レポート人手不足に対する企業の動向調査(2025年7月)

企業の50.8%が正社員不足 3年連続で半数超の高水準 「猛暑による作業効率低下が影響している」 との声も

SUMMARY

正社員の人手不足を感じている企業の割合は、2025年7月時点で50.8%となった。非正社員では28.7%となり、それぞれ高止まりが続いている。業種別では「人材派遣・紹介」が正社員・非正社員ともに6割を上回り、派遣人材が足りていない現状がみられた。また、「建設」では「猛暑によって作業効率が悪くなっている」との声が聞かれ、猛暑による作業の制限や休憩時間の増加が人手不足感に影響を及ぼしている実態も表れた。

※ 株式会社帝国データバンクは、全国2万6,196社を対象に、「雇用過不足」に関するアンケート調査を実施した。なお、雇用の過不足状況に関する動向調査は、2006年5月より毎月実施し、今回は2025年7月の結果をもとに取りまとめた。
調査期間:2025年7月17日~7月31日(インターネット調査)
調査対象:全国2万6,196社、有効回答企業数は1万626社(回答率40.6%)


正社員不足の企業は50.8%、7月としては3年連続の半数超

人手不足は、深刻な「高止まり」状態が続いている。2025年7月時点における、正社員の不足を感じている企業は50.8%だった。7月としては3年連続で半数を上回っており、前年同月(2024年7月、51.0%)から0.2ポイント低下したものの変動幅は小さく、引き続き高水準で推移している。また、非正社員における人手不足割合は28.7%だった。わずかながら前年同月から低下し(同-0.1pt)、2年連続で3割を下回った。

正社員・非正社員の人手不足割合 月次推移

<業種別>
正社員:「建設」が68.1%でトップ、猛暑の影響も

正社員の人手不足割合を業種別にみると、「建設」が68.1%で最も高かった。企業からは、「人手不足などが原因となって契約が不成立となるケースが増えてきている。求人は進めているが、今後が心配」(冷暖房設備工事、北海道)といった不安の声が相次いでいる。加えて、「残業規制などで社員の労働時間が減っただけでなく、猛暑によって作業効率が悪くなっている」(塗装工事、山梨県)という声もあがった。猛暑による作業の制限や熱中症対策の義務化による作業手順の見直しが、人手不足感に影響を及ぼしている実態も表れた。 

次いで、生成AIをはじめとするIT投資などの需要の多い「情報サービス」(67.6%、前年同月比-4.3pt)が続いた。「不透明なトランプ関税の動向によって、クライアントの投資意欲が減退している」(ソフト受託開発、神奈川県)といった声が聞かれ、高水準ながらやや人手不足感が和らいだ。

 また、低賃金と不規則な労働環境から慢性的な人手不足を背景とした倒産が増えている警備業[1]を含む「メンテナンス・警備・検査」(66.7%、同+0.8pt)や、ドライバー不足が深刻な「運輸・倉庫」(63.9%、同+0.5pt)など、6業種が6割を上回る結果となった。

人手不足割合 業種別

非正社員:「人材派遣・紹介」がトップ、正社員とともに6割超

非正社員では「人材派遣・紹介」が63.3%(同+4.7pt)でトップだった。業種問わず人手不足が国内全体で深刻化している状況のなかで、派遣人材によって労働力を補う動きが活発になっていることが要因としてあげられる。

また、コロナ禍以前から人手不足が深刻だった「飲食店」や「旅館・ホテル」では、人手不足割合が大きく低下している。非正社員の就業者数がコロナ禍(2020年)以前の水準まで回復したことや、DXやスポットワークの普及による生産性向上が背景として考えられる。

「飲食店」「旅館・ホテル」の人手不足割合( 月次推移)

<今後の見通し>
高水準続く人手不足、スポットワーク普及はプラス材料となるか

2025年7月時点で、正社員の人手不足を感じている企業の割合は50.8%、非正社員では28.7%だった。それぞれが前年同期よりわずかながら低下したものの、前年とほぼ同水準で推移した。

特に、正社員においては 3年連続で半数の企業が人手不足と感じており、依然として高水準となった。業界別では、「建設」や「情報サービス」など6業種で6割を上回った。とりわけ、インフラ設備などの公共工事、都市再開発などの需要が堅調な「建設」では、猛暑による労働環境の悪化や熱中症対策の義務化による作業手順の見直しなどの影響を受け、人手不足感は増している。

非正社員では、業界問わず派遣人材による活発な人員確保の動きから「人材派遣・紹介」が最も高かった。また、「飲食店」や「旅館・ホテル」では依然として人手不足感は上位に位置するが、コロナ禍から比較すると改善がみられている。就業人口の回復に加え、スポットワークの普及が大きな活路としてあげられる。スポットワークは主に小売・サービス業で広がるなか、人手不足の解消に向けてプラス材料となることが期待されるだろう。

250819_人手不足に対する企業の動向調査(2025年7月)

Contact Usお問い合わせ先

担当部署

株式会社帝国データバンク 情報統括部 TEL:03-5919-9343 E-mail: tdb_jyoho@mail.tdb.co.jp