レポート

中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響アンケート

原油高騰・供給不安、企業の9割超で「マイナス」 半年続けば、43%が事業縮小 ~『製造』は3カ月未満でも22%が限界 サプライチェーンリスク懸念も~

2026/04/09

SUMMARY

中東情勢の緊迫化による原油価格の高騰や供給不安が経営に「マイナス影響がある」企業は96.6%となった。「自社で使用する車両の燃料費の上昇」が7割超で最も高く、「原油由来の原材料価格の上昇」や「物流費・輸送費の上昇」が6割台で続いた。また、今回の事態が半年程度長引いた場合、43.8%の企業が主力事業の大幅な縮小を余儀なくされる可能性があることが示唆された。特に『製造』では、22.8%が3カ月未満でも経営に重大な影響が及ぶとみている。

株式会社帝国データバンクは、中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響について企業へアンケート調査を行った。
・調査期間:2026年4月3日~4月7日(インターネット調査)
・有効回答企業:1,686社

原油高騰・供給不安、企業の9割超で「マイナス」

中東情勢の緊迫化を背景とする原油価格の高騰や供給不安は、自社の企業経営にどのような影響を及ぼしているか(見込みを含む)を尋ねたところ、「マイナス影響がある」と回答した企業の割合が96.6%と9割を超えた。一方で、「影響はない」は2.3%、「プラス影響がある」は0.1%だった。

マイナス影響の内訳をみると、「自社で使用する車両の燃料費の上昇」が73.4%で最も高く、7割を超えた(複数回答、以下同)。次いで、ナフサなど「原油由来の原材料価格の上昇」(66.7%)、「物流費・輸送費の上昇」(62.0%)、「取引先からの値上げ要請の増加」(60.5%)が6割台で続き、コスト負担の増加に関する項目が軒並み高水準となった。さらに、「電力コストの上昇」(51.1%)も半数超の企業が直面しているほか、「原油由来の原材料の調達難」(46.3%)や「サプライチェーンの不安定化(調達リスクの増加)」(32.5%)など原料調達の難しさをあげる企業も少なくない。

業界別にみると、『運輸・倉庫』の「自社で使用する車両、または設備の燃料の調達難」(55.9%)、『製造』の「原油由来の原材料の調達難」(68.9%)、『小売』の「消費者・顧客の需要減退」(64.3%)が全体より20ポイント以上高く、業界ごとに影響の現れ方に違いがみられた。

中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響

左図:企業経営への影響、右図:企業経営への「マイナス影響」(複数回答)

企業からは、「トラック事業のため燃料の高騰と調達難の影響は避けられない。燃料サーチャージや補助金で対応するしかない」(運輸・倉庫)や「自動車整備業では燃料だけではなく、エンジンオイルなど機械油系も使用している。仕入先での在庫切れが出始めているほか、仕入価格も4月から20~30%上昇とダブルパンチの状態」(メンテナンス・警備・検査)といった声が聞かれた。

また、「原材料としてのポリエチレン、各種プラスチックフィルム、溶剤などの調達難や価格上昇が大きく影響している。原材料の入荷がないと、製造が不可能となり、稼働停止となる。顧客の生産活動も滞ることが予想され、顧客の倒産リスクが増大している」(パルプ・紙・紙加工品製造)のように、価格高騰による負担増に加え、原材料不足による生産停滞を懸念する声も相次いでいる。ほかにも、「塗料用シンナーの調達が困難になっている。塗料についても、メーカーから大幅な値上げの通知が来ており、一部の塗料は注文しても納品されない。このままでは、仕事ができなくなる」(建設)や、「自社で販売している商品の包装(ビニール製品)の調達が困難になってきたため販売の制限、中止で対応する予定。今後は外注しているクリーニング、リネンも値上がりしてくるため、宿泊料金の値上げも検討している」(旅館・ホテル)、「農機具の燃料費の上昇と肥料の高騰の影響がある」(農・林・水産)など、エネルギーや原油由来の原材料を多く使用する産業にとどまらず、影響は幅広く波及している。

半年続けば、43%が主力事業の縮小を想定 『製造』は3カ月未満でも22%が限界

現在の原油価格の水準またはそれ以上の水準がどの程度継続すると、自社の主力事業の大幅な縮小に至ると想定するか尋ねたところ、「3カ月以上~6カ月未満」と回答した企業の割合が26.7%で最も高かった。また、短期間でも経営に重大な影響が及ぶとする「3カ月未満」が17.2%だった。これらを合計すると、『6カ月未満』は43.8%に達しており、今回の事態が半年程度長引いた場合、4割超の企業が主力事業の大幅な縮小を余儀なくされる可能性があることが示唆される。

一方で、現時点では経営に重大な影響はないとする「1年以上耐えられる」は18.3%にとどまっている。これらを踏まえると、今回の事態が1年程度続いた場合、事業縮小に至る企業は6割超に達する見込みである。

業界別にみると、「ガソリンスタンド」や「自動車・同部品小売」を含む『小売』では『6カ月未満』が54.5%と、全体を10ポイント以上上回った。

また、『製造』では「3カ月未満」が22.8%となり、短期間でも経営に重大な影響が及ぶとみる企業が比較的多い結果となった。企業からは、「値上げを示唆していた原料メーカーの一部では、適用時期が当初想定より前倒しされている。影響を試算したところ、数カ月で年間利益が消失しかねない水準だった。従来は値上げ交渉の過程で一定の猶予があったが、今回は即時対応を迫られている。加えて、仮に値上げを全面的に受け入れても調達不安が解消される保証はなく、極めて異常な状況である」(化学品製造)といった声が聞かれ、事態の深刻さがうかがえる。

原油価格高騰が続いた場合の主力事業縮小に至るまでの想定期間

左図:主力事業縮小に至るまでの想定期間、右図:主力事業縮小に至るまで『6カ月未満』の割合~主要業界別~

まとめ

本アンケートの結果、中東情勢の緊迫化を背景とする原油価格の高騰や供給不安が経営に「マイナス影響がある」と回答した企業は9割を超えた。具体的な影響としては、燃料や原油由来の原材料価格の高騰などコスト負担の増加に関する項目が上位を占めた。また、原料調達の難しさとサプライチェーンリスクを懸念する企業も少なくない。影響は、エネルギーや原油由来の原材料を多く消費する運輸・製造関連にとどまらず、建設、農業関連など幅広い業界に波及している。

今回の事態が半年程度長引いた場合、4割超の企業が主力事業の大幅な縮小を余儀なくされる可能性があることが示唆された。なかでも、『製造』では「3カ月未満」と回答した企業が22.8%となり、短期間でも経営に重大な影響が及ぶとみる企業が比較的多い結果となった。

トランプ米大統領は日本時間4月8日午前、イランが事実上封鎖してきたホルムズ海峡を開放することを条件に、攻撃を2週間停止することでイランと合意したと表明した。ただし、今後の情勢とそれにともなう企業活動への影響には引き続き注意が必要な一方で、すでに顕在化している影響や課題への対応が急務となっている。本調査の結果からは、「顧客に対して早期に値上げのアナウンスを行い、五月雨式に価格改定を実施」といった価格転嫁の動きや、「シンナーの調達難を受け、塗装仕様からメッキ仕様への切り替えを検討」など原材料の代替化を進める事例が確認された。加えて、「新たな調達先の模索」や「運行計画の再構築」など、中長期的な事業継続を見据えた対応に着手する企業もみられる。

中東情勢をはじめ予見が難しい地政学的リスクが高まる環境下では、こうした企業努力に加え、原油価格高騰・供給不安の緩和に向けた政府の取り組み、ならびに経営への影響が大きい企業に対する支援など、幅広い施策が求められよう。

企業からの声(抜粋)

主なコメント

業種51分類

具体的な影響

燃料費に加え、肥料や包装資材、運送費など、すべてのコストが上昇している

農・林・水産(野菜作農)

顧客から、石油由来製品の備蓄スペースを追加で確保できないかとの相談があった

貸事務所

価格高騰よりも、原油に由来する資材の調達ができなくなることで、生産活動そのものができなくなるリスクが高い 

輸送用機械・器具製造

原材料の価格高騰に加え、価格転嫁や供給調整に多大な労力を要している。原材料の調達難で新規案件の延期・中止が発生し、改革案件への取り組みも停滞・遅延している

化学品製造

ナフサの入手が困難になれば、グローブや血液回路、シリンジなどが製造できなくなる。透析治療への影響が大きい

機械・器具卸売

ニトリル手袋や食品トレーの供給に支障が出ており、惣菜・鮮魚部門の運営に、コロナ禍を想起させる影響が出ている

各種商品小売

国内線・国際線航空運賃に対する燃油付加運賃の値上げで、旅行需要の減退が懸念される

運輸・倉庫(国内旅行)

原油による直接的な影響はないが、顧客の業績悪化にともなう発注減少が懸念される

情報サービス

燃料(重油)の価格高騰や調達難による影響に加え、取引先における原料・燃料の調達不足にともなう生産減少により、廃棄物量が減少する影響も出る

医療・福祉・保健衛生

営業上ガスの使用量が多く、原油高の影響は極めて大きい。間接的にも、消費者の節約志向が強まり、消費マインドを押し下げる要因となっている。顧客への価格転嫁は避けられないほか、予定していた設備投資についても、縮小や中止を検討せざるを得ない状況にある

娯楽サービス
(フィットネスクラブ)

対応策

原材料および燃料の備蓄を行うとともに、商品の値上げを実施している

農・林・水産(酪農)

中東情勢が沈静化するまでの期間に左右される問題であり、日本独自で講じられる対策には限界があると感じる。燃料への補助金についても、インフレを助長するだけで、その場しのぎにとどまる懸念がある。原油高騰をきっかけに、自社のコスト構造を見直す機会と前向きに捉えたい

農・林・水産
(まき網漁)

受注済み案件について、物価スライドによる請負金額への着実な上乗せを行っている。また、材料の先行発注も検討している

建設(建築工事)

半年程度先までに必要な資材をリストアップし、調達先と早めに交渉を行う予定である

建設(内装工事)

影響の度合いに応じ、段階的な対応を想定している。軽微な段階では在庫の積み増しを行い、中程度では主要商品のみに生産・販売を絞り緊急値上げを検討する。最悪の場合には、キャッシュ確保と支払い体制の維持を最優先とする

飲食料品製造

石油由来の原料に調達不安があるため、自社消費分については既に在庫を積み増している

化学品製造

原料メーカーから安定供給を受けられないため新規取引先に打診しているが、新規取引という理由で取引自体を断られるケースもある

機械製造

原料・資材の代替品を検討するとともに、サプライチェーンの再構築や施工法の変更による使用資材の削減を進めている

その他の卸売

通常より多めにキャッシュを確保し、資金繰りの状況にこれまで以上に注意を払っている

専門商品小売

長距離輸送の運行計画を見直して、近場輸送へ移行する。乗務員に対するエコドライブなどの教育のほか、スペアタイヤ、不要な道具をおろして燃費の向上を図るなどさまざまな対応を行っている

運輸・倉庫

(一般貨物自動車運送)

燃料価格が一定の基準価格を超えた場合には、燃料サーチャージを導入することで顧客の了解を得ている。価格不安を払拭し、供給を優先して考える必要がある

運輸・倉庫

(一般貨物自動車運送)

日常の事業活動のなかで無駄な車の使用を控えて、乗り合わせなどの工夫をすることが現状の最優先取り組みである

メンテナンス・警備・検査

20260409_中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響アンケート.pdf

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