レポートVUCAの時代を切り開くしなやかな思考と行動とは?!

情報統括部 情報統括課
主任研究員 池田直紀

現代は「VUCA(ブーカ)」の時代と良く耳にします。昨今の社会・経済の動向を読み解く上でも、この概念は非常に重要です。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、予測不能な現代社会の特徴を表しています。

 現在の世界経済はまさにこのVUCAの様相を呈しています。例えば、米国経済は依然として世界の成長を牽引する力があるものの、トランプ関税と呼ばれる通商政策の行方やインフレ再燃のリスクも残されています。また欧州は、地政学的な問題やエネルギー価格の高騰から景気停滞の影が色濃く、中国経済も不動産問題やデフレ圧力など力強さにやや陰りが表れています。さらに、ウクライナ情勢や中東情勢といった地政学的リスク、そして関税問題といった不確実な要素が複雑に絡み合い、単純な好不況では語れない局面を作り出しています。

 日本経済に目を向けると、まずは長らく継続している「円安」の動向です。輸出企業にとっては追い風となっている一方で、輸入物価の高騰を招き、実質賃金が伸び悩む現状のなかで私たちの生活を直撃しています。さらに、直近ではトランプ関税による米国の通商政策が中長期にわたる構造的な難題を突きつけており、不確実な未来のなかで企業は新たな成長戦略を描く必要に迫られています。

 このような激動の社会変化のなかで、ビジネスパーソンに求められるのは、しなやかな思考と行動ではないでしょうか。

第一に、「情報収集力と分析力」を磨くことです。SNSやニュースから得られる表面的な情報だけでなく、その背景にある構造的な変化、各国政府の意図、主要企業の戦略などを深く読み解くことが重要です。日々の話題に興味・関心を持つだけでも差が表れるでしょう。

第二に、「リスク管理能力」を高めることです。不確実性の高い時代だからこそ、起こりうる複数のシナリオを想定し、それぞれの状況に応じた対応策を事前に準備しておくことが有効です。

そして第三に、「新たな価値創造」への意識を持つことです。生成AIの進化に代表されるように、日々新たなビジネスチャンスが生まれています。異業種との連携やデジタル技術の積極的な活用を通じて、市場の変化に合わせ自社の強みを活かした新しいサービスや製品を生み出す視点が不可欠です。加えて、個人のリスキリングといった取り組みも大切です。

 このVUCAの時代を悲観的に捉えることなく、常に前向きに学び、行動し続けることで、ピンチをチャンスに変え、未来を切り拓いていくことが重要でしょう。

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