レポート【中小企業の省力化】中小企業庁インタビュー ~中小企業の省力化投資を新たな補助金制度で推進~
語り手:中小企業庁 経営支援部 技術・経営革新室 参事官補佐 金光 百菜 氏

近年、少子高齢化を背景とした構造的な人手不足の進展により、企業の人員確保の難しさが顕著となっている。こうした背景から、中小企業庁は人手不足に悩む中小企業の省力化投資を支援する「中小企業省力化投資補助金」を2024年6月からスタートした。
今回は、補助金の創設背景や具体的な利用方法、今後の展望について、中小企業庁経営支援部技術・経営革新室参事官補佐の金光百菜氏に話を伺った。
-「中小企業省力化投資補助金」創設の背景について教えてください
「中小企業省力化投資補助金」は、中小企業などの売り上げ拡大や生産性向上を目的に2024年度に創設されました。背景には、深刻な人手不足があります。人口減少が続く中、人手不足は企業にとって避けることのできない構造的な問題です。賃金の引き上げや派遣労働者の活用など様々な対策が講じられていますが、仕事のやり方自体を変えるという視点については、まだ十分に浸透していないのが現状です。そのため、「省力化投資」というものに目を向けてもらう第一歩としてこの補助金制度を設けました。
-中小企業の目が省力化投資になかなか向かなかったのはなぜでしょうか
大きく2つの理由があると考えております。
1つ目は、具体的に何をどのように取り組めば省力化が進むのかという情報が不足していたこと。
2つ目は、投資にかかる費用の負担が大きく、売り上げに直結しない投資には慎重になりがちなことです。
これらの課題を解決するために、本補助金には「カタログ注文型」という形の申請方式があります。
-「カタログ注文型」は、従来の補助金よりも申請が簡単なのでしょうか
省力化効果が認められた、スチームコンベクションオーブンや清掃ロボットといった製品を掲載した「製品カタログ」から、導入したい製品を選んでもらう形を採用しています。そのため、省力化製品に詳しくない方でも利用しやすく、従来のように、相見積もりを取る手間もありません。その結果、申請手続きが大幅に簡略化されています。

-申請手続きの流れを教えてください
オンラインで行政サービスを利用するための共通ID「GビズID」を取得いただき、公募要領を確認のうえ、カタログから導入したい製品を選定。その後、カタログに記載されている販売事業者と共同で申請書の作成、オンライン申請をしていただきます。

-販売事業者にとってもビジネスチャンスがありそうですね
補助金を活用した投資が進むことで、販売事業者でも売り上げ増加や新規顧客の獲得といったビジネスチャンスが広がると考えています。省力化製品を導入する際に、「補助金を利用できるなら、ここに登録されている販売事業者から買おう」と考える企業もあるでしょう。さらに、本制度の販売事業者として登録されていることが、企業の信頼度を高めることにも繋がる可能性もあると考えられます。
-販売事業者への登録方法を教えてください
2025年2月28日から制度を改定し、販売事業者の登録要件を緩和しました。以前は、省力化製品のメーカーからの招待が必要でしたが、これではメーカーと直接繋がりのある販売事業者しか登録できず、二次・三次卸といった実際に中小企業と取引している企業が登録しにくい状況がありました。そこで、販売事業者登録を希望する企業が自身でオンライン申請できるように制度を変更しました(審査あり)。これにより、補助金を利用する中小企業が、日常的に取引している信頼できる販売事業者から製品を購入しやすくなると考えています。多くの販売事業者が参入することで選択肢が増え、中小企業が自社に最適な省力化製品を選びやすくなることが見込まれます。
-カタログ注文型では対応できない省力化ニーズへの支援はありますか
カタログ注文型では対応が難しい、より大規模でシステムを含めた省力化投資を必要とする方には、省力化投資補助金(一般型)もありますので、そちらをご活用ください。
-最後に省力化投資に取り組む中小企業にメッセージをお願いします
わが国の人口構造上、人手不足の解消や企業の生産性向上のために、省力化投資は不可欠です。今回の補助金はリスクを最小限に抑えつつ、効果的な省力化に取り組めるような制度としました。まずはカタログをご覧いただき、自社の規模や経営状況に応じて負担にならない範囲での取り組みの第一歩として補助金を活用していただけると幸いです。