今から10年前の2008年、「日本でいちばん大切にしたい会社」というベストセラーが誕生した。同書では、従業員や取引先などステークホルダーすべての幸せを掲げ、成長とともに地域社会への貢献を果たす中小企業が紹介され、企業のあるべき姿として多くの賛同を得た。
著者の坂本光司氏(前・法政大学大学院教授)らを中心に発足した「人を大切にする経営学会」は、現在、年に一回、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞を開催し、そうした経営を実践する各地の企業を継続的に紹介している。同学会理事・事務局次長の藤井 正隆氏に、受賞企業を通じて見える企業経営の目指す姿を聞いた。
ー8回目の開催となる今年3月には、15社が表彰されました。これまでの受賞企業に共通する特徴はありますか
「会社が何のために存在しているのか」という経営理念が明確です。経営トップがそれを発信し、従業員や取引先に浸透しています。日本でこうした経営理念がある企業は約7割と言われています。ところが、近時の企業不祥事をみると立派な経営理念がありながらそれに合致した経営管理や行動が実践されていない。従業員にも取引先にもダブルメッセージとなっているのです。そのため、経営理念というものに対して、懐疑的な見方をする人がいるのも事実でしょう。
しかし、受賞企業は経営理念を実現するべく信念をもって取り組み、その結果として顧客や地域から評価され、成長して います。