レポート展望リポートで浮き彫りになった日銀の景気見通し

2008/05/07
景気動向  コラム

大和

4月30日、日銀は「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で「今後も緩やかな成長を続ける」と景気回復の基調に変わりはないとの判断を示した。一方で2008年度のGDP成長率は下方修正し、金融政策についても「機動的な運用を図る」との表現を使ってこれまでの利上げ路線からの変更を表明した。


景気判断、GDP予測、金融政策の3つのポイントのなかで今回、特に注目すべきは金融政策である。
これまで日銀は、アテネ五輪が開催された2004年度以降、景気が下振れ傾向にあるなかでも、ゼロ金利政策の解除(2006年)や追加利上げ(2007年)を強行してきた。


しかし、2007年中盤以降の日銀はこれまでとは変わって、利上げに対して慎重なスタンスをとっている。景気判断に対する見方で政府と正面切って対立してでも、一時的な消費者物価指数の上昇を金融引き締めに利用してきた姿勢とは明らかに異なっているのだ。


このことは、「今後も緩やかな成長を続ける」としながらも、日銀が景気の先行きに対して強い不透明感を持ち始めていることを浮き彫りにしている。


現在、景気が弱含んでいる背景には、米経済の減速や原油・素材価格の高騰が挙げられているが、もっとも問題なのは日本の内需が低迷していることだ。


福田政権は消費者行政の充実を掲げはしたものの、年金問題や後期高齢者医療制度など国民に優しくない政策が目立ち、支持率は急落している。政府には、減税政策や地方への税財源の効果的な再配分の検討など景気の底上げに向けた具体策の実施が強く求められる。

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