なんとか王子
8月30日、第45回衆議院議員総選挙が実施され、民主党が308議席を獲得した一方、自民党は119議席にとどまり、民主党の圧勝に終わった。1955年の保守合同以来、一時期を除き54年間にわたり政権党で有り続けた自民党から、民主党を中心とする政権が誕生する。
民主党の獲得議席数は衆議院480議席のうち64.2%を占めるが、これは現憲法下で行われた選挙としては過去最高となった。特に、小選挙区での獲得議席数は定数300議席中221議席と73.7%に達している。しかし、得票率でみると47.4%にとどまっており、前回の郵政選挙で自民党が得た47.7%をわずかだが下回っていた。今後の政権運営次第では、総選挙で得た国民の信認は簡単に失われていくと心して欲しいものである。
ところで、今回の総選挙では解散から投票日までの日にちが長く、さまざまな論点が取り上げられたが、地方分権論議もそのひとつであった。そこで、地方分権に関する企業の意識調査を実施したところ、21世紀に日本の中心的役割を果たすべき社会体制については「地方分権」が61.0%と6割を超え、「中央集権」の14.7%を大きく上回った。また、地方分権の枠組みでは「道州制の導入」(41.7%)が「現行の都道府県中心」(32.0%)より多かったものの、現在の都道府県体制での地方分権の進展を期待する見方も多かった。
道州制であれ都道府県体制であれ、地方分権の進展には、地域にあった政策を実行する財源、権限の委譲とともに人材の確保が欠かせない。それは各地域のリーダーにおいても同様である。リーダーによる権限・財源・人材の活用次第で、地域の発展が大きく左右されることにもなる。
県内総生産(GRP)でみると、47都道府県すべてが先進国の集まりである経済協力開発機構(OECD)に加盟できるだけの経済力を有している。東京都のGRPはオーストラリアの国内総生産(GDP)よりも規模が大きく、大阪はノルウェーに匹敵する。日本ではGRPが47位の鳥取県もアイスランドより大きいのである。
先進国の一国並みの経済規模を持つ日本の地方に対する権力の委譲は、同時に地域間の競争も激しくするであろう。競争が好循環を生めば各地域がともに発展するが、悪くすれば地域間格差が一段と拡大する可能性もある。そこでは、国による関与も当然縮小されていく。地方分権においては、各地方が独立国並みの厳しい覚悟を求められていることも認識しておかなければならないだろう。
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