります。この違いを理解せずにデータを使うと、地域の実態を見誤り、事業の失敗につながりかねません。

まず、住民基本台帳の人口は、市町村役場に住民票を届け出ている人の数を毎月集計したものです。これは法的な記録に基づき、行政サービスや選挙人名簿の基礎データとして使われます。ただし、住民票を実家に置いたまま都市部で一人暮らしをする学生や、単身赴任者などは、実際の居住地にカウントされません。そのため、このデータだけでは実態を把握しきれず、ビジネスチャンスを見落とす可能性があります。

これに対して、今年、10月1日を基準日として調査が実施された国勢調査の人口は、5年に一度「実際に住んでいる場所」を基準で把握する実態調査です。これは、実際にその地域で生活し、消費活動を行っている「居住者の実数」を最も正確に表しています。
たとえば、大学や企業の寮が多い地域では、住民票が実家にある学生や単身赴任者が多いため、住民基本台帳人口は少なく見えてしまいます。しかし、実際にその地域で生活している人は多く、国勢調査人口ではそれが反映されます。これは、そのエリアに存在する潜在的な顧客を推測する上で極めて重要です。

ビジネスにおいては、新しい店舗の出店やサービス提供エリアを検討する際は、顧客実態を表す国勢調査人口を活用した方が良いでしょう。このデータは、小売り店舗、外食産業、賃貸物件などに対する需要を正確に見積もる手がかりとなります。一方で、許認可や公的な補助金の申請など、法的な根拠が求められる場面では、住民基本台帳人口を参照する必要があります。

地域の真のポテンシャルを見極めるには、人口データに限らず「その数字がどのような基準で集計されたのか」を理解することが不可欠です。データの出所を確認し、目的に応じて使い分けることで、より精度の高い戦略立案が可能になります。

20251027_主観客観