2020年は、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大が経済活動を直撃し、IPOにおいても逆風が吹くとみられたが、結果として93社(TOKYO PRO Market を除く)が新規上場を果たし、2008年以来の過去最高を記録した。国内外の経済が緩やかな回復基調をみせるなか、2022年には東証の市場再編を控え、IPOの世界にも変化が訪れようとしている。主幹事証券会社としてトップの社数を誇る野村證券株式会社の公開引受部次長、松下剛士氏に、2020年のIPOの振り返り、東証の市場再編による影響や注目点について聞いた。
2020年のIPOの特徴
-2020年のIPO を振り返り、特徴をお聞かせください
新規上場会社93社のうち、マザーズ市場への上場が7割、業種では通信・情報業、サービス業が全体の7割弱を占めるなど、例年と比べて市場や業種の傾向に大きな変化はみられませんでした。事業内容に注目すると、SaaS(Software as a Service)、DX(デジタルトランスフォーメーション)、働き方改革、AI(人工知能)、Fintech 関連の企業が目立ちました。地域別では、東京(66件)が圧倒的に多い結果となりました。
-規模の観点ではいかがでしょう。9月にはキオクシアホールディングスの上場が延期されて話題となりました
規模別では、上場時時価総額が100億円未満の企業が全体の2/3を占めました。ディールサイズ(公募金額と売出金額の合計額)でも50億円未満が8割以上です。どちらの基準でも1,000億円を超える大型IPOがなく、前年同様、規模として小・中規模案件が多い年となりました。