レポートスポットワーク(スキマバイト)に関する企業の意識アンケート

「スキマバイト」活用、企業の4割が前向き~人手不足解消の期待も、品質低下や情報漏洩リスクが課題に~

2024/11/21
雇用・人材  アンケート

空き時間に短時間、単発で働く「スポットワーク(スキマバイト)」という新しい働き方が広がりをみせている。

働き手側においては、履歴書や面接が不要で、自分の都合に合わせて短時間・単発で働ける気軽さ、企業側では必要な時に必要な人員を柔軟かつスピーディーに確保できる点がスポットワークの魅力である。スポットワーク仲介サービスのパイオニアと言われている「タイミー」は2024年7月に上場を果たしたほか、同様のサービスを始める企業も相次いでおり、市場が急拡大している。

そこで、帝国データバンクはスポットワーク(スキマバイト)を請け負う「スポットワーカー」の活用について企業にアンケートを実施した。

※アンケート期間は2024年11月8日~12日、有効回答企業数は1,685社(インターネット調査)

調査結果(要旨)

  1. 企業の約4割がスポットワーカーの活用に前向きである一方で、リスク管理などの課題も多い
  2. 業界別、特に単発で対応しやすい、「個人向け販売」を含む『小売』や、『運輸・倉庫』などで活用に前向きな企業の割合が高い

1. 企業の約4割がスポットワーカーの活用に前向きである一方で、リスク管理などの課題も多く

スポットワーカーの活用に興味があるか企業に尋ねたところ、 「既に活用している」が8.3%、「活用を検討している」が5.3%、「検討はしていないが、興味はある」が24.5%だった。合計すると、『活用に前向き』な企業は38.1%となった。

一方で、「興味はない」企業は49.8%だった。

「活用に前向き」な企業においては、「最低賃金の上昇に加え、新規人材の確保も容易ではないため、活用を検討している」(繊維・繊維製品・服飾品小売)といった声にあるように、人手不足への対応が背景にある企業が多かった。また、「働き手の空き時間を利用できるので、社会全体の生産性が上がり、良いと考える」(専門サービス)とのコメントもあがった。

他方で、「スポットワーカーの活用は人手が足りない隙間の時間を埋められるメリットがあるが、さまざまな人間が入れ替わることで内部的な情報漏洩も考えられ、検討段階にとどまっている」(旅館・ホテル)や「人手不足の解消には有効だと思うが、労働者の質が分からないため、望んだ成果を得られないなどの懸念点がある」(不動産)というように、興味はあるもののリスク管理や採用ミスマッチに関する不安から活用を躊躇する様子もみられた。

活用に「興味はない」企業からは、「作業の正確性やスピードを担保することが難しい」(化学品製造)や「当社はメーカーであり、安全管理や品質管理の観点からスポットワーカーの活用は現実的ではない」(鉄鋼・非鉄・鉱業)など、品質の低下や作業効率の悪化を不安視するコメントがあがった。また、「受け入れ・教育コスト、業務の分担など、スポットワーカーを受け入れるためのコストや労力がかかる」(飲食店)のように、コストの発生に関する懸念の声も聞かれた。

2. 業界別、特に単発で対応しやすい、「個人向け販売」を含む『小売』や、『運輸・倉庫』などで前向き

スポットワーカーの「活用に前向き」な企業の割合を主な業界別でみると、『小売』(50.6%)は全体(38.1%)を12.5ポイント、『運輸・倉庫』(46.8%)は全体を8.7ポイントそれぞれ上回った。

さらに細かい業種でみると、ガソリンスタンドなどを含む「専門商品小売」は活用に前向きな企業の割合が55.2%と突出して高かった。

一方で、ソフト受託開発など「情報サービス」は23.7%と全体を14.4ポイント下回ったほか、「建設」(30.3%)も比較的低い割合となった。企業からは、「技術職なのでスポットワーカーでできることが少ない」(情報サービス)や「建築業は専門性が高い業種のため、活用は難しい」(建設)など、専門性を求められる技術職が多い業種では親和性が低いといった意見が複数あがった。

まとめ

スポットワーク(スキマバイト)を請け負うスポットワーカーの活用は、急な欠員が出た際や繁忙期などにおいて企業の人員確保の手助けとなるほか、人材の長期雇用への引き抜きが一般的に可能であるため、中長期的な人手不足の解消効果も期待される。本アンケートでは、スポットワーカーの活用に前向きな企業は4割近くとなり、人手不足の解消効果を期待するコメントが複数あがっていた。また、働き手が隙間時間を使うことによる社会全体の生産性向上を期待する声も聞かれた。

一方で、活用に興味がない企業は半数だった。専門的なスキルや技術を要する仕事では依頼できる業務はないとする声が多いほか、対応できる業務があっても、品質の低下や作業効率の悪化、情報漏洩などさまざまなリスクを懸念する様子がうかがえた。さらに、受け入れ体制の準備と都度の業務に関する説明や指導で、時間と費用がかかってしまうとの声も複数聞かれた。

企業におけるスポットワーカーの活用は、自社業務との相性の見極めが欠かせないほか、費用・時間のコストおよびリスクへの対応など解決すべき課題はありそうだが、働き方の多様化と人手不足の深刻化により、スポットワークは多くの働き手と企業の有力な選択肢として期待されよう。

20241121_スポットワーク(スキマバイト)に関する企業の意識アンケート

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