情報統括部 情報統括課
主任研究員 石井ヤニサ
大阪・関西万博が13日に開幕しました。
万博開催により、文化交流や国際理解の促進、科学技術の発展とイノベーションの創出が期待されますが、開催国における「経済効果」も万博開催の意義としてあげられるものです。
これまで日本で開催された万博の経済波及効果をみると、1970年の大阪万博は4.9兆円、1985年のつくば万博は4.2兆円、2005年の愛知万博は2.8兆円と試算されています[1]。
特に開催地での効果が大きいことは言うまでもありません。実際、帝国データバンクが愛知万博の最終月である2005年9 月に実施したTDB景気動向調査では、開催地である『東海』の景気DIは調査を開始した2002年以降10地域のなかで初めて判断の分かれ目である50.0に達しました。そのうち、「愛知」の景気DIは万博開催期間中、47都道府県のなかで最高となり、2007年後半まで首位を保っていました。その背景に自動車関連業界の好調や新空港の開港もありますが、万博の開催による効果も大きいと考えられます。
「愛知万博」開催期間における景気 DI の推移

今回の万博に目を向けると、参加国・地域の数は158カ国で、日本開催では過去最多となるほか、2010年の上海万博や2020年のドバイ万博と並ぶ最多級となります。経済産業省の発表によればその経済波及効果は全国で 2.9兆円になると試算されています。
しかし、帝国データバンクが実施した調査[2]では、今回の万博が日本経済のプラス材料として期待できると回答した企業は4割台だった一方、半数を超える企業は期待できないとの見方を示しました。特に開催地から離れた地域では、開催内容の認識不足や盛り上がりを感じない企業が多く、期待度が低くなっています。また、インターネットの普及とグローバル化の進展で情報の入手が容易になっている今の時代では、万博開催に使う多額の費用に対して、以前のような経済・社会への十分な効果が期待しづらいといった声も聞かれました。
確かに、よく比較対象にされている1970年の大阪万博の開催からは社会情勢が大きく変化したため、会場まで足を運ぶメリットや経済・社会への効果が問われるのも無理はありません。
ただ、今回の万博はロボットやAI、水素を活用した新しい生活様式などの体験ができる場が設けられています。来場者にとっては、インターネットでの情報収集と違い、最先端技術を単に「知る」だけでなく、実際に「体験・体感」できるという価値はあるでしょう。また、このような技術の海外へのアピールのほか、今後の国内産業の発展につながることも期待されており、試算されている経済効果を超えるものが得られる可能性もあります。
今回の万博は、建設費の上振れや前売り券の販売目標の未達、会場でのトラブルなどネガティブな情報が多く流れていますが、開催期間は半年とイベントとしては長期のため、期間中に全国的な十分な PR や、運営上の課題に対して改善を重ねていけば、来場者数の目標達成など成功は期待できそうです。 実際、 前回の愛知万博でも当初は来場者数が伸び悩んでいたものの、後半で盛り返し、最終的には目標を大きく上回りました。
今回の万博が全国的・中長期的な経済への好影響のほか、ここで生まれた「価値」や「文化」を次の世代に継承でき、「レガシー」(遺産)を多く残すイベントになることに期待が膨らみます。
[1] 財団法人2005年日本国際博覧会協会・株式会社 UFJ 総合研究所「愛・地球博の経済効果に関する評価 報告書〔概要版〕」(2005年11 月発表)より
[2] 帝国データバンク『「大阪・関西万博」に対する企業の期待度アンケート』(2025年4月10日発表)