レポートTDB景気動向調査から見た「トランプ関税」に対する企業の意識分析
「トランプ関税」への懸念、景況感の押し下げ鮮明に 景気に対する企業のコメント、「トランプ関税」の出現率は3カ月で10ポイント超の上昇
SUMMARY
TDB景気動向調査の各月のコメントのうち「トランプ関税」に関する単語の出現率は、2025年1月の1.2%から右肩上がりで推移し、最新の4月調査では12.3%と急上昇した。また、関連するコメントを寄せた企業の景気DIは全体を3カ月連続で下回り、4月は38.1と全体より4ポイント以上低い結果となった。トランプ関税に対する危機意識の高まりにとどまらず、実際に悪影響が表れつつある様子もうかがえた。
※株式会社帝国データバンクは、トランプ関税に対する企業への影響について企業からの声をもとに分析を行った。なお、企業からの声は、帝国データバンクが実施するTDB景気動向調査を通じて得られた企業からのコメントをもとにしている。
最新結果となる2025年4月調査は、全国2万6,590社を対象に実施し、有効回答企業は1万735社(回答率40.4%)だった
トランプ関税への警戒強まる、コメント出現率は12.3%に急増
アメリカのトランプ政権による関税政策、いわゆる「トランプ関税」が日本を含む各国の経済に不確実性をもたらしている。帝国データバンクが発表したTDB景気動向調査(2025年4月調査)によると、日本国内の景況感を表す景気DIは前月比0.8ポイント減の42.7となり、2カ月ぶりに悪化した。トランプ関税による自社業績への悪影響など先行きに対する不安の声が高まったことが一因にあげられる。
TDB景気動向調査の回答者のコメント(自由記入)のうち、「トランプ関税」に言及したコメントの割合[1]をみると、2025年1月は1.2%だったが、2月以降右肩上がりで推移し、最新の4月調査では12.3%と急上昇した。コメントの内容を分析すると、トランプ関税に対する警戒感や不透明感が急速に高まっている現状がみてとれる。また、トランプ関税に対するコメントを寄せた企業の景況感(以下、「トランプ関税DI[2]」)を算出すると、4月の結果は38.1となり、全体の景気DI(42.7)と比較して4ポイント以上落ち込んだ。加えて、3カ月連続で全体の景況感を下回り、企業の危機意識の高まりにとどまらず実際に悪影響が表れつつある様子もうかがえる。
トランプ関税に関する企業の警戒感


企業からのコメント、「高騰」、「価格」、「関税」、「トランプ」などのワードが頻出
2025年4月の企業から寄せられたコメントの内容を分析 したところ、「高騰」、「価格」、「関税」、「トランプ」などのワードが頻出した。これらのワードを含むコメントからは、企業の警戒感や不安感が読み取れる。
2025年4月の企業から寄せられたコメントの内容を分析[1]したところ、「高騰」、「価格」、「関税」、「トランプ」などのワードが頻出した。これらのワードを含むコメントからは、企業の警戒感や不安感が読み取れる。
まず、価格の「高騰」や「価格」変動に対する懸念が大きく、原材料など各種コストの上昇が企業の利益率に深刻な影響を与えている様子がうかがえる。また、「関税」や「トランプ」というキーワードからは、トランプ政権が推進する関税政策などが企業に与える強い不安感が読み取れる。コメントをみても、「受注が回復しないなか、アメリカの関税引き上げにともなう数量減や収益圧迫などマイナス影響が今後表れる懸念がある」(鉄鋼・非鉄・鉱業)というように、先行きの不透明さを危惧するコメントが複数あがっていた。キーワードの出現状況から分析すると、どちらかといえば後ろ向きな単語が目立ち、これらが企業の経営環境を不安定にしていることから、前述した景況感にも影響が及んでいると言えよう。
本分析の結果、TDB景気動向調査における「トランプ関税」に関する企業からのコメントが2025年4月より急増したほか、関連するコメントを寄せる企業の景況感は著しく悪化する傾向がみられた。
直近では、米中関税合戦の軟化といった新たな動きも表れるなど同政策の方針が日々大きく変動している状況下において、企業には市場の動向を注視し、適切な対策を講じていくことが求められる。同時に、政府によるアメリカへの粘り強い交渉継続に加え、影響を受けた企業に対する支援策の強化など、多岐にわたる政策の実施が不可欠であろう。
ワードクラウド図-2025年4月調査 現況のコメントより-

[1] 各月の企業から寄せられたコメントのうち「トランプ」または「関税」を含んだコメントを対象に出現率を算出した
[2] トランプ関税DIは、各月の企業から寄せられたコメントのうち「トランプ」または「関税」を含んだコメントを寄せた企業の景況感をもとに算出した
[3] ワードクラウド図:テキストデータのなかで頻出する単語を視覚的に表示するグラフィック。単語の出現頻度に応じて、その単語の大きさなどが変わるため、どの単語がよく使われているかを一目で把握することが可能

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