レポート

【連載】海外政経情勢 第32回「アラブ首長国連邦(UAE)」 ―脱石油で存在感を高めるUAEと直面する地政学リスク

(株)伊藤忠総研

2026/06/26

■SUMMARY

日本企業にとってアラブ首長国連邦(UAE)は、サウジアラビアと並ぶ主要な原油調達先として知られている。一方で、UAEの重要性はエネルギー分野にとどまらない。同国は中東有数の物流・貿易拠点として機能しており、日本から輸出される自動車をはじめとするさまざまな製品が、UAEを経由して中東、アフリカ、南アジアなどへ流通している。日本とUAEの関係は、資源の輸出入にとどまらず、広域市場を結ぶ経済活動のなかでも重要な役割を果たしている。

UAEは世界有数の産油国である。しかし、近年の経済構造を見ると輸出に占める石油の割合は3~4割程度にとどまり、再輸出が大きな比重を占めている。中国やインド、欧米諸国などから集まった製品がUAEを経由して周辺地域へ流通することで、同国は中東地域における商業・物流の結節点として発展してきた。

さらに、貴金属・宝飾品取引が集積し金取引ハブとしての機能やアルミニウム産業の発展など、非石油分野の存在感も高まっている。加えて、太陽光発電や原子力発電を活用した電力基盤の整備を背景に、データセンターなど新たな電力集約型産業の誘致も進められており、こうした動きはUAEが石油収入を基盤としながらも産業の多角化を進めてきたことを示している。

一方で、UAEの成長は対外的な開放性と安定した地域環境によって支えられてきた側面も大きい。中東地域を取り巻く安全保障環境が変化するなかで、資源国としての強みと国際ビジネス拠点としての役割を併せ持つUAEを理解することは、日本企業が中東および周辺市場を捉えるうえでも重要な視点となる。

このレポートでは、UAEの経済構造と近年の政経動向について解説する。まず、原油輸出国でありながら再輸出が大きな割合を占める貿易構造に着目し、資源輸出国と国際的な商業・物流拠点という二つの側面を整理する。続いて、中東最大級の港湾とフリーゾーンを擁するドバイを取り上げ、中継・再分配拠点としての発展の背景を紹介する。

加えて、米国、中国、インド、ロシアなどとの関係を維持しながら発展してきた外交姿勢や、近年の中東情勢の変化が同国の経済活動や国際的な立ち位置に与える影響についても整理し、経済と外交の両面からUAEの特徴と課題を考察する。

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