レポート東京都・事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査

事業継続計画(BCP) 依然として 4割の企業で未策定

2025/07/16
BCP  アンケート

SUMMARY

人的資源や企業資産の保護を重視している企業が増えてきたなかで、都内に本社を置く企業の事業継続計画(BCP)の策定率は24.4%となった。「大企業」の策定率が42.9%に対し、「中小企業」は19.0%にとどまった。BCPを策定していない理由としては、「スキル不足」「人材や時間の確保が困難」が多く、中小企業では「策定する人材を確保できない」「費用が確保できない」といった課題も浮き彫りになった。

※株式会社帝国データバンクは、全国2万6,389社を対象に、「2025年の事業継続計画(BCP)」に対するアンケート調査を実施した。

  • 調査期間:2025年5月19日~5月31日(インターネット調査)
  • 調査対象:東京都に本社を置く4,269社、有効回答企業数は1,999社(回答率46.8%)

BCP策定企業は24.4%、『策定意向あり』は5割超

自社における事業継続計画(以下、BCP)の策定状況について尋ねたところ、「策定している」企業の割合(以下、BCP策定率)は24.4%となり、前回調査(2024年5月)から1.2ポイント増加した。BCP策定率を規模別にみると、「大企業」が42.9%(前年比0.4ポイント減)、「中小企業」は19.0%(同2.1ポイント増)となった。「大企業」は2年連続で減少した一方、「中小企業」は過去最高の伸び率となった。

直近の規模間の差をみると、前々回調査(2023年5月)は26.5ポイント、前回調査は26.4ポイント、今回調査は23.9ポイントとBCP策定率の差は縮小傾向となったものの、依然として格差は大きい。

さらに、「現在、策定中」(6.3%、前年比1.8ポイント減)と、「策定を検討している」(22.7%、同1.2ポイント増)を合計した『策定意向あり』[1]とする企業は53.4%(同0.6ポイント増)となり、3年ぶりに増加した。他方、「策定していない」企業は38.6%(同0.2ポイント減)と、BCP策定率はわずかに伸びつつも依然として策定していない企業が4割近い水準で推移している。

事業継続計画(BCP)の策定状況

事業継続計画(BCP)の策定状況の推移

BCP策定率の推移~規模別~

「自然災害」リスクが突出して高く、人的資源や企業資産の保護を中心に対応

BCPについて『策定意向あり』とする企業に対して、どのようなリスクによって事業の継続が困難になると想定しているか尋ねたところ、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が69.0%となり、突出して高かった(複数回答、以下同)。次いで、サイバー攻撃などを含む「情報セキュリティ上のリスク」(54.7%)、インフルエンザ、新型ウイルスなどの「感染症」(42.9%)と続いた。以下、電気・水道・ガスなどの「インフラの寸断」(39.5%)や「設備の故障」(33.5%)が上位に並んだ。

「大企業」に対し「中小企業」では、「従業員の退職」や「経営者の不測の事態」、「取引先の倒産・廃業」をリスクとして捉える割合が高い傾向が表れた。

また、事業が中断するリスクに備えて実施あるいは検討している内容を尋ねたところ、「従業員の安否確認手段の整備」が71.2%で最も高くなった(複数回答、以下同)。以下、「情報システムのバックアップ」(67.1%)、「緊急時の指揮・命令系統の構築」(43.1%)、「事業所の安全確保(建物の耐震補強、設備の転倒・落下対策など)」(36.0%)が続いた。企業として人的資源や企業資産の保護を重視している様子が分かる。

事業の継続が困難になるリスクと備え

事業の継続が困難になると想定しているリスク(複数回答)

事業中断リスクに備えた実施・検討内容(複数回答)

スキル・人手・時間の不足という課題が浮き彫りに

BCPを「策定していない」企業にその理由を尋ねたところ、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が39.4%でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「策定する人材を確保できない」(33.1%)、「策定する時間を確保できない」(30.9%)が続き、BCPの策定にはスキル・人手・時間の三要素が大きな障壁となっている様子がうかがえた。加えて「大企業」では、「自社のみ策定しても効果が期待できない」(35.5%)が「策定する人材・時間を確保できない」を上回る結果となった。

「中小企業」では、「策定する必要性を感じない」が20.4%と「大企業」より10ポイント以上高い結果となった。企業からは「策定しなくてはいけないと思っているが、なかなかそこに手がつかない」(受託開発ソフトウェア業)や「少数の人員で常日頃から言葉で共有をしているため、策定の意味を感じないし、コストが見合わない」(飲食料品卸売)といった声が聞かれた。

事業の継続が困難になるリスクと備え

まとめ

本調査の結果、BCPの策定状況は、現在策定中や検討段階の企業を含めると、多くの企業が前向きな姿勢を見せていることが分かった。しかし、依然として4割近い企業が未策定であり、さらなる普及が課題と言える。規模別でみると、大企業が頭打ち傾向のなか、中小企業の策定率が上昇し規模間の策定格差はわずかに縮小傾向にあるものの依然として格差は大きい。

企業が想定しているリスクを尋ねたところ、「自然災害」が最も多いほか、「情報セキュリティ上のリスク」や「感染症」、「インフラの寸断」、「設備の故障」といった経済活動の基盤に関わるリスクも上位にあがっていた。とりわけ、中小企業では、「取引先の倒産・廃業」や「従業員の退職」も重要なリスクと捉える傾向があった。これらのリスクへの備えとしては、「従業員の安否確認手段の整備」が最も重視されており、「情報システムのバックアップ」や「緊急時の指揮・命令系統の構築」なども主な取り組みとして並んだ。

一方で、BCPを策定していない理由として、「スキル・ノウハウがない」ことが主な要因としてあがり、これに加えて「人材や時間を確保できない」といった要因も続き、企業規模にかかわらず、スキル・人手・時間の3要素について、それぞれ不足していることが大きな課題となっている。さらに、中小企業では、「必要性を感じない」や「費用が確保できない」という理由も多く、意義や重要性に対する認知度向上に加えて財政的な支援の必要性もうかがえた。

BCP策定への意識が高まるなかで、「スキル・ノウハウ」「人手」「時間」の不足という課題を改めて浮き彫りにした。事業継続は企業価値の維持に不可欠であり、緊急事態への準備は常に求められる。コロナ禍を乗り越えても次なる脅威がいつ訪れるのか予測できない。BCPの策定に対して当事者意識を持ち、従業員の意識を高めて行政や同業他社と連携し、起こりうる障壁に対して可能な限り備えることの重要性が増していると言えよう。

〔参考〕

BCPについて『策定意向あり』とする企業を都道府県別にみると、「東京」の53.4%は全国で10番目に高い結果となった。最も高かったのは「高知」(68.5%、全国比+18.7ポイント)で、次いで「富山」(67.4%、同+17.6ポイント)が続き、ともに7割近くにのぼった。特に「富山」は能登半島地震を経て過去最高となった。以下、「長野」(59.7%、同+9.9ポイント)、「静岡」(57.9%、同+8.1ポイント)、「香川」(56.4%、同+6.6ポイント)が続いた。

BCP『策定意向あり』~都道府県別~

[1] 『策定意向あり』は、「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」の合計

20250716_東京都・事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2025年)

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