レポート

「昼間の海」もう限界? 主要ビーチ6割で人流減少 

猛暑が迫るビーチの「ナイトエコノミー化」

暑すぎる夏が、ビーチの風景を変えている。1シーズンで利用者が概ね10万人以上となる全国の主要な海水浴場63地点を対象に調査を行ったところ、6割で前年から人流が減少していたことが分かった。利用時間帯も、日差しの強い昼間から夜間へと移りつつあった。「暑すぎて海水浴どころではない」という声も聞かれるなか、海辺の過ごし方には変化の兆しが表れている。


株式会社ドコモ・インサイトマーケティングの協力を得て、携帯位置情報による人流データ「モバイル空間統計®」を基に、帝国データバンクが分析した。環境省「各都道府県水浴場位置図」を基に、利用者が概ね10万人以上となる全国20道府県・63の海水浴場(ビーチ、500m四方)を対象に、2025・2026年の「海の日」における、8時~20時の間に滞在した累計人口を調査した。

この結果、2026年の海の日におけるビーチの人流は、約6割・39地点で前年から「減少」した。このうち、減少率が2割以上と大きく落ち込んだ地点は7地点となったほか、1割以上減少した地点も13地点を占めた。なかでも、日中に累計1万人以上の人流があるビーチをみると、「須磨海水浴場」(兵庫県)は前年から19.9%減少したほか、首都圏からの利用者が多く、ビーチが多数集積する神奈川県でも、「逗子海岸」が9.5%減、「三浦海岸」が9.4%減、「片瀬東浜」が0.5%減となるなど、人流の減少がみられた。

また、北海道や東北といった比較的冷涼な地域に加え、沖縄などのリゾート地でも前年から利用者が減少したビーチがみられ、「暑い地域から涼しい地域へ移動する」といった単純な構図は確認されなかった。神奈川県内では人流が大きく減少したビーチがある一方、「由比ガ浜」では4割超の増加となり、利用者が訪問先を選別する動きもみられた。海水浴需要そのものが一律に縮小しているというよりも、人気や利便性の高いビーチへ利用者が集中する傾向が示唆された。

背景には、猛暑による利用行動の変化に加え、ビーチを取り巻く環境の変化もある。近年は、運営を支えるライフセーバーなどの人手不足を背景とした営業時間の短縮、「海の家」の減少、飲酒やバーベキューに関する規制強化など、利用環境にも変化が生じている。こうした要因が複合的に作用した結果、アクセス性や周辺施設の充実度などを重視して、行き先や利用時間帯を選ぶ傾向が強まっている。行動と環境の変化が、夏場のビーチのあり方そのものを変化させている可能性がある。

時間帯は「昼→夜間」に

2026年のビーチ営業では、危険な暑さが続く昼間の直射日光を避けて、夕暮れ時のマジックアワーや夜間に訪れる人流の増加が特徴的な動きとなっている。各ビーチにおける各時間帯の人流平均をみると、午前中から夕方にかけてはいずれも前年を下回る推移が続いた。一方、日没間近の17時以降は前年に比べて人流が増加し、19時~20時にかけては前年比で最大2割増と、涼しくなる夕方~ナイトタイムにかけてビーチ周辺に人が集まる傾向が分かった。

近年は特に、夕涼みや夜の海辺の雰囲気を楽しみに来る層をターゲットに、「涼と体験」を掛け合わせたナイトエコノミー型の営業を展開するビーチがみられるようになってきた。遊泳ができなくとも、夜間帯まで「海の家」など飲食店を営業し、アルコール類の提供による客単価の上昇を見込むほか、ライトアップなど体験型ナイトレジャーの演出で、デートや女子会などの利用を促進し、購買力の高い顧客層を誘客できるメリットがあるためだ。

こうした動きは、首都圏近郊のビーチで顕著にみられる。いなげの浜に隣接する「稲毛海浜公園」(千葉)は、8月限定でナイトプールの営業時間を20時まで延長する。「逗子海水浴場」や「片瀬東浜・西浜」を含む江の島エリアでも、21時まで営業する海の家は少なくない。

「暑すぎる夏」企業活動にも影響

日中の気温が35度を超える猛暑や、40度超えの酷暑の常態化は、企業活動にも影響を与えている。帝国データバンクの調査では、猛暑・酷暑により企業の50.0%が業務に「支障が出た」と回答した[※1]。屋外作業を伴う建設業や農林水産業といった業界での割合が高いものの、小売り・サービス業においても「支障が出た」割合は4割以上と高い。暑すぎることで顧客の「外出控え」を招き、店舗などへの来客数の減少といった影響を生むためだ。2025年の猛暑でも、売り上げの増加や新商品の開発など、自社の業績・企業活動に「プラス」の効果がみられた上場企業が114社に上った一方で、自社の業績・企業活動に「マイナス」となった企業は69社に上り、前年から増加した[※2]。大手ショッピングセンターやスーパーなど涼しい屋内施設を開放することで、「涼を求める」顧客を取り込んだ企業があった一方、アウトドアやガーデニングなど屋外活動の商材を扱う業態では顧客が減少するなど、「暑すぎる夏」は業態によっても受け止め方の二極化がみられる。

気候変動を背景に、海水浴は「日中に遊ぶ」という従来の概念に変化が生じつつある傾向が、ビーチへの人流動向で判明した。ただ、こうした状況に対し、ビーチ関連業者でも、昼間の集客から涼しくなる夕方以降へ営業の軸足を移しつつある。ビーチにおけるナイトエコノミーへのシフトは、猛暑という避けられない環境変化に対し、気象条件に合わせてターゲティングや営業時間を柔軟に組み替えるビジネスモデルの最前線といえるかもしれない。

※「モバイル空間統計」および「モバイル空間統計」ロゴは、株式会社NTTドコモの登録商標です

[※1]猛暑・酷暑に関する企業の動向アンケート(2026年7月)

[※2]上場企業「今年の猛暑」影響調査―2025年10月(2025年10月)

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