情報統括部 情報統括課
主任研究員 池田直紀
2024年問題。今年4月より、建設業、トラック・バス・タクシードライバー、医師などの「働き方改革」を進めるため、これまで猶予されていた時間外労働の上限規制の適用がスタート。これにより労働環境の改善が期待される一方で、いずれの業界においても、人手不足問題がより顕著に認識されることとなりました。
特に、すべての産業に影響を及ぼす運送業界では物流の2024年問題として懸念され、「モノが運べなくなる」可能性が指摘されてきました。国の検討会でも2019年度と比較して2024年度は14.2%輸送力が不足するといった試算[1]結果もあります。
2024年度が始まりすでに7カ月が経過していますが、現在の物流の状況はどうなっているのでしょうか。
最新の輸送量のデータをみると、貨物営業用自動車[2]の輸送量は、2024年4~7月で8.6億トンとなっていました。前年同期と比較すると(2023年4~7月は8.3億トン)、3.6%増加しており、過去5年でみても最も高い水準となっています。
貨物営業用自動車の貨物輸送量の推移(各年度4~7月)

時間外労働の上限規制が適用されていますが、現時点では輸送量においては、前年から同水準かそれ以上を維持しています。その裏では、苦しいなかでもパレット輸送や中継輸送の実施などの配送効率の向上をはじめとする企業の各種効率化施策が進んだと考えられ、適正な運賃設定なども徐々に進んできているといった声も聞かれます。
運送業界は人手不足が深刻な状況であるなかで、企業努力により徐々に輸送の効率化が進んできていると言えるでしょう。
しかしながら、依然として燃料費の高止まりや深刻な人手不足など業界全体では厳しい環境に置かれています。2024年問題も解消したわけではありません。さらなる輸送の効率化や自動化などを推進することだけでなく、引き続き私たちの物流に対する行動変容も安定的な物流機能の確保に必要と言えます。
[1] 経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会 最終取りまとめ」内の株式会社 NX総合研究所の試算より
[2] 国土交通省「自動車輸送統計月報」より貨物営業用自動車は、普通車、小型車、特種用途車及び軽自動車による輸送量