レポート2024年3月の景気動向調査

国内景気は、3カ月ぶりに改善 ~ 観光産業が押し上げ、今後は賃上げと為替レートの動向が焦点に ~

2024/04/03
景気動向  アンケート

■調査結果のポイント

  1. 2024年3月の景気DIは前月比0.5ポイント増の44.4となり、3カ月ぶりに改善した。国内景気は、金融政策の正常化がスタートしたなか、好調な観光産業やインバウンド消費の拡大などが好材料となり、3カ月ぶりに上向いた。今後の景気は、金利の動きが注目されるなか、個人消費を中心として緩やかに持ち直していくと見込まれる。
  2. インバウンド需要のほか、春休みを迎え個人消費関連の業種が上向き10業界中8業界が改善した。地域別では、10地域中9地域が改善、1地域が悪化。能登半島地震からの復興が行われるなか、旅行・観光産業は好調。一方で、被災地域からの部品供給の遅れや、春物需要の先延ばしは下押し要因だった。規模別では、「大企業」「中小企業」「小規模企業」が5カ月ぶりにそろって改善した
  3. 帝国データバンクが試算した賃上げ率は平均4.16%。高水準の賃上げが期待されるが、企業からは中小企業を中心に賃上げに対する厳しい声もあげられた。

< 2024年3月の動向 : 上向き >
2024年3月の景気DIは前月比0.5ポイント増の44.4となり、3カ月ぶりに改善した。国内景気は、金融政策の正常化がスタートしたなか、好調な観光産業やインバウンド消費の拡大などが好材料となり、3カ月ぶりに上向いた。


3月は、日本銀行によるマイナス金利の解除および長短金利操作(YCC)の撤廃など、金融政策の正常化が始まった。国内景気は、インバウンド消費が活発なことに加え、国内の観光産業も好調だった。


個人向けサービス業を中心に個人消費関連が上向いたほか、一部自動車メーカーの工場再開や北陸新幹線の延伸などは地域経済を押し上げた。一方で、天候不順による春物需要の先送りは景気を下押しした。

また、物価高にともなう仕入単価上昇の再加速や、不十分な価格転嫁などによる企業収益への影響はマイナス材料だった。

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< 今後の見通し : 緩やかに持ち直し >
今後は、金融政策における金利引き上げの時期や規模などが注目される。また、賃上げやボーナスの増加、減税などによる個人消費の行方が景気回復のカギとなろう。

プラス材料として、消費者の実質賃金の上昇やインバウンド需要の拡大、生成AIの発展・普及にともなう生産性を向上させる設備投資の実行があげられる。

他方、人手不足や2024年問題への対応、為替レートや海外経済の動向などは注視が必要である。


今後の景気は、金利の動きが注目されるなか、個人消費を中心として緩やかに持ち直していくと見込まれる。

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業界別: 10業界中8業界で改善、新年度を控え個人消費が景気を押し上げ

  • インバウンド需要のほか、春休みを迎え「旅館・ホテル」など個人消費関連の業種が上向き10業界中8業界が改善した。また卒業や異動など新年度に向けた季節需要も押し上げ要因だった。他方、金利の引き上げや仕入単価の高止まりなどを不安視する声も多い。
  • 『サービス』(51.0)… 前月比0.6ポイント増。2カ月連続で改善。底堅いインバウンド需要や春休みを迎え、「旅館・ホテル」(同5.3ポイント増加)は2カ月連続で改善した。送別会など宴席が増えるなか「飲食店」(同3.3ポイント増)は3カ月ぶりに改善。また人出の増加とともに「娯楽サービス」(同0.9ポイント増)や、繁忙期を迎える自動車教習所などを含む「教育サービス」(同3.2ポイント増)も3カ月ぶりに上向いた。「専門サービス」(同1.0ポイント増)は経営コンサルタントなどが上向き3カ月連続で改善となった。他方、インボイスなどの制度改正にともなう需要に落ち着きがみられる「情報サービス」(同0.4ポイント減)は50以上を維持しつつも3カ月連続で悪化した。
  • 『不動産』(49.3)…同1.0ポイント増。3カ月連続で改善。「駅近物件を中心に販売状況が好調」(建物売買)など都市部を中心に堅調な不動産ニーズが押し上げ要因となった。加えて、3月から4月にかけ異動や新生活の影響で住宅需要が高まっている。他方、新築物件の高額化や、マイナス金利解除による住宅ローン金利の上昇を危惧するなど、消費者の購買意欲の先行きを懸念する声がいくつも聞かれた。
  • 『卸売』(41.4)…同0.5ポイント増。3カ月ぶりに改善。「外食産業の売上高増加にともない客先からの注文も増加」(酒類卸売)というように「飲食料品卸売」(同0.8ポイント増)は2カ月連続で改善した。「機械・器具卸売」(同0.1ポイント増)は3カ月ぶりに改善、「新紙幣発行にともなう製品の更新などがピークを迎えている」(事務用機械器具卸売)など特需を取り込む企業がみられる。さらに、新年度を控え「紙類・文具・書籍卸売」(同1.9ポイント増)も3カ月ぶりに上向いた。他方、中国経済の不安定さを懸念する声のある「再生資源卸売」(同1.8ポイント減)は3カ月連続で悪化した。
  • 『製造』(40.2)…同0.4ポイント増。4カ月ぶりに改善。外食産業の安定がプラス材料となり「飲食料品・飼料製造」(同1.4ポイント増)は3カ月ぶりに改善し、過去最高水準となった。「自動車向けプラスチック着色剤などの受注が好調」(プラスチック成形材料製造)といった声がある「化学品製造」(同1.3ポイント増)は2カ月ぶりに改善。また依然として影響はあるが大手自動車メーカーの工場再開など「輸送用機械・器具製造」(同2.3ポイント増)は4カ月ぶりに上向いた。他方、客先で在庫が積み上がり、受注量が鈍化といった声が複数寄せられた「電気機械製造」(同1.1ポイント減)は2カ月連続で悪化した。

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規模別: 5カ月ぶりに全規模が改善、「中小企業」は飲食料品関連が押し上げ

  • 「大企業」「中小企業」「小規模企業」が5カ月ぶりにそろって改善した。株価の上昇が投資にプラス材料となったほか、インバウンドや旅行・引っ越し関連も押し上げ要因だった。
  • 「大企業」(48.0)…前月比0.3ポイント増。4カ月ぶりに改善。『金融』は、「新NISAや株高などでファンドの販売が好調」もあり2カ月連続で上向いた。『サービス』では、インバウンド消費や教育サービスが押し上げた。他方、『不動産』は3カ月ぶりに下落した。
  • 「中小企業」(43.8)…同0.6ポイント増。3カ月ぶりに改善。「設備投資が盛ん」「イベントやデパートなどで人出が多くなった」の声もあり、生産・消費の両面で上向いた。飲食料品関連では「客数、客単価ともに増加」など、製造・小売・飲食店が好調だった。
  • 「小規模企業」(42.9)…同0.5ポイント増。3カ月ぶりに改善。インバウンド消費など旅行関連が堅調だった。引っ越しシーズンにおいて家電や家具類の販売が下支えしたほか、賃貸住宅の契約がプラス材料となるなど、『不動産』が上向いた。

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地域別: 10地域中9地域が改善、各地の観光産業が好調

  • 『北陸』『南関東』『東北』など10地域中9地域が改善、1地域が悪化となった。29都道府県が改善した。能登半島地震からの復興が行われるなか、各地の旅行・観光産業は好調。一方で、被災地域からの部品供給の遅れや、春物需要の先延ばしなどは下押し要因だった。
  • 『北陸』(41.4)…前月比1.6ポイント増。3カ月ぶりに改善。域内4県が1年5カ月ぶりにそろって上向いた。震災前の水準には戻っていないが、「北陸新幹線の延伸」「能登半島地震の災害復旧工事」「北陸応援割の効果」などの声は多く、プラス材料が多くみられた。
  • 『南関東』(47.2)…同0.6ポイント増。2カ月連続で改善。域内の「千葉」「埼玉」「東京」が改善、「神奈川」が横ばい。旅行業界で顧客が回復傾向にあるなか、観光関連の景況感が上向いた。他方、春物の需要が先延ばしとなったアパレルなど『小売』は低調だった。
  • 『東北』(39.3)…同0.5ポイント増。8カ月ぶりに改善。域内6県のうち4県が改善、2県が悪化した。外出機会の増加とともに、地域割などにより観光みやげの購入などが好材料。一方で、少ない降雪や住宅着工戸数、部品の供給不足などが下押し要因となった。



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【今月のポイント(1)】2024年の賃上げ動向

  • 帝国データバンクが試算した賃上げ率は平均4.16%。連合の第2回の集計結果は平均5.25%(中小は4.50%)となった
  • 過去と比較し、高水準の賃上げが期待されるが、企業からは中小企業を中心に賃上げに対する厳しい声もあげられた


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【調査先企業の属性】

1.調査対象(2万6,935社、有効回答企業1万1,268社、回答率41.8%)

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2.調査事項

・景況感(現在)および先行きに対する見通し
・経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について

3.調査時期・方法

2024年3月15日~3月31日(インターネット調査)

【景気動向指数(景気DI)について】

■TDB景気動向調査の目的および調査項目
全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万7千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。

■調査先企業の選定
全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。

■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。

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景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。

■企業規模区分
企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。

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■景気予測DI
景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している

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