レポート国際的発言力を高める戦略

2009/10/05
コラム

なんとか王子

10月3日、アイルランドが国民投票でEUの新たな基本条約であるリスボン条約を批准した。これによりリスボン条約は2010年にも発効されることがほぼ確実となった。EUはマーストリヒト条約によって1993年に誕生し、その後、アムステルダム条約やニース条約を経て現在の姿となった。そして、リスボン条約ではEUの大統領や外相級ポストが創設されることになる。


EUはこれまで代表となる人物がおらず、誰と話をつければいいのか分からない、ということが国際的な問題となっていた。大統領、外相の誕生により、今後、巨大な市場や人口を抱えるEUの発言力は一段と増していくであろう。


さらに、主要国首脳会議(G8)はその役割を終えようとしている。G8は1975年に日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツのG5として始まった。その後、1986年にイタリアとカナダが加わりG7に、そして1998年にロシアの参加でG8となった。これに変わる枠組みとしては、G20が最有力となっている。しかし、議論を深めるには20カ国という数は多すぎるのではないか。


そのため、G7ないしG8を再編成すべきだという意見がある。その出発点は、仏、独、伊、英に変わって、EUの参加とすることである。EUは参加枠が減るものの、アメリカを上回る経済圏を代表する発言力は大きい。そこで空いた3枠に新興国が入ることになるが、主に3案が出ている。第一は、EU、日、米、中国、インド、サウジアラビア、露か南アフリカというもの。第二は、EU、日、米、中、サウジアラビア、南アフリカ、ブラジル。第三は、経済規模(購買力平価換算)の上位8カ国、EU、米、中、日、印、露、ブラジル、メキシコである。


ただ、アジアから3カ国が入ることが問題になろう。中国だけでなく、今後は印が日本の経済規模を上回ることもありうるのである。日本は戦略的に国際社会における発言力を高めていかなければ、G7/G8から脱落する可能性も否定できない。鳩山首相は先の国連気候変動首脳会合において、温室効果ガスを2020年までに1990年比25%削減を打ち出した。これは産業界にとっては大きな試練になりかねないが、国益を考えれば一つの戦略として評価できるのではないだろうか。

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