レポート「大阪・関西万博」に対する企業の期待度アンケート
大阪・関西万博、 企業の43.5%が 「日本経済にプラス」と期待 ~大阪は62.0%、開催地ならではの大きな期待が集まる~
SUMMARY
「大阪・関西万博」が日本経済のプラス材料として『期待できる』と回答した企業は43.5%だった。地域別では『近畿』が最も高く、なかでも「大阪」は62.0%、「兵庫」は57.9%と、関西圏で期待の高さがうかがえた。日本経済に及ぼす具体的な影響は、「国内外の観光客の増加」が64.0%でトップとなり、「大阪・関西の国際的な知名度、イメージの向上」「インフラの整備」が上位に並んだ。一方で、「PR不足」を指摘する声もあがった。
株式会社帝国データバンクは、全国1,486社を対象に、4月13日から半年間にわたって開催される「大阪・関西万博」に対する期待度についてアンケート調査を実施した。
※調査期間:2025年4月4日~4月8日(インターネット調査)
有効回答企業:1,486社
企業の43.5%が「大阪・関西万博」の経済へのプラス影響を期待
「大阪・関西万博」が日本経済にとって、プラスの材料として期待できるか尋ねたところ、『期待できる[1]』と回答した企業の割合は43.5%だった。一方で、『期待できない[2]』は56.5%だった。
「大阪・関西万博」の日本経済へのプラス材料としての期待

『期待できる』とした企業からは、「万博の開催でインバウンドが増え、日本各地で消費の伸びにつながることに期待。マインド的にも明るいニュースであり、若者が希望を持てる社会像を示して欲しい」(繊維・繊維製品・服飾品小売、静岡県)といった前向きな声が聞かれた。「万博の開催に合わせる形で、近畿エリアの多くの鉄道で改札がクレジットカード対応になったことは、インフラが改善された非常に良い事例だと思う」(各種商品小売、三重県)のように、日本経済・社会への効果をすでに実感している様子もうかがえた。
また、「万博の展示会場に自社の製品も組まれている。大いに国内外に知られることに期待している」(建設、兵庫県)や「氷の製造販売をしているが、需要増が期待でき、収益の向上が望める」(飲食料品卸売、広島県)のように、直接的な影響を受けている、または見込む企業もあった。
一方で、『期待できない』とした企業からは、「スマホ、SNSなどの普及により、情報の伝達スピードが上がり、あらゆる情報が簡単に入手できるようになったこの時代に、万博開催で経済が変わるとは思えない」(金融、広島県)や「企画や進め方、費用対効果などが不明のため、期待していない」(電気・ガス・水道・熱供給、三重県)といったコメントが寄せられた。
さらに、「一部製品の需要と供給の偏りによりバランスが悪くなる。交通渋滞などの混乱や日常の仕事などへの影響も懸念される」(建設、兵庫県)のように、マイナス影響を懸念している様子もうかがえた。
『期待できる』割合、『近畿』が58.8%でトップ
『北陸』『四国』も5割超に
地域別に『期待できる』割合をみると、開催地である『近畿』が58.8%と最も高くなり、全体を15.3ポイント上回った。なかでも、開催地の「大阪」は62.0%、「兵庫」は57.9%と、期待の高さがうかがえた。
また、近隣地域の『北陸』と『四国』(ともに52.0%)も5割を超えた。
一方で、『北海道』(30.3%)や『南関東』(36.6%)、『北関東』(37.6%)など開催地から離れた地域の期待度は低くなる傾向となった。
日本経済へのプラス材料として『期待できる』割合 ~地域別~

企業からは、「パビリオンの完成が続き、展示内容が公開されるに従い、少しずつ万博への関心が高まってきた。多額の投資が行われ、多数の人が参加して盛会になることを期待している」(機械・器具卸売、大阪府)や、「当社も研修旅行と題して6月に行く予定。未来の姿が少しでもみられることに期待している」(サービス、石川県)といった声が聞かれた。また、「四国地方、徳島県にもインバウンドの恩恵を期待したい」(不動産、徳島県)のように、『近畿』周辺でも開催による観光客の流入効果に期待する声が寄せられた。
一方で、「関東圏では盛り上がってはいないと思う。工事が遅れていることやチケット代が高いなどネガティブな情報が先行していて、距離もあり行こうかという雰囲気にはならないと感じる」(専門サービス、東京都)や「国内での盛り上がりに欠ける。関西エリアはどのような状況か分からないが、当地域におけるPR不足を非常に感じる」(飲食料品小売、茨城県)といったコメントもあがった。
万博の影響、「観光客の増加」がトップ
開催地域の知名度やインフラ整備も上位に
大阪・関西万博の開催を通じて、日本経済にどのような影響がある(見込みを含む)と考えられるか尋ねたところ、トップの「国内外の観光客の増加」が64.0%で突出して高かった(複数回答、以下同)。次いで、「大阪・関西の国際的な知名度、イメージの向上」(34.5%)、交通網、情報通信網など「インフラの整備」(31.7%)が続くなど、近畿圏や近隣エリアでの目に見えやすい効果が上位に並んでいる。
また、「日本の最先端技術のPR」(27.1%)や会場整備、イベント開催、関連グッズ販売など「民間事業の活性化」(23.8%)、「公共投資・民間投資の増加」(21.5%)を期待する企業も一定数あった。
「大阪・関西万博」の日本経済への影響

<参考>企業からの声

まとめ
本調査の結果、「大阪・関西万博」が日本経済のプラス材料として『期待できる』と回答した企業が43.5%だった一方で、『期待できない』は56.5%となった。地域別に『期待できる』割合をみると、『近畿』がトップとなり、特に「大阪」は6割超と、期待の高さがうかがえた。一方で、『北海道』や『南関東』など開催地から離れた地域ほど期待度は低くなる結果となった。
日本経済に及ぼす具体的な影響は、「国内外の観光客の増加」が64.0%でトップとなり、「大阪・関西の国際的な知名度、イメージの向上」「インフラの整備」が続いた。しかし、インターネットの普及とグローバル化の進展で情報発信や収集が容易になっている今の時代では、「万博」開催に使う多額の費用に対して、経済・社会への十分な効果が期待しづらいといった声も寄せられた。また、「マイナス面ばかりが報道されているように感じ、宣伝不足だと考える」(サービス、三重県)のように、「PR不足」を指摘する意見も一定数あった。
今回の万博は、ロボットやAI、水素を活用して新たな生活様式を体験できる場や、iPS細胞から作った「ミニ心臓」の展示など、さまざまな分野における日本の最先端技術の公開が一つの目玉と言える。このような技術の海外へのアピールのほか、今後の国内産業の発展につながることが期待される。また、民間企業は協賛や出展、調達などさまざまな形で参加しているほか、地元の中小企業・スタートアップの技術力や魅力を発信する展示ゾーンが設置されるなど、中小企業の活性化も後押ししている。
このような開催による経済効果のみならず、本来の万博の開催目的である、文化交流や国際理解の促進に加え、科学技術の発展やイノベーションの創出、そこで生まれた「価値」や「文化」を次の世代に継承することも重要である。
今回の開催が今後の社会に「レガシー」(遺産)を多く残すイベントとなるとともに、経済への好影響が、限られた地域や一過性のものにとどまることなく、景気の底上げにつながることに期待したい。
[1]『期待できる』は 「期待できる」「やや期待できる」の合計
[2]『期待できない』は 「期待できない」「あまり期待できない」の合計

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