レポート

SDGsに関する企業の意識調査(2026年)

「SDGsに前向き」は52.6% 2年連続で低下 ~実践企業は過去最高も、インフレ、人手不足が下押し要因に~

SUMMARY

『SDGsに前向き』な企業は、前年比0.7ポイント減の52.6%となり、2年連続で低下した。SDGsへの取り組みは企業経営の中で一定の定着をみせるものの、インフレや人手不足などによる経営環境の厳しさから、取り組み意向が縮小している可能性が懸念される。一方で、SDGsに取り組む企業の約半数(47.8%)は何らかの成果を実感している。特に、「従業員満足度の向上」「従業員の定着率向上」など、人材面での効果が表れていることがうかがえる。

※株式会社帝国データバンクは、全国2万2,572社を対象に、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に関する企業の見解についてアンケート調査を実施した。なお、SDGsに関する調査は2020年以降、毎年実施し、今回で7回目

  • 調査期間:2026年6月17日~6月30日(インターネット調査)
  • 調査対象:全国2万2,572社、有効回答企業数は1万413社(回答率46.1%)

『SDGsに前向き』な企業、2年連続で減少

自社におけるSDGsへの理解や取り組みについて尋ねたところ、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は前年比0.1ポイント増の30.3%となり、2020年の調査開始以降で最高を更新した。一方、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は同0.8ポイント減の22.3%だった。この結果、『SDGsに前向き』な企業は同0.7ポイント減の52.6%となり、2年連続で低下した。

また、「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」は34.3%、「言葉は知っているが、意味もしくは重要性を理解できない」は8.2%だった。両者を合わせた『SDGsを認知しつつも取り組んでいない』企業は前年比0.7ポイント増の42.5%となった。

実際に取り組む企業の割合が過去最高となる一方、取り組みの裾野は縮小している。

SDGsへの理解や取り組み

実際に企業からは、「公共的な役割から積極的に展開しているが、周囲にはSDGs疲れがみられる」(放送、北海道)との指摘や、「SDGsの理念や必要性は理解しているが、企業としてのメリットを感じにくい」(情報サービス、山形県)などの声か聞かれ、取り組みの効果を実感できていない様子もうかがえる。SDGsの認知や理解が一定程度浸透する一方で、企業が新たに取り組む動機は弱まりつつあるとみられる。とりわけ中小・小規模企業では、人材や資金の不足が実践に向けた壁となっている。「手間と資金がかかるため、業態や業績によって取り組めるかどうかが変わる」(飲食料品卸売、千葉県)、「社内に取り組みを推進できる人材がいない」(飲食料品・飼料製造、山形県)といった声も寄せられた。原材料価格や人件費の上昇、人手不足など事業経営に直結することへの対応が優先され、SDGsに振り向けられる時間や労力が限られていることが、取り組み意向層の縮小につながっている可能性がある。

一方、取り組みが定着している企業では、「会社のメインテーマが、未利用資源の有効活用になっている」(飲食料品・飼料製造、静岡県)、「CO₂排出量の抑制と障害者雇用に力を入れている」(運輸・倉庫、栃木県)などの声も寄せられた。持続的な取り組みにつなげるには、SDGsを独立した活動として扱うのではなく、省エネルギー、生産性向上、人材確保、取引先との関係強化など、自社の経営課題と結びつけることが重要になりそうだ。

「SDGsに取り組んでいる」、業界別では「金融」「製造」が先行

業界別に「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業の割合をみると、『金融』は41.8%(前年41.7%)、『製造』は37.8%(同37.7%)と引き続き高い水準を維持した。製造業からは、「昨年、ソーラー発電システムを導入し、電気エネルギーの地産地消を実施。SDGs宣言に続いてSBTiも取得した。環境対策なしに企業の成長はないと考えている」(鉄鋼・非鉄・鉱業、群馬県)、「コストと社会貢献のバランスを取っていくことが重要」(輸送用機械・器具製造、東京都)との声も寄せられ、環境対応を企業の成長や事業継続と結び付けながら取り組む姿勢が表れている。

前年から上昇幅が最も大きかったのは『運輸・倉庫』で3.5ポイント増加した。「CO₂の排出量抑制および障害者雇用に力を入れている」(運輸・倉庫、栃木県)との声があがったほか、「SDGsが叫ばれる以前から取り組みを行っており、業務への支障は特に出ていない」(運輸・倉庫、神奈川県)とする企業もあった。環境負荷の軽減に加え、雇用など幅広いテーマを日常の事業活動に取り込む企業がみられる。

一方で、低下幅が最も大きかったのは『不動産』で3.7ポイント減少した。同業界からは、「持続可能な開発目標が大き過ぎて分からない。地域や業種、人など、もっと狭い範囲での目標にしてもらうと分かりやすい」(不動産、福岡県)といった声が聞かれた。目標の範囲が広く、具体的な行動や成果を捉えにくいことが、取り組みを進めるうえでの課題となっている様子がうかがえる。

 SDGsに取り組んでいる企業の割合 ~業界別~

いずれかのSDGs目標に力を入れる企業、調査開始以来初の減少 取り組みの広がりは一服

SDGs17の目標のうち、現在力を入れている項目を尋ねたところ、働き方改革や労働者の能力向上などを含む「働きがいも経済成長も」が33.3%で最も高かった(複数回答、以下同)。次いで、再生可能エネルギーの利用などを含む「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(23.6%)、カーボンニュートラル製品の使用などを含む「気候変動に具体的な対策を」(23.1%)、リサイクル活動などを含む「つくる責任つかう責任」(21.9%)が続いた。人材・雇用に関する目標と、エネルギーや脱炭素、資源循環といった環境関連の目標が上位を占め、自社の事業活動と結び付けやすいテーマを中心に取り組んでいることが分かる。

SDGs17目標のうち、現在力を入れている項目(複数回答)

企業からは、「SDGsを意識して取り組んでいるつもりはないが、自然とその方向に向かっている」(教育サービス、岩手県)との声なども聞かれた。SDGsを明確に意識していなくても、働き方の改善や省エネルギー、資源の有効活用など、日々の事業活動が結果としてSDGsにつながっている企業も多数みられた。

いずれかのSDGs目標に力を入れている企業の割合は72.0%となり、前年の73.2%から1.2ポイント低下した。推移をみると、2020年の57.3%から2021年に67.9%へ大幅に上昇し、その後も緩やかな上昇傾向をたどってきたが、2026年は調査開始以降初めて低下に転じた。

企業規模別にみると、「大企業」は81.5%で、前年の83.5%から2.0ポイント低下した。「中小企業」も70.4%と、前年の71.4%から1.0ポイント低下し、いずれの規模でも前年を下回った。「大企業」の低下幅が「中小企業」を上回ったことで、両者の差は前年の12.1ポイントから11.1ポイントへと1.0ポイント縮小したものの、依然として「大企業」が「中小企業」を10ポイント以上上回っている。

いずれかのSDGs目標に力を入れている企業は、企業規模を問わず、引き続き7割を超えて推移している。一方で、今回の結果からは、企業における取り組みの広がりは一服した様子も表れている。

いずれかのSDGs目標に力を入れている企業 推移 ~規模別~

今後、最も取り組みたい項目では、「働きがいも経済成長も」が11.7%でトップとなり、全項目の中で唯一1割を超えた。次いで、「パートナーシップで目標を達成しよう」(6.7%)や「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「住み続けられるまちづくりを」(ともに6.4%)が上位に並んだ。

SDGs17目標のうち、今後最も取り組みたい項目

SDGsに取り組む企業の47.8%が成果を実感 人材・組織運営の項目が上位

いずれかのSDGs目標に力を入れている企業に取り組みによる成果を尋ねたところ、『成果あり』の企業は47.8%だった。具体的な成果では、上位3項目は、人材や組織運営に関する成果となった。「従業員満足度が向上した」(16.4%)と「従業員の定着率が上がった」(8.9%)が上位に入り、SDGsへの取り組みが、働きやすい職場環境の整備や従業員の意識、定着など、社内の変化として表れている様子がうかがえる。また、「経営方針等が明確化された」(11.6%)も1割を超えており、SDGsを自社の経営方針や事業活動と結び付けることが、経営の方向性を社内で共有する契機となっていることが示された。


SDGsへの取り組みによる成果~上位10項目~(複数回答)

実際に成果が表れた企業からは、「空調設備業者として、CO₂やフロンの排出について顧客に周知した結果、フロン点検などを数件受注したほか、従業員のフロン排出抑制法への理解も深まった」(建設、静岡県)との声が寄せられた。また、「形骸化することなく会社の方針として社内に浸透したので、好循環の仕組みづくりができた」(機械・器具卸売)との声もあり、SDGsへの取り組みが新たな受注の獲得や従業員の知識向上につながったほか、経営方針の浸透に寄与した事例もみられた。

一方で、「『SDGs宣言』を作成し、社員の意識向上に努めているが、実際の企業活動とリンクしておらず、目に見えた効果はない」(建材・家具、窯業・土石製品卸売、北海道)との声もあがった。SDGsへの取り組みを自社の経営方針や具体的な事業活動と結び付け、成果を可視化することが課題となっている。

まとめ

本調査の結果、SDGsの「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は30.2%から30.3%に微増となり過去最高を更新し、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」企業は23.1%から22.3%へ低下した。このことから、SDGsが企業経営に定着する一方、取り組みの裾野は拡大局面から選別局面へ移りつつあることが示唆された。さらに、いずれかの目標に力を入れる企業も72.0%と、調査開始以降初めて前年を下回った。認知や理念への共感だけでは、新たな実践層を増やしにくくなっている。

SDGsに取り組んでいる企業のうち、『成果あり』と回答した企業は47.8%で、従業員満足度の向上や経営方針の明確化、定着率の改善など、組織運営面での成果が表れている。今後は、SDGsを独立した社会貢献活動として掲げるのではなく、人材確保、生産性向上、省エネルギー、コスト削減、取引拡大など、各社の経営課題に組み込めるかが焦点といえる。また、活動と事業の接続、効果測定、社内共有には改善余地がある。

国連の「持続可能な開発目標報告2026」では、中東情勢の軍事的緊張が原油価格や物価の上昇につながり、各国財政を圧迫することで、教育、保健、クリーンエネルギーなど将来への投資余力を狭める可能性を示した。SDGsの進展は企業や政府の意思だけでなく、国際情勢や経済環境にも左右される。2030年までにSDGsを達成するためには、政府、金融機関、取引先には、資金支援に加え、業種別の実践例や効果測定の方法を示し、外部環境が悪化しても取り組みを継続できる基盤づくりが求められる。経営資源が限られる中小企業では、既存業務をSDGsの観点から整理し、負担の小さい施策から始めることが現実的といえる。理念を掲げるだけではなく、経営課題の解決と社会的成果を同時に追える実行体制を築くことが必要となろう。

20260723_SDGsに関する企業の意識調査(2026年).pdf

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