■調査結果のポイント
- 8月の景気DIは前月比0.3ポイント減の45.1となり、2カ月ぶりに悪化した。世界的な金融市場の混乱に加え、公共事業の発注遅れや生産活動の弱含みが表れている。国内景気は、中国発の世界同時株安で下押しされたものの、雇用・所得環境の安定もあり、景況感の悪化は小幅にとどまった。今後は、年明けから上向き傾向が強まると予測される。
- 業界別では『金融』『製造』『サービス』など10業界中6業界が悪化した一方、メリハリ消費が進み高額品の購入も増加した『小売』など4業界が改善した。さらに、業種別にみると、悪化が51業種中26業種、改善が23業種となり、景況感は業種間で二分される状況となった。
- 地域別では、『南関東』や『九州』など6地域が悪化、『四国』や『北陸』など3地域が改善、『北海道』が横ばいとなった。公共工事の発注が先送りされるなか、大型台風などの天候不順で店舗休業や漁獲高減少も加わり、地域間で明暗が分かれた。
< 2015年8月の動向 : 小幅な悪化 >
2015年8月の景気DIは前月比0.3ポイント減の45.1となり2カ月ぶりに悪化した。
8月は、公共工事の発注が先送り・縮小されたほか、輸出用工作機械の大幅な受注減少や大手電機メーカーの発注縮小、国内自動車生産の低迷などで生産活動も弱含んだ。また、雇用状況のひっ迫や最低賃金の引き上げにともなう人件費上昇が続くなか、価格転嫁が困難な企業の収益を圧迫している。金融市場では、中国における人民元相場の切り下げや上海株式市場急落を発端として大きく混乱した。他方、有効求人倍率は23年5カ月ぶりの高水準だったほか、お盆期間の天候が安定し旅行需要などが堅調だった。さらに、プレミアム商品券やインバウンド消費の恩恵を受けた『小売』が改善するなど、
業種や地域、企業規模において景況感が二分化される傾向が表れてきた。国内景気は、中国発の世界同時株安で下押しされたものの、雇用・所得環境などは安定的に推移しており、景況感の悪化は小幅にとどまった。
< 今後の見通し : 年明け後に上向き傾向強まる >
中国経済の成長鈍化などで新興国向け輸出の減速による生産調整の長期化や、企業の投資意欲の低下が懸念される。他方、2016年春の大卒採用活動の解禁で、企業の採用活動が活発化するなか、新規求人倍率や有効求人倍率は記録的な改善を見せており、雇用者所得は上昇していくとみられる。また、政治日程の都合などで手薄となっていた経済政策は、来年の参議院選挙に向けて再び加速すると見込まれる。さらに、米国における金利引き上げの後ずれ見通しはプラス材料といえる。
今後の国内景気は、年内はやや弱含みで推移するものの、景気対策の実施などで年明けから上向き傾向が強まると予測される。
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