株式会社帝国データバンクは、保有する企業データベースのほか、登記情報などを基に2024年に全国で新設された法人を対象に調査を行った。
SUMMARY
2024年(1‐12月)に全国で新設された法人は、2025年4月時点で15万3789社(前年比0.6%増)判明し、2年連続で増加した。2023年の15万2910社を上回って過去最多を更新し、新たに市場へ参入する企業の増加が続いている。企業新設時の代表者平均年齢(起業年齢)は48.4歳と上昇が続き、特に定年退職後の「シニア層」=60歳以上での起業増が背景にあるとみられる。
設立時点の代表者情報や本社情報は、最新のデータベースを基に、最も古い情報を基に算出・推計した。2020年~2024年の5年間のデータについては、最新のデータを基に遡って再集計している
2024年に「新設」 全国で15.4万社、年間最多を更新 シニア層の起業が拡大
2024年(1-12月)に全国で設立された新設法人は15万3789社に上った。前年(23年)を0.6%・879社上回り、2年連続で増加したほか、集計可能な2000年以降で年間最多を更新した。
2024年の新設法人数は、10年前の2014年(12万279社)に比べて年間の設立数は約1.28倍に増加したものの、前年からの伸び率は23年(7.9%増)に比べて大幅に低下した。低コストで手続きが簡便な合同会社の増加が続いた一方で、事業会社として設立が一般的な株式会社や、福祉事業などで多い社団法人で設立数が減少した。また、2023年に発生したインボイス(適格請求書)制度への対応を目的に法人格を取得する小規模事業者の動きが一巡したことも影響した可能性がある。
なお、2024年の休廃業・解散件数(6万9019社・前年比16.8%増)、企業倒産件数(9901社・同16.5%増)と比べると、新設法人の増加率は比較的低水準にとどまったものの、新設法人数は企業倒産・休廃業・解散の総数に比べ1.95倍と、2倍近い水準となった。

起業時点での代表者年齢が判明した新設法人の年齢をみると、2024年に新設された法人の代表者の平均年齢(起業者平均年齢)は48.4歳(速報値)だった。前年の47.7歳から0.7歳上昇し、2000年以降で最高齢を更新した。起業・法人化する代表者の年齢は、近年急速な高齢化が進んでいる。
年代別にみると、最も多いのは「40代」で全体の32.0%を占め、2年連続で割合が上昇した。コロナ禍前には4社に1社を占めていた「30代」は18.9%と、2000年以降で初めて20%を下回った。また、「20代以下」(5.2%)も2016年以来8年ぶりの低水準となるなど、総じて若年層・現役世代の起業が縮小傾向で推移し、シニア層・早期リタイア層の起業割合が上昇傾向で推移している。「50代」(25.2%)は20年ぶりの高水準となったほか、「60代」「70代」は共に2000年以降で最高だった。

特に、一般企業の多くで定年退職のボーダーラインとなる「60歳以上」の割合は18.6%を占め、前年(17.0%)を上回って過去最高となった。インターネットの活用に比較的慣れている世代であることに加え、大手企業を中心に副業・兼業を解禁する動きが広がり、趣味や特技を生かした起業の心理的なハードルが低くなっていること、政府の「スタートアップ育成5か年計画」など官民一体での起業支援が充実していることなどが、退職後のセカンドライフとしてスモールビジネスを志す中高年世代の起業を後押ししているとみられる。
マンションの管理組合法人、前年からの減少率最大
法人格別にみると、最も多いのは「株式会社」の10万868社で、全体の3分の2を占めた。2年連続で10万社を超えたものの、2年ぶりに前年を下回った。他方、低コストでの設立が可能で、利益配分面などで経営の自由度が高い「合同会社」は4万2133社と、前年から4.4%増加し、2000年以降で最多を更新した。その結果、株式会社と合同会社で全体の9割を超えた。

2024年に50社以上が設立された法人格別を対象に、前年からの増加率をみると、最も高いのは「農事組合法人」(135→204社)で、前年比51.1%の増加となった。「土地家屋調査士法人」(16.7%増)は、2020年に法人化への要件緩和が行われたことなどを背景に増加傾向が続いた。太陽光発電や投資事業などで多くみられる「特定目的会社」(8.0%増)、NPOを中心に「社団法人」(3.5%増)などでも増加した。
前年から最も減少した法人格は、共用部分の維持管理といった機能を担う「管理組合法人」(84→67社、20.2%減)だった。マンション建設ラッシュが続いた2023年に比べ、工期の延長による供給までの期間が長期化し、発売戸数が減少したことも、同法人の設立数に影響を及ぼしたとみられる。以下、「協同組合」(19.3%減)、「司法書士法人」(12.8%減)と続き、士業関連法人の減少が目立った。「社会福祉法人」(9.1%減)は50社の設立にとどまり、2000年以降で最少だった。
「東京都」が最多4.7万社 市区郡でトップは「港区(東京都)」、上位8区を東京都で占める
都道府県別(本社所在地、設立当時)にみると、設立数で最多は「東京都」で4万7779社だった。次いで「大阪府」(1万6272社)、「神奈川県」(9913社)と、社数上位の都道府県はいずれも大都市部が中心だった。前年に比べて増加率で最も高いのは「石川県」の18.0%増(773社→912社)だった。「富山県」(10.7%増)、「福井県」(7.8%増)をはじめ、北陸3県ではいずれも新設法人数が大幅に増加した。
石川・富山両県では、ボランティア団体や建設業をはじめ令和6年能登半島地震の復興需要を見込んだ法人設立が多かったとみられるほか、福井では北陸新幹線の敦賀延伸効果といった要素も影響したとみられる。他方、前年から減少率が高かったのは「大分県」(8.5%減)のほか、「島根県」(7.8%減)、「福島県」(7.7%減)などであった。

市区郡別(本社所在地、設立当時)にみると、設立数で最多は「港区」の6821社だった。次いで多い「渋谷区」(5767社)、「中央区」(4640社)と合わせ、上位6位までいずれも東京都だった。東京都以外の市区郡で10位以内となったのは、7位の「大阪市中央区」(2075社)、8位の「大阪市北区」(1832社)の2区のみだった。大阪市中央区は、2000年以降の集計で初めて年間2000社を超えた。
前年からの増加率で最も高いのは「恵庭市(北海道)」で、前年比62.5%増(32→52社)だった。年間で50社を超えたのは2019年(56社)以来、5年ぶり。先端半導体の国産化を目指すラピダスが進出する千歳市や、ボールパークの開業により市街地開発が進む北広島市など、隣接自治体の開発に伴う新設法人が増えている可能性がある。以下、「富田林市(大阪府)」(59.3%増)、「福生市(東京都)」(58.8%増)、「大阪市都島区」(56.9%増)が続いた。
「シニア世代」の起業増加、スモールビジネス化が進む
2024年は前年を上回る法人数が新設されたものの、増加率は大幅に低下した。しかし、近年は新しいビジネスを展開する「起業」に加え、給与収入の延長線上で副業的に事業活動を行う「パートタイム」起業、定年退職でリタイアしたシニア層の「1人起業」など、起業の中身はスモールビジネス化の進行がみられる。
近年は政府による「スタートアップ育成5か年計画」をはじめ、ベンチャーキャピタルや企業、行政など官民一体で起業支援が行われている。加えて、地域金融機関をはじめとして新設法人の経営者保証を不要とする創業支援融資を取り入れる事例が増えているほか、事業計画の策定や取引先の開拓など、幅広い経営サポートを展開することで経営悪化のリスクを最小限に抑制する取り組みも官民一体となって進んでいる。こうした創業支援の追い風も背景とした、起業に対する心理的・金銭的ハードルの低下は、「起業を身近なものとして、新たなビジネスチャンスが生まれる」という点で良い影響を及ぼしていくだろう。

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