レポート

最低賃金に関する企業の実態調査(2026年9月)

採用時の最低時給1,255円 最低賃金との差、2年連続で縮小 最低賃金の引き上げペース「速すぎる」42.3%、「妥当」34.4%

SUMMARY

企業が従業員を採用する際の最低時給は平均1,255円となり、前年から50円上昇した。一方、2026年度の最低賃金の全国加重平均1,177円との差は78円と、2025年の84円から6円減り、2年連続で縮小した。企業が事業を継続しながら支払えると考える最低時給の上限は平均1,275円だった。また、近年の引き上げペースを「速すぎる」とした企業は42.3%で最多となり、賃金上昇への対応が企業経営の課題となっている。

※株式会社帝国データバンクは、全国2万2,095社を対象に、最低賃金に対する企業の実態についてアンケート調査を実施した。なお、最低賃金に関する調査は、今回で5回目

※「最低時給」は、従業員を採用するときの最も低い時給の平均値で小数点第1位を四捨五入している。なお、日給・週給・月給の場合は、時給に換算している

 調査期間:2026年9月14日~9月30日(インターネット調査)
 調査対象:全国2万2,095社、有効回答企業数は1万235社(回答率46.3%)

従業員採用時の最低時給は平均1,255円 賃金の引き上げが進む一方、賃上げ余力の低下が続く

正社員、非正社員を問わず、企業が従業員を採用する際の最も低い時給(以下、最低時給)は、平均1,255円となり、前年から50円上昇した。厚生労働省が発表した2026年度の最低賃金(以下、最低賃金)の全国加重平均1,177円を78円上回った。

採用時の最低時給と最低賃金の差額をみると、2024年の112円から2025年は84円、2026年は78円へと2年連続で縮小した。最低時給そのものは上昇しているものの、最低賃金との差は縮まっている。企業からは、「最低賃金の改定にともなってパート従業員の賃金は5年間で30%以上上昇した。一方で、粗利益は同じようには増えておらず、正社員の賃上げ原資が削られている」(紙類・文具・書籍卸売、東京都)との声が聞かれた。

年度別 最低賃金と最低時給 推移

業界別にみると、『不動産』が1,318円で最も高く、次いで『サービス』が1,296円、『建設』が1,293円と続いた。一方で、『農・林・水産』は1,155円、『小売』は1,172円、『製造』は1,203円となり、全体平均を下回った。

さらに、51業種別でみると、「情報サービス」が1,443円で最も高かった。同業種からは、「AIを使いこなせる人は効率よく働けるため、単価を上げることは可能だが、採用する人材の水準も上がり、必然的に少数精鋭の体制となる」との声が聞かれた。専門性や生産性を重視する業種では、採用する人材に求める水準とともに、提示する賃金も高くなる様子が表れている。

他方、最低時給が低い水準にある業種では、賃金上昇分を価格転嫁しにくい状況がうかがえる。企業からは、「今後も最低賃金の引き上げが続く場合、値上げするしかない。ただ、値上げすれば売れ行きが落ちる。値上げをしなければ会社が立ち行かなくなる」(飲食料品小売、山形県)との声が寄せられた。

2026年 採用時の最低時給 ~業界別~

都道府県別の最低時給、東京都が1,410円でトップ

都道府県別に最低時給をみると、「東京都」が1,410円で最も高く、次いで「神奈川県」が1,381円、「埼玉県」が1,322円、「大阪府」が1,318円となった。一方で、最も低かったのは「鳥取県」の1,107円で、「秋田県」が1,119円、「鹿児島県」が1,123円と続いた。最も高い「東京都」と最も低い「鳥取県」では303円の差があり、採用時の最低時給には地域によって大きな開きがみられた。

各都道府県の最低時給と最低賃金の差額をみると、「東京都」が130円で最も大きく、次いで「埼玉県」が126円、「福井県」が121円となった。他方、「鳥取県」は17円にとどまり、「秋田県」が29円、「徳島県」と「鹿児島県」がそれぞれ33円だった。東京の近隣県では、最低時給を東京の水準に合わせないと人が集まらないために、差額が大きくなる傾向となっている可能性がある。

最低賃金と最低時給 一覧 ~都道府県別~

企業が支払い可能と考える最低時給の上限、平均1,275円

企業に、事業を継続しながら支払うことが可能な最低時給の上限を尋ねたところ、平均は1,275円となり、採用時の最低時給1,255円を20円上回った。両者の平均額は近く、企業の採用時給が、企業自身が想定する最低時給の上限に近い水準となっている可能性が示された。

また、上限額を『1,200円台以下』(「1,100円未満」「1,100円台」「1,200円台」の合計割合)とした企業は合計52.8%と半数を超えた一方、「1,500円以上」は14.4%にとどまった。政府が遅くとも2030年代前半までのできる限り早期に全国平均1,500円の達成を掲げるなか、現時点では、企業が事業を継続しながら支払えると考える水準との間に隔たりがあることがうかがえる。企業からは、「単価は価格競争で下がる一方、人件費や経費は物価高の影響で上昇しており、毎月の賃金を支払っていくことが厳しくなっている」(建設、福岡県)との声が聞かれた。販売単価が上がらない一方でコスト負担が増し、賃上げ原資の確保に苦慮する企業の状況が表れている。

事業を継続しながら支払うことが可能な最低時給の上限

最低賃金の引き上げペース、42.3%が「速すぎる」

近年の最低賃金の引き上げペースについて尋ねたところ、「速すぎる」が42.3%で最も多く、「妥当である」は34.4%、「遅すぎる」は6.2%、「分からない」は17.1%だった。2024年以降、最低賃金は2024年に51円、2025年に66円、2026年に56円と、毎年50円を超える引き上げが続くなか、4割超の企業が現在のペースを速いと受け止めている。

最低賃金の引き上げペース

業界別にみると、「速すぎる」では、『小売』で58.9%と最も高く、次いで『農・林・水産』が56.9%、『運輸・倉庫』が51.5%、『製造』が50.4%となり、4業界で半数を超えた。一方で、『建設』では「妥当である」が43.0%となり、「速すぎる」の29.3%を13.7ポイント上回った。

企業からは、「最低賃金の引き上げペースが速く、社内規定や各種手当なども含めて改定する必要があるが、事務処理が追いつかない。価格上昇分を転嫁する必要があるものの、取引先の理解を得られておらず、公共工事の発注金額も上昇率に見合っていないと感じる」(建設、高知県)との声が聞かれた。引き上げの頻度や幅だけでなく、企業が賃金体系や取引価格を見直すための時間も、ペースを評価するうえで重要な要素となっている。

「速すぎる」の割合 ~業界別~

まとめ

企業が従業員を採用する際の最低時給は平均1,255円となり、3年連続で上昇した。2026年度の最低賃金の全国加重平均1,177円との差は78円となり、2024年の112円、2025年の84円から縮小が続いている。人材確保に向けて企業が最低賃金を上回る時給を設定する一方、最低賃金の引き上げによって、その差が徐々に縮まっている状況がうかがえる。都道府県別では、東京の近隣県において、最低時給を東京の水準に合わせないと人が集まらないため、差額が大きくなっている可能性がある。

また、企業が事業を継続しながら支払えると考える最低時給の上限は平均1,275円だった。上限額を『1,200円台以下』とした企業は52.8%と半数を超えた一方、政府が目標とする「1,500円以上」は14.4%にとどまった。現時点では、企業が支払い可能と考える水準と政府が目標とする全国平均1,500円との間には乖離がある。さらに、近年の引き上げペースを「速すぎる」とした企業は42.3%で最多となった。一方で、「妥当である」も34.4%を占めた。

最低賃金の引き上げは、従業員の生活を支え、人材を確保するうえで重要となるが、企業にとっては対象者の時給を改定すれば対応が終わるものではない。新人と既存従業員との賃金差が縮まると、経験や役割に見合った評価が得られていないという不満が生じ、処遇に対する納得感を損なう可能性がある。そのため、企業には既存従業員の賃金も含め、就業規則や各種手当など賃金体系全体を見直す対応が求められる。とりわけ、販売単価や受注額の引き上げが人件費の増加に追いつかなければ、こうした見直しを含む継続的な賃上げは難しい。政府は、最低賃金の引き上げと並行して、適正な価格転嫁や労務費を反映した取引価格の形成、生産性向上・省力化などへの支援を進め、企業が賃上げの原資を継続的に確保できる環境を整えることが求められよう。

<参考>最低賃金の引き上げに対する企業からの声

20261016_最低賃金に関する企業の実態調査(2026年9月)

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