レポート「ゼロゼロ融資後倒産」動向調査(2025年上半期)

「ゼロゼロ融資後倒産」、 集計開始から累計2272件判明 上半期では初めて前年同期を下回るも、3年連続で300件を超える

2025/07/02
倒産・休廃業

SUMMARY

「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたものの倒産した「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、2025年上半期に316件判明した。前年同期(391件)から75件減少したものの、3年連続で300件を超えた。2020年7月に初めて倒産が確認されて以降の累計は2272件となった。物価高や人手不足などの経営リスクを抱えるなか、「金利のある世界」に戻り、「ゼロゼロ融資後倒産」のリスクは引き続き高水準で推移するとみられる。

株式会社帝国データバンクは、法的整理(倒産)となった企業のうち、政府系金融機関および民間金融機関による「実質無利子・無担保融資(通称:ゼロゼロ融資)」を受けたことが判明した倒産企業について調査・分析を行った。なお、2025 年6 月末時点における判明ベースによるもの

集計開始:2020年7月
集計期間:2025年6月30日まで
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産

2025年上半期は316件判明、上半期で初の減少

「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたものの倒産した「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」(負債1000万円以上、法的整理)は、2025年上半期(2025年1-6月)に316件判明した。上半期としては初めて前年同期(391件)から減少に転じたものの、3年連続で300件を超えた。2020年7月に初めて倒産が確認されて以降の約5年間の累計は2272件となった。

2025年上半期の倒産を業種別にみると、『小売業』が66件(前年同期83件)で最多となり、『建設業』が62件(同74件)、『製造業』が60件(同63件)で続いた。『小売業』では「飲食店」が31件、「飲食料品小売」が14件、『製造業』では「食料品・飼料・飲料製造」が9件となるなど、飲食関連で目立った。このほか、『卸売業』では「繊維・衣服・繊維製品卸売」が15件、『サービス業』では「広告・調査・情報サービス」が23件だった。

2025年上半期の倒産を負債額別にみると、「1億円以上5億円未満」が142件(構成比44.9%)で最多、「5000万円未満」が86件(同27.2%)で続いた。2025年上半期の全体の倒産では、負債「5000万円未満」を中心に倒産が発生したが、ゼロゼロ融資などで増加した金融債務の返済が進まず、新たに資金を借り入れることが難しくなり破綻した企業が目立った。

4月18日に開催された「中小企業政策審議会金融小委員会」(中小企業庁)の発表資料によれば、2025年2月末までの実質無利子・無担保融資(民間+政府系)の実績は約264万件、約45兆円にのぼった。コロナ禍での大規模な資金繰り支援によって、2021年の倒産件数は6015件と半世紀ぶりの歴史的低水準を記録し、「ゼロゼロ融資」は倒産の抑制効果を発揮したといえる。

しかし、支援によって業績が回復に至らないなど、倒産の先送りを招くケースも少なくない。さらに、日本銀行の政策金利引き上げにより「金利のある世界」に戻ったことで、市場金利や借入金利の上昇が見込まれる。また、2023年1月に制度が開始した「コロナ借換保証」は、8割が2年以内の元本据置期間としている。同制度の返済が始まっている企業も存在するなか、物価高や人手不足、価格転嫁難などの経営リスクを抱え、借入金の返済原資の確保に苦しむ企業も少なくない。このため、「ゼロゼロ融資後倒産」のリスクは引き続き高水準で推移することが見込まれる。

20250702_「ゼロゼロ融資後」倒産動向調査(2025年上半期).pdf

Contact Usお問い合わせ先

担当部署

株式会社帝国データバンク 情報統括部 TEL:03-5919-9342 Email:tdb_jyoho@mail.tdb.co.jp