レポート

2026年3月の原油価格高騰が日本経済に及ぼす影響

数量不足より「価格ショック」に直面 ~ 企業収益と家計負担を通じて消費・投資を下押し、景気の重石に ~

情報統括部 情報統括課
主席研究員 窪田剛士

中東情勢の緊迫化を背景にした2026年3月の原油価格高騰は、円安や物流の停滞懸念、価格転嫁の進展、企業収益と家計の実質所得の変化が重なる複合ショックとして捉える必要がある。その影響度は、中東情勢の緊迫が続く期間に大きく左右されるものの、帝国データバンクの各種レポートを中心に、見解を取りまとめた。

原油高の影響は企業から家計、景気へ広がる

2026年3月の原油価格高騰は、中東情勢の緊迫化を背景とする地政学的リスクの顕在化である。中東産ドバイ原油価格(5月渡し)は3月に前月より約82%上昇した。日本は原油輸入の約95%を中東に依存する一方、石油備蓄を有するため、当面は数量不足よりも「価格ショック」として捉えることが重要となる。2026年3月の景気DIは、原油価格の急騰とそれにともなう燃料価格の上昇や先行き不安から、前月比1.4ポイント減と大幅に悪化した[1]。

『景気のミカタ vol.51』[2]は、原油高の本質を、「輸入エネルギーコストの上昇→企業利益の圧迫→家計負担の増加→消費・投資の鈍化→景気の重石」という連鎖として示している。原油高は、短期的には輸入物価・企業物価が先行して上昇し、ガソリンなどの燃料価格が比較的早い段階で追随する。他方、電気・都市ガスは補助策や料金改定ラグの影響で遅れて反映されやすい。足元の景気判断は、消費者物価指数(総合)だけでなく、輸入物価、企業物価、燃料小売価格、為替の同時点検が欠かせない。

中期以降は、価格転嫁を通じて食料品、日用品、サービスへ影響が広がる。TDBレビューNo.43 では、原油価格上昇により消費者物価上昇率が0.25〜1.26ポイント押し上げられ、二人以上の勤労者世帯では年間支出が最大5万388円増える可能性が示されている[3]。長い目でみると、燃料費高騰が企業収益、設備投資、賃上げ余力を圧迫し、交易条件の悪化を通じて日本全体の実質所得を押し下げる。加えて、TDBレビューNo.44[4]が示すように、近年は1970年代に比べて物価への波及ラグが長く、マネーの量よりも原油高の波及経路を丁寧に追う必要がある。中東ビジネスや商流面のリスクにも目配りが求められる。

【表1 2026年3月の原油価格高騰の期間別整理】

【表1 2026年3月の原油価格高騰の期間別整理】

【図1 2026年3月の原油価格高騰が日本経済へ波及する経路(整理図)】

【図1 2026年3月の原油価格高騰が日本経済へ波及する経路(整理図)】


[1] 帝国データバンク「TDB景気動向調査 2026年3月調査」(2026年4月3日発表)
[2] 帝国データバンク「原油高が景気の重石になるまで」、帝国ニュース 日刊版2026年4月2日号『景気のミカタ vol.5』、pp.12-13。
[3] 帝国データバンク「原油価格高騰が物価および家計支出に与える影響」、TDBレビュー No.43, March 19, 2026
[4] 帝国データバンク「原油価格およびベースマネーの変動がインフレ率に与える影響」、TDBレビュー No.44, March 27, 2026

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