脱・属国
TDB景気動向調査に寄せられた声には、政府の景気回復の論調とは違い、広がらないパイを奪い合うオーバープレイヤーを嘆く声が多くの業界から寄せられている。
「工事は減っているのに業者は増えている。大きな会社が1つ倒産すると3つの建設業が出てくる。きりがない」(建設業)、「各企業の出店意欲がかなり盛んである。逆にパイの奪い合いとなり、淘汰も進んでいる」(スーパーマーケット)など特に、『建設』、『小売』に多い。
実際に、建設業者の数をみると、2006年3月末の建設業許可業者数(国土交通省発表)は54万2,264事業所で前年比3.6%減だが、同年度は更新業者数の多い年度のため減少は失効によるものが含まれており、実際は、前年の56万前後は実態としてありそうだ。それでもピークの2000年3月末(60万980社)からは6.6%減少している。
ただ、公共投資の削減が続くマーケットの方は、公共工事受注額(国土交通省発表)をみると同期間では16%減少しており、パイの奪い合いの状況は否めない。
『小売』は、格差社会の到来などと取りざたされ、高額商品の購買は好調とのニュースがある一方で、消費の伸び悩みがささやかれている。また、まちづくり三法の改正案の可決(2006年5月)で、2007年の適用を前にした出店規制前の大型店の駆け込み出店で、地域小売店の危惧は高まるばかりだ。
このほか、原油高、素材価格の上昇による価格転嫁の攻防は続いている。今回の特別企画調査「仕入れ価格上昇による企業への影響調査」でも「8割超が十分な価格転嫁できず」との結果となった。
川下の需要家は度重なる値上げに対して難色を示すが、転嫁圧力は強く、再編で強大化することを選択し、パワーバランスで優位に立とうとする再編も多くなりそうだ。
オーバープレイヤーが適正となる数まで、再編や淘汰による集約が進むのは、これからのようだ。
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