レポート監督官庁としての自覚を

2009/06/03
コラム

Caddis

日本漢字能力検定協会をめぐる背任事件で、京都地検は、前理事長が退職金名目などで協会の資金約5,600万円を不正に引き出し、株取引などに個人流用した疑いが強まったとして、業務上横領容疑で立件する方針を固めた。


この問題を受け監督官庁である文部科学相が、2009年6月に実施される予定の検定試験を中止させる考えを示すなど、資格取得を目指す多くの受験生や教育関係者にも混乱が広がった。検定試験の中止は回避されたが、日々努力を続けてきた受験生達の気持ちをどう考えたのだろうか。また、協会を公益法人として認可し、指導・監督する立場である文科省としての責任をどのように取るのだろうか。


昨年秋にも、農薬やカビに汚染された事故米が流通し、焼酎や菓子などの原料として使用され国民の安全を脅かした事件があった。監督官庁である農水省は米穀販売会社に過去5年間で約100回も立ち入り検査をしながら不正を見抜けなかったという。1年平均で20回近くも検査をしても見抜けないようでは、検査が全くムダな内容だったのか、または会社に手心を加えていたのかと疑わざるを得ない。農水省は今後の検査体制強化の方針を打ち出したものの、当時の農水相が「人体に影響がないことは自信を持って申し上げられる。だからあんまりじたばた騒いでいない」とあきれるばかりの発言を行い、国民の安全な食を守る農水省トップとしての自覚の無さを露呈、国民から大きな批判を受けた。


文科省、農水省のみならず、各省庁は自らの監督責任を強く自覚するとともに、抜き打ちでの検査方法や、検査官の交代でなれ合いを無くすなど厳格な検査体制を整え、不正の撲滅に向けた改革を行うべきである。国民が納得する対処と責任ある再発防止策を講じるまでは、決してうやむやにしてはならない。

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