レポート2025年、キャズムを越える注目キーワードとは
「自動運転」「ウェルビーイング経営」は新しい戦略の段階へ ~ 「トランプ2.0」から「Vチューバ―」までを徹底分析 ~
情報統括部 情報統括課
主席研究員 窪田剛士
2025年が始まり、日本経済においても新たな商品やサービスが登場し、さまざまな言葉が生まれるだろう。本レポートでは、帝国データバンク「2025年の注目キーワードに関するアンケート」をもとに、今後注目すべきキーワードを、イノベーター理論を活用して整理してみた。
- 企業が選んだ2025年の注目キーワード
帝国データバンクの調査[1]によると、企業が選ぶ2025年の注目キーワードは「トランプ2.0」が最も高く、87.4%を占めた。次いで、「値上げ」(食品やガソリン、原材料の価格上昇)が80.9%、「賃上げ」が74.8%、「人手不足」が70.0%、「円安インフレ」が57.1%となり、賃金や物価の上昇に関連する言葉が多くランクインしている。また、「生成AI」のような技術革新を示す言葉も上位に入り、今後の発展が期待されている。
これらのキーワードは2025年の日本経済の中心を成すだろう。
しかし、まだ支持が少ないものの、今後重要なトピックとなる可能性があるキーワードも浮かび上がっている。次に、マーケティング分野で有効とされるイノベーター理論を用いて、注目のキーワードをさらに深堀りしていこう。
- 「自動運転」「ウェルビーイング経営」がアーリーマジョリティに、普及拡大の新戦略が必要なとき
イノベーター理論[2]では、新しいアイデアや技術が社会に普及する過程を説明している。この理論によると、市場のユーザーは5つのタイプに分かれ、それぞれに最適な戦略が求められる。
流行やトレンドに敏感な“アーリーアダプター”には、「暗号資産」や「スタートアップ」、「アジャイル経営」などの新しいワードが支持を得ていた(図1)。“アーリーアダプター”は、新しい技術や商品をいち早く取り入れる一方で、そのメリットにも強い関心を持つ。こうした層が支持する言葉やトレンドは、次に紹介する“アーリーマジョリティ”へと広がりを見せる。
アーリーマジョリティには、「自動運転」や「ウェルビーイング経営」などが入ってきた。これらの言葉が広まるためには、単なる流行に終わらせず、実際に価値があると感じてもらえる理由を示す戦略が求められる。例えば、社員の幸福や健康を重視する「ウェルビーイング経営」は、“アーリーマジョリティ”層にとっては、業績向上に直結する経営戦略として評価されるだろう。
【図1 企業が選ぶ2025年の注目キーワード】

まとめ
本レポートでは、イノベーター理論を用いて、2025年に注目すべきキーワードを検討した。特に「自動運転」や「ウェルビーイング経営」といったキーワードは、“アーリーマジョリティ”層に浸透しつつあり、今後さらに普及することが予想される。これらは、“アーリーアダプター”から“アーリーマジョリティ”へと<キャズム(深い溝)[3]>を越えて、より広く一般的に受け入れられる段階に達しているとも言える。とはいえ、言葉自体が重要なのではなく、それらの背後にあるアイデアや戦略こそが価値を生む。中小企業の経営者やビジネスパーソンは、これらの新しい動向を把握し、自社に合った戦略をいち早く取り入れることが求められよう。
[1] 帝国データバンク、「2025年の注目キーワードに関するアンケート」(2025年1月17日発表)
[2] Rogers, Everett M., Diffusion of Innovations, 1962。イノベーター理論の5タイプは以下の通り。(1)イノベーター(革新者):新しい商品・サービスをいち早く手に取るユーザー層、(2)アーリーアダプター(初期採用者):イノベーターに続く流行やトレンドに敏感なユーザー層、(3)アーリーマジョリティ(前期追随者):流行に乗り遅れたくないと考えるユーザー層、(4)レイトマジョリティ(後期追随者):新しい商品・サービスの導入・購入に慎重なユーザー層、(5)ラガード(遅滞者):5タイプのなかで最も保守的なユーザー層
[3] Moore, Geoffrey A., Crossing the Chasm: Marketing and Selling Technology Products to Mainstream Customers, 1991

Contact Usお問い合わせ先
担当部署
株式会社帝国データバンク 情報統括部 TEL:03-5919-9343 Email:keiki@mail.tdb.co.jp