■調査結果のポイント
- 6月の景気DIは前月比0.6ポイント減の44.7となり、2カ月ぶりに悪化した。燃料価格の上昇や公共工事の減少、ギリシャのデフォルト懸念など悪材料が多かったうえ、大雨による天候不順も景気を下押しした。国内外において懸念材料が増しており、国内景気は停滞感が強まっている。今後の国内景気は、回復力の感じられない状況が続くと見込まれる。
- 業界別では『建設』『製造』『卸売』『運輸・倉庫』など10業界中8業界が悪化した。『建設』は、公共工事の減少が続いたうえ、企業の設備投資も不調で空調設備機器や電気通信工事などの悪化要因となった。6月の景気は『建設』と『卸売』の2業界で、悪化幅全体の5割超を占める結果となった。
- 地域別では、『北海道』や『北陸』、『九州』など10地域中9地域が悪化した。『九州』では、鹿児島市で6月の降水量が100年ぶりに記録を更新するなど、各地で大雨が続いた結果、工事の進捗遅れが出た建設や、さらに日照不足による野菜等の価格が上昇したことで農林水産や小売などに悪影響を及ぼした。
< 2015年6月の動向 : 停滞 >
2015年6月の景気DIは前月比0.6ポイント減の44.7となり2カ月ぶりに悪化した。
6月は、円安などを背景とした企業業績の改善を受けて、日経平均株価が取引時間中としては1996年12月以来、約18年半ぶりの高値を付けた。しかし、ガソリンや軽油価格が10週連続で上昇しているほか、人手不足による人件費上昇や円安にともなう原材料価格の上昇など、徐々にコスト負担が高まっている。さらに、公共工事の発注件数および金額が減少し、地域経済の景況感を悪化させる要因となった。また、『九州』など西日本を中心とした大雨による天候不順も悪影響を及ぼした。一方、海外ではギリシャが債務問題をめぐり欧州連合(EU)などとの合意にいたらず、デフォルト(債務不履行)への懸念が高まったことで、月末にかけて金融市場は大きく動揺することとなった。
国内景気は、国内外において懸念材料が増しており、停滞感が強まっている。
< 今後の見通し : ほぼ横ばい >
従業員の平均給与総額が2カ月連続で増加し、夏の賞与も増加見通しとなるなど、企業の賃金上昇は好材料となるほか、大型のインフラ投資も高水準で推移するとみられる。しかしながら、国家安全保障関連法案に関する国会審議の影響で、新成長戦略や骨太の方針など経済政策について停滞感が強まる可能性がある。さらに、海外ではギリシャにおける事実上のデフォルトにより国際金融市場の不透明感が増してきたほか、中国の成長鈍化も懸念材料といえよう。
今後の国内景気は、国内外でのリスクの高まりもあり、回復力の感じられない状況が続くと見込まれる。
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