レポート「公租公課滞納」倒産動向調査(2024年度)

2024年度「税金・社会保険料滞納」倒産 過去最多を更新 納付猶予措置の終了後も業績好転せず、4年連続増加

2025/03/21
倒産・休廃業

SUMMARY

株式会社帝国データバンクは、法人税や所得税などの各種「税金(公租・租税)」、厚生年金保険や健康保険料などの「社会保険料(公課)」について納付ができない、または滞納状態が続いたことで自社の資産(預金口座や不動産)等を差し押さえられ経営が困難となった企業の倒産について調査・分析を行った。

税金や社会保険料などを納付できない、または滞納による差し押さえにより経営が困難となった「公租公課滞納」倒産の2024年度の件数は、2025年2月まで(11カ月間)に140件判明した。集計を開始した2020年度以降で最も多かった2023年度(139件)を上回った。サービス業や建設業、運輸・通信業など物価高や人手不足などの影響を受けている業種で目立った。公租公課の納付原資を確保できずに倒産に至る企業は今後も高水準で推移する見込み。

集計開始:2020年4月
集計期間:2025年2月28日まで
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産

2024年度は2月までに140件判明、過去最多を更新

 法人税や所得税、健康保険料や社会保険料などの「公租公課」を納付できない、または滞納による差し押さえで倒産に至る企業が増えている。2024年度の「公租公課滞納」倒産は2025年2月までの11カ月間で140件判明した。年度で最も多かった2023年度(139件)を上回り、2020年度の集計開始以降で最多を更新した。

業種別にみると、『サービス業』が45件(構成比32.4%)で最多となり、『建設業』が32件(同22.9%)、『運輸・通信業』が24件(同17.1%)で続いた。『サービス業』では、ソフトウェア開発など「広告・調査・情報サービス業」で目立った。『運輸・通信業』は、全件が道路貨物運送業や道路旅客運送業などの「運輸業」だった。

日本年金機構によると、厚生年金保険を含む社会保険料を滞納している事業所は、2023年度末時点で14万2119事業所あり、同年度の差押執行事業所数は4万2072事業所を数え、ここ数年急増している。コロナ禍での資金繰り支援策の一つとして、公租公課のうち企業にとって負担の重い社会保険料に最長3年にわたる納付猶予措置が設けられた。ところが、猶予期間終了後に業績が好転せずに累積した社会保険料の支払いが困難な企業が増えている。

政府は、再生可能性の高い中小企業の情報を公租公課の徴収現場や金融機関などと共有し、公租公課の確実な納付と事業再生の両立を目指す「事業再生情報ネットワーク」の運用を2024年6月から開始した。2024年11月以降の「公租公課滞納」倒産の発生ペースが鈍化し、2025年に入ってからは前年比で減少に転じるなど、一定の効果が表れている。一方で、物価高や人件費の高騰分を価格転嫁できず、納付原資を確保できない企業が増加するおそれもあり、しばらく「公租公課滞納」倒産は高水準で推移することが見込まれる。

「公租公課滞納」倒産動向調査(2024年度)

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