レポート「荒廃する日本!?」とならないためには

2025/03/10
景気動向  コラム  建設・不動産

情報統括部 情報統括課
主任研究員 池田直紀

2025年1月28日に埼玉県八潮市の交差点で発生した道路の陥没事故。検証中のため現時点ではっきりとした原因は判明していないが、可能性として老朽化した下水道管の破損が指摘されています。

国土交通省によると日本のインフラ設備の多くは、高度経済成長期前後に整備され、橋やトンネル、上下水道などについては、建設後50年以上経過する設備の割合が急速に高まると予測されています。
とりわけ、橋においては、2030年3月時点において約54%の設備で建設後50年以上が経過するといわれ、15年後の2040年3月には約75%に達し、設備の4分の3が50年以上経過したものとなる見通しです。

今後、日本のインフラ設備にとっては、新規の建設も大切ですが、施設の機能や性能に不具合が発生する前に修繕などの対策を講じる「予防保全」が求められています。

しかしながら、多くのインフラで老朽化が進むなか、実際に建設業に従事できる技術者が急速に減少しています。総務省の労働力調査をみると、2002年の建設業の就業者数は618万人でした。2016年には500万人を下回り、増減を繰り返しつつも、2024年には477万人とおよそ20年間で140万人以上の従事者が減少しています。
就業者全体では、女性や高齢者の就業者が増えているため7%ほど増加していますが、建設業に限ると約23%もの減少となりました。

建設業は、かねてより「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージに代表されるように、肉体労働が多くを占め、必ずしも若い世代に人気のある職種とは言い難い業界です。加えて、高齢化の進む業界でもあるため、多くの熟練の技術者が引退する時期を迎えていることなども減少の要因でしょう。

1980年代のアメリカでは、多くの道路施設などで老朽化が進み、「荒廃するアメリカ」と呼ばれるほど、劣悪な状態に陥っていました。

日本においても、同様なことが生じるかもしれません。国や自治体がインフラ設備に関する予算を計上していても、対応できる企業や技術者が不足していては「荒廃する日本」に陥るまでの時間的余裕は少なく、待ったなしの状況です。
職人が不足する状況は、仕事が受注できないことだけでなく、長年培った技術が業界から消失していくことを意味し、企業が持つ貴重なノウハウが失われる危険性があります。結果として、継続的なインフラ設備の整備や維持更新が困難となり、老朽化施設が引き起こす重大事故なども次々に起こりかねません。

継続的なインフラ設備の維持更新のためには、企業に対する若手技術者の確保と育成、熟練技術者の知識・スキル継承のための支援策が必要であり、業界全体で連携しながら効果的な対策を講じることが急務と言えます。

20250310_主観客観