レポート

企業の想定為替レートに関する動向調査(2026年度)

企業の想定為替レートは平均147円87銭、150円台後半を想定する企業が最多 ~実勢レートとの差はわずかに縮小、なお円安進行に追い付かず大きな開き~

SUMMARY

2026年度の企業の想定為替レートは平均1ドル=147円87銭となり、前年5月時点(139円64銭)から8円23銭の円安水準となった。一方、企業ベースでは150円台後半を想定する層が厚く、33.6%が「156~160円」と回答し、最も割合が高かった。『建設』『小売』『不動産』『運輸・倉庫』が144円台の一方で、『農・林・水産』は156円60銭を想定。直接輸出企業では「大企業」が「中小企業」より6円23銭円安の水準を想定。

  • 調査期間は2026年5月18日~5月31日。調査対象は全国2万2,749社で、有効回答企業数は1万521社(回答率46.2%)。分析対象は想定為替レートを設定している企業2,290社。なお、想定為替レートに関する調査は2017年以降、毎年実施し、今回で10回目

はじめに

日米の政策金利の差が急拡大した2021年以降、外国為替レート(円・ドル相場)は円安が進行した。その間、日本銀行による三度の政策金利引き上げで、日米金利差が縮小したことなどにより、一時的に円安進行に歯止めがかかった。しかし、中東情勢を背景としたエネルギー供給不安や原油価格の上昇圧力などもあり、再び円安傾向が続いている。円安はインバウンド需要や輸出にとっては好材料となり得るものの、原油など原材料の輸入物価を通じて仕入単価が急上昇し、企業の利益を圧迫する要因ともなっている。

企業が業績の見通しを作成する際に想定(設定)した名目為替レートと、実際の為替レートに大きな乖離が生じた場合、その乖離が企業の事業遂行や業績に大きな影響を与える。とりわけ、価格転嫁力が弱く為替ヘッジ手段が限られやすい中小企業では、想定為替レートと実勢レートの乖離が収益計画や資金繰りを通じて、企業の与信にも関係してくる。

そこで、帝国データバンクは、企業の想定(設定)為替レートについて調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2026年5月調査とともに行った。

【図表1 外国為替レートの推移】

【図表1 外国為替レートの推移】

想定為替レートは平均1ドル=147円87銭、昨年より8円あまり円安方向に修正

2026年5月時点での企業の想定為替レートは、平均で1ドル=147円87銭(以下、1米ドル当たりの円レートを示す)となった。前年5月の139円64銭から8円23銭、円安方向に修正された。

ただし、企業数ベースでは平均よりも円安水準に厚みがある。回答企業を円高水準から円安水準へ順に並べた中央値は155円、最も回答が多かった最頻値は160円だった。平均値が147円台にとどまったのは、「130円以下」とする企業が10.1%あるなど、比較的円高水準に設定する企業も一定数あり、平均値を押し下げているためとみられる(図表2)。

【図表2 想定為替レートの分布状況】

【図表2 想定為替レートの分布状況】

分布をみると、「156~160円」を想定する企業が33.6%と最も高かった。次いで、「146~150円」が18.8%、「151~155円」が16.5%で続いた。企業の約7割が146円~160円の幅で想定為替レートを設定している。

企業からは、「為替レートが130円くらいにならないと、商品を仕入れても高くて誰も買ってくれない」(織物製寝着類製造、想定:145円)や「為替状況の悪化やインフレ、戦争の影響でコストが増加、また消費者の懸念で消費マインドが悪化してしまう」(デザイン、同150円)など、為替変動が自社の売り上げや消費マインドに与える影響を懸念する意見があがった。一方で、「宿泊事業は、円安の影響もありインバウンドが好調。当面は、現状の為替水準が見込まれ、好調さは維持できるものと考えている」(不動産管理、同150円)といった、インバウンド需要への好影響を期待する声も聞かれた。

業界別の想定為替レートに開き、『農・林・水産』は156円60銭

業界別に想定為替レートをみると、『農・林・水産』が156円60銭と最も円安水準だった。一方で、『建設』や『小売』『不動産』『運輸・倉庫』は144円台となり、比較的円高水準の想定となった。

最も円安水準だった『農・林・水産』と、最も円高水準だった『建設』の差は12円56銭にのぼった。業界ごとの輸出入の有無や原材料・燃料価格への感応度、価格転嫁のしやすさなどの違いが、想定為替レートの水準にも表れている可能性がある。

【図表3 想定為替レート~業界別~】

【図表3 想定為替レート~業界別~】

「直接輸入」だけを行う企業は「直接輸出」だけの企業より8円14銭の円安水準を想定

輸出・輸入別に想定為替レートをみると、事業として直接または間接的に「輸出」を行っている企業では150円54銭となった。

他方、「輸入」を行っている企業では151円89銭となり、輸出企業を1円35銭上回る円安水準だった。特に、「直接輸入のみ」(152円38銭)を行っている企業は、「直接輸出のみ」(144円24銭)を行っている企業よりも8円14銭の円安水準を想定していた。

規模別では、「大企業」は151円53銭、「中小企業」は147円84銭、中小企業のうち「小規模企業」は146円25銭だった。規模が大きい企業ほど想定為替レートは円安水準となっており、海外取引の多さや為替管理体制の違いが反映されている可能性がある。特に「直接輸出のみ」の企業でも、大企業は中小企業より6円23銭円安の水準を想定しており、輸出入の有無だけでなく、企業規模によっても為替前提に差が生じている。

【図表4 想定為替レート~規模、輸出入別~】

【図表4 想定為替レート~規模、輸出入別~】

まとめ

本調査によると、2026年度の想定為替レートは平均1ドル=147円87銭であった。昨年5月時点の想定為替レート(139円64銭)と比べ、企業の想定は8円あまり円安方向に修正された。また、「直接輸出のみ」を行う企業と「直接輸入のみ」を行う企業では、収益への影響が逆方向に働くこともあるため、直接輸入企業の方が8円14銭の円安水準を想定していた。

2017年以降、実際の外国為替レートと想定レートに大きな差異はなかったが、2021年後半から2025年度にかけて、実勢レートは想定レートよりも大幅な円安水準が続いていた(図表5)。2026年4月以降の実勢レートは160円前後で推移しており、依然として10円以上に及ぶ想定為替レートとの乖離が生じている。一方で、経済のファンダメンタルズを反映する為替レートである購買力平価(PPP)は106~108円程度[1]で推移していることから、中長期的な為替変動は今後も想定される。想定為替レートと実勢レートの乖離が、輸出入取引を通じて企業収益を下押しするリスクには、引き続き注視する必要があろう。

【図表5 外国為替の実勢レートと想定レート】

【図表5 外国為替の実勢レートと想定レート】


[1] 出所:公益財団法人国際通貨研究所「ドル円購買力平価と実勢相場」より、2026年4月の購買力平価(CPIベース)を参照

20260612_企業の想定為替レートに関する動向調査(2026年度)

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