レポート2014年10月の景気動向調査

安倍内閣発足以降、初の3カ月連続悪化 ~ 中小企業を中心に景況感の悪化が広がっており、全国的に低迷している ~

2014/11/06

■調査結果のポイント

  1. 10月の景気DIは前月比1.0ポイント減の44.1となり、安倍内閣発足以降で初めて3カ月連続の悪化となった。公共事業が深刻化する人手不足やコスト上昇で景気の下支え役を果たせていないなか、2週連続の台風上陸も景気悪化の一因となった。国内景気はコスト上昇分を吸収できない中小企業を中心に景況感の悪化が広がっており、全国的に低迷している。今後の国内景気は上昇基調で推移するとみられるものの、一転して下降に転じるリスクもはらんでいる。
  2. 業界別では10業界中9業界が悪化した。『小売』は消費税率引き上げによる反動減からの回復が遅れ、2カ月連続で悪化した。特に、「家具類小売」はピークだった2014年3月からわずか7カ月間で40.9ポイント減と急激に落ち込んだ。
  3. 地域別では、消費者の生活防衛意識の高まりや地域の基幹産業の低迷などから、全体的に景気悪化がみられた。『北海道』や『北関東』では、飼料価格高騰に見舞われた飲食料品関連や生産減少の続く自動車関連などで厳しさが増し、悪化幅が拡大した。2週連続で上陸した台風も広い地域の経済活動に悪影響を与えた。

< 2014年10月の動向 : 国内景気は低迷 >

2014年10月の景気DIは前月比1.0ポイント減の44.1となり3カ月連続で悪化した。

建設関連では、深刻化する人手不足が続くなか、材料費や工賃などの上昇を受注金額に反映できず厳しい状況が続いた。結果として、景気の下支え役が期待される公共事業の執行が入札不調などで滞り、役割を果たせないでいる。また、自動車関連は消費税率引き上げの反動減による生産減少が続き息切れ状態となった。消費回復の遅れからコスト上昇分を小売価格に転嫁できず業績が悪化しているなか、『小売』『サービス』など消費関連の景況感は2週連続で週末に上陸した台風により下押しされた。

国内景気は、コスト上昇分を吸収できない中小企業を中心に景況感の悪化が広がっており、全国的に低迷している。

< 今後の見通し : 上昇基調で推移するが下降リスクも >

日本銀行は、このところのインフレ率鈍化や、人々がデフレマインドに逆戻りするリスクの回避を背景として、10月31日に追加金融緩和を決定した。この金融緩和により為替レートは一段と円安が進行すると予想される。追加金融緩和は、大企業や輸出企業には好材料となるが、輸入企業や内需中心の中小企業にとっては収益を圧迫し、企業業績を悪化させる一因となろう。他方、個人消費では生活コスト上昇を背景とした消費マインドの悪化や実質賃金低下が同時進行しており、生活防衛意識の高まった家計が一段と支出を引き締める可能性がある。

今後の国内景気は、上昇基調で推移するとみられるものの、一転して下降に転じるリスクもはらんでいる。

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