レポート2016年4月の景気動向調査

低調な景気に熊本地震が追い打ち ~ 天災と人災で企業リスク顕在化 ~

2016/05/09

■調査結果のポイント

  1. 4月の景気DIは前月比0.4ポイント減の42.4となり2カ月ぶりに悪化した。人件費や原料高など企業のコスト負担が徐々に上昇しているほか、熊本地震などでは自動車部品や電気機械などの生産関連や観光関連も影響し、国内景気は再び悪化に転じた。今後の景気は、回復に向けた好材料が乏しいなか、足踏み状態で推移するとみられる。
  2. 業界別では『建設』『製造』『運輸・倉庫』『サービス』など7業界が悪化、『農・林・水産』『金融』『小売』の3業界が改善した。設備投資が低迷するなかで、熊本自身が全国の自動車や電気機械などの生産に悪影響を及ぼした。「旅館・ホテル」は東日本大震災以来の大幅悪化となった。
  3. 地域別では、『北海道』『東北』を除く8地域で悪化した。とりわけ『九州』は、震災で地域の大動脈である九州自動車道が一部不通となり、域内の物流機能が大きく低下した。『中国』は自動車の燃費データ不正問題にともない、域内の自動車関連産業へ影響が及んだ。


< 2016年4月の動向 : 悪化に転じる >

2016年4月の景気DIは前月比0.4ポイント減の42.4となり2カ月ぶりに悪化した。

4月は、熊本地震により宿泊予約のキャンセルが相次いだほか、多くの道路が不通となるなど物流機能の低下を余儀なくされた。また、企業の設備投資に慎重姿勢がみられているなか、大手自動車メーカーによる燃費データ不正問題や電子部品の受注減少も加わり、国内景気がもたつく要因となった。さらに、ガソリン価格の7週連続上昇や原料高にともなう鋼材価格の値上げ、人手不足による人件費の上昇など、企業のコスト負担はじわじわと高まってきた。他方、公共工事や住宅着工は増加したものの、全体をけん引するまでには至っていない。

企業がさまざまなリスクを抱えていたなかで、製造や観光関連などを中心に熊本地震が追い打ちし、国内景気は再び悪化に転じた。

< 今後の見通し : 足踏み状態で推移 >

今後の国内景気は、消費税率10%への引き上げの行方のほか、熊本地震からの早期の復旧・復興に影響されるとみられる。生産停止された自動車や電子部品など工場の本格稼働や、九州全域に対する観光需要の回復がカギを握る。また、家計の収入および支出は伸び悩みが続くなか、長引く個人消費の低迷から脱却するため、消費税率引き上げの再延期を含めた経済対策が望まれる。海外要因では、米国経済や中国経済の成長鈍化がリスクとなるほか、為替相場の動向も注視する必要があろう。他方、訪日旅行客の増加による観光消費の拡大は引き続き好材料である。

今後の景気は、回復に向けた好材料が乏しいなか、足踏み状態で推移するとみられる。

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