株式会社帝国データバンクは、2025年7月以降における食品の値上げ動向と展望・見通しについて、分析を行った。
SUMMARY
2025年7月の飲食料品値上げは、合計2105品目となった。
食品分野別では、カレールウなど香辛料のほか、だし製品などを中心とした「調味料」(1445品目)が最多となった。
2025年通年の累計品目数は1万8697品目となり、早ければ7月にも年間で2万品目への到達が判明する見通し。飲食料品の値上げの勢いは、前年に比べて強い状態が続いている。
[注]
品目数および値上げは、各社発表に基づく。また、年内に複数回値上げを行った品目は、それぞれ別品目としてカウントした
値上げ率は発表時点における最大値を採用した。なお、価格据え置き・内容量減による「実質値上げ」も対象に含む
2025年7月の値上げ、2105品目 前年比5倍に大幅増加
主要な食品メーカー195社における、家庭用を中心とした7月の飲食料品値上げは2105品目、値上げ1回あたりの値上げ率平均は15%となった。前年7月(418品目)から1687品目・+403.6%と急増し、単月の値上げ品目数としては3カ月ぶりに2千品目を突破した。また、1月以降7カ月連続で前年同月を上回り、連続増加期間としては記録的な値上げラッシュの1年となった2023年2~7月を上回り、2022年の統計開始以降で最長を更新した。

2025年7月の値上げを食品分野別に集計すると、カレールウなど香辛料のほか、だし製品などを中心とした「調味料」(1445品目)が最多となった。「菓子」(196品目)は、2025年3月以来4カ月ぶりに単月で100品目を上回り、チョコレートやガム、ポテトチップスなど広範囲にわたるほか、一部で内容量変更を伴う値上げもみられた。「加工食品」(117品目)では、引き続きコメ価格高騰の影響を受けた米飯製品や、パスタソースといった製品が対象となった。
2025年通年の値上げは、11月までの公表分で累計1万8697品目にのぼり、前年通年の実績(1万2520品目)を49.3%上回った。1回当たり平均値上げ率は15%と、前年(17%)をやや下回る水準が続いた。食品分野別では「調味料」(6108品目)が最も多く、前年(1715品目)から+256.2%と大幅に増加したほか、年間では2022年以降で2番目に多い水準となった。「酒類・飲料」(4483品目)は清涼飲料水のほかビール、清酒など広範囲で値上げとなり、前年から約7割増となるなど大幅に増加した。「加工食品」(4138品目)は、冷凍食品やパックごはん、海苔などの値上げが目立った。2025年における飲食料品値上げの勢いは前年に比べて強い状態が続いている。

値上げ要因では、原材料の価格高騰に加え、光熱費の上昇による生産コスト増、人手不足による労務費の上昇、物流費の上昇などが複合的に重なった。前月調査時(98.0%)から低下したものの、原材料などモノ由来(「原材料高」)の値上げが全体の97.2%を占めた。人手不足に伴う昇給・賃上げによるコスト増を背景とした「人件費」(53.9%)の上昇が続き、要因別の集計を開始した2023年以降で最高を更新した。また、特に6月以降の値上げを中心に電気・ガスなど「エネルギーコスト(光熱費)」由来の値上げも目立ち、全体の66.4%を占めた。

今後の見通し:年間では2年ぶりに2万品目超えへ
2025年の飲食料品値上げは、原材料高に加えて物流費やエネルギーコストの上昇、賃上げによる労務コストの増加を背景とした粘着性の高い物価上昇圧力を要因として、比較的低位に抑制された前年から大幅に増加する展開が続いている。国内外の天候不順による供給量の不安定化や、円安による輸入コストの上振れといった要因もあり、飲食料品における値上げは当分継続する可能性が高いとみられる。
また、近時は緊迫する中東情勢の影響で原油価格が再び上昇に転じており、「エネルギー」由来の値上げ動向に注視が必要となる。足元では、既に電気・ガスなどエネルギーコスト増を価格に転嫁する動きが進んでいるものの、1バレル当たり100ドルを上回るなど急激な価格変動が発生した場合には、原油のほか食用油・小麦の価格高騰が主要因となって大規模な値上げを誘発した「2022年型の値上げ」が再来する可能性もある。
2025年の値上げ品目は、早ければ7月にも、2023年以来2年ぶりに年間2万品目台への到達が判明するとみられる。また、今後の動向次第では飲食料品の値上げラッシュが本格化した2022年(2万5768品目)の水準に並ぶ可能性がある。

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