レポート

新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査(2025年8月)

コロナ融資、借入企業の45.2%が「5割以上返済」 ~ 今後の返済に「不安」企業は13.7%で過去最高 ~

SUMMARY

新型コロナ関連融資の返済状況について、2025年8月時点で同融資資金を借りている企業の45.2%が「5割以上返済」し、未返済は4.2%に低下した。今後の返済に「不安を感じる」企業は、借入企業の13.7%と調査開始以降で最も高くなった。特に百貨店や総合スーパーなどを含む「各種商品小売」が、仕入価格が高騰するなかで価格転嫁の困難さを受けて唯一の4割台となった。

※調査期間は2025年8月18日~8月31日。調査対象は全国2万6,162社で、有効回答企業数は1万701社(回答率40.9%)。なお、新型コロナ関連融資に関する調査は、2022年2月、8月、2023年2月、8月、2024年2月、8月に続いて7回目

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大により業績が悪化した中小企業を支援するため、2020年に始まった政府系金融機関と民間金融機関によるコロナ関連融資制度。実質無利子・無担保で行われた「ゼロゼロ融資」は2024年4月に最後の返済開始のピークを迎えた。一方で、制度を利用しながらも倒産に至った「ゼロゼロ融資後倒産」は、2025年1~6月の間に316件判明、3年連続で同時期に300件を超えた。日本経済は、物価高や人手不足などの経営リスクを抱え、さらに「金利のある世界」に戻りつつある。

そこで、帝国データバンクは、新型コロナ関連融資に関する現在の状況や返済見通しなどについて調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2025年8月調査とともに行った。

新型コロナ関連融資、「5割以上返済」は45.2%まで増加、「未返済」は4.2%

新型コロナ関連融資[1]について、「借りていない」企業は46.5%だった一方、「現在借りている」企業は33.8%となった。「すでに全額返済」した企業は16.9%だった。

図表1 コロナ関連融資の借り入れ有無
図表1 コロナ関連融資の借り入れ有無

新型コロナ関連融資を「現在借りている」企業のうち、2025年8月時点で融資の『5割以上』を返済していたのは45.2%となった。一方で、返済が『3割未満』の企業は25.9%、「未返済や今後返済開始」の企業は4.2%だった。

2024年8月時点と比較すると、『5割以上』返済している企業は10.9ポイント、『3割~5割未満』は2.3ポイント増加していた。この結果、「未返済や今後返済開始」は2.4ポイント減少しており、新型コロナ関連融資の返済は着実に進んでいる。

図表2 融資の返済状況
図表2 融資の返済状況

図表3 企業からのコメント~融資の返済状況~
図表3 企業からのコメント~融資の返済状況~

借入企業の13.7%が今後「返済に不安」、「各種商品小売」が唯一の4割台で最も高い

新型コロナ関連融資を「現在借りている」企業に対して今後の返済見通しを尋ねたところ、84.9%は「融資条件通り、全額返済できる」と考えていた。

一方で、『返済に不安』を抱いている企業は13.7%と前年より1.1ポイント増加した。その内訳をみると、「返済が遅れる恐れがある」(5.4%)や「金利減免や返済額の減額・猶予など条件緩和を受けないと返済は難しい」(6.1%)、「返済のめどが立たないが、事業は継続できる」(1.3%)、「返済のめどが立たず、事業を継続できなくなる恐れがある」(1.0%)となっている。返済に不安を感じている企業は、2022年2月の調査開始以降で最も高くなった。

図表4 新型コロナ関連融資の今後の返済見通し
図表4 新型コロナ関連融資の今後の返済見通し

業種別にみると、新型コロナ関連融資の返済に不安感を抱く企業の割合が最も高い業種は、百貨店や総合スーパーなどを含む「各種商品小売」(40.0%)で、唯一4割台となった。2023年8月時点では不安感を抱く企業は2割程度だったが、2024年8月時点には36.8%へと急増、直近では仕入価格の上昇に販売価格への転嫁が追いつかず収益環境の厳しさが強まっていることが影響した。

さらに、学習塾などを含む「教育サービス」(36.8%)が13.0ポイント増加したほか、「家具類小売」「旅館・ホテル」(いずれも33.3%)も高水準となっており、上位10業種のうち、小売および個人向けサービスが8業種を占め、個人消費関連業種の厳しさが際立っている。

図表5 「返済に不安」計の割合~主な10業種~
図表5 「返済に不安」計の割合~主な10業種~

図表6 企業からのコメント~融資の返済見通し~
図表6 企業からのコメント~融資の返済見通し~

おわりに

本調査によると、新型コロナ関連融資の返済は着実に進展していた。ただし、現在借り入れのある企業のうち13.7%が今後の返済に「不安感」を抱いており、2022年2月の調査開始以降で最も高くなった。このことは、コロナ禍が収束し時間が経過するなかで、返済を巡って企業間の差が目立ってきていることを意味している。

コロナ禍において、新型コロナ関連融資で倒産が減少したことは、大きな効果だったと言える。しかし、国内外の経済情勢は不透明感を増し、企業を取り巻く事業環境はいっそう厳しさが高まっていくことも懸念される。今後は借り換え融資の返済開始時期がピークを迎えることも予想され、企業の倒産動向を注視する必要があろう。日本銀行による政策金利の引き上げが今後も続くと、新規の借り入れによる金利負担が増してくる。企業が円滑に借入金の返済を行うためにも、収益力の拡大と個人消費を軸とした景気の回復が不可欠な条件であり、安定した経済政策の実行が求められる。


[1] 「コロナ関連融資」は、新型コロナ感染症の拡大に対応して実施された政府系金融機関と民間金融機関による金利や返済条件が優遇された融資。代表的な例として、日本政策金融公庫の「新型コロナ特別貸付」「新型コロナ対応資本性劣後ローン」など、日本政策投資銀行と商工中金の新型コロナ関連「危機対応融資」、民間融資のうち信用保証協会の「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」を通じた保証付き融資、などがある

20251017_新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査(2025年8月)

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