レポート第9回:新規取引先判断(2)

2020/05/03
与信管理

新規取引先判断の流れ

新規取引先においての業務の流れは、以前示しました「与信管理の流れ」と同様になります。
改めてポイントを列挙しました。

1.取引先評価

新規取引の場合には、営業担当者では相手企業に関する情報が乏しいので、外部情報により客観的に評価した方が良いでしょう。その場合の外部情報は、「商業登記」「調査報告書」「評価点数」「リスク指標」となります。

2.取引判断

倒産するリスク以外のリスクも含めて、長期的に取引していくのにふさわしい相手かを、様々な情報を元に取引可否判断を行います。また、リスクに応じて、取引条件(販売価格、締め日、支払日など)および基本契約書・特約の内容などを判断・設定します。

3.信用枠の設定

新規取引での信用枠の設定には、過去の取引をベースにできませんので、2つの考え方があります。
1つは、新規取引での一定の枠を設定して、リスクの状況に応じて加減する方法です。
もう1つは、新規取引を行う対象企業の業種・規模および自社の規模・状況により、客観的な基準を元に基本となる信用枠を設定し、それをリスクの状況に応じて加減する方法です。

4.売上債権管理

通常の新規取引の際には、売上債権残高はあまり大きくなりませんから、信用枠と比較しても超過することは、ほとんどありません。しかしながら取引開始後には注意すべき点は以下のように挙げられます。
(1)入金予定日に、入金しているか?
(2)取引額が急拡大して、信用枠の増額申請が頻繁に行われていないか?
(3)最初に決めた取引条件を、緩くするように要請されていないか?

取引可否における自動判断

新規取引の取引可否判断を行う場合には、担当者による判断と自動判断があります。自社の取引状況や自社の与信管理方針に応じて、判断方法や判断基準は考え る必要がありますが、仮に取引先が多くて新規取引は全体から見るとわずかな金額となり、与信管理方針としても効率化を優先する場合には、以下のような自動 判断も有効です。

(1)調査報告書においてチェックポイントを作り、それぞれが作成してある基準を満たしていれば取引を開始する。

(2)評価点数が○○点以上であれば、取引を開始する。

(3)倒産確率(リスク指標)が○○%以下(または格付が○○~○○)であれば、取引を開始する。
もちろん、組み合わせで判断した方がより安全性は増すことになります。効率的に判断する場合には、自社においてどのような方法を行うか、基準を明確にすることが重要です。

信用枠設定におけるリスク加減

信用枠を設定する場合には、企業ごとのリスクに応じて信用枠の加減を行った方が良いでしょう。
信用枠を納得感のあるものにするためには、リスクの状況には「リスク指標」を使うことが効果的になります。例えば、倒産確率で表わされる「リスク指標」では、「倒産確率1%であるA社と、倒産確率2%のB社では、信用リスクは2倍違う」というように、具体的な数字で表現できますので、そのまま信用枠の加減に利用できます。
具体的な信用枠の加減は、以下のようになります。

■新規取引を行う対象となるA社、B社は、同業種であり、同規模の売上である。

■それぞれの倒産確率は、A社1%、B社2%である。

■信用枠のリスクによる加減基準値を1%とした場合は、信用枠は以下のとおりである。
A社 : 業種・規模等による基本となる信用枠200万円×(1%÷1%)=200万円
B社 : 業種・規模等による基本となる信用枠200万円×(1%÷2%)=100万円

※この数年の統計では倒産する会社の割合は1%程度ですので、倒産確率2%とは信用リスクが2倍あり、一般的には高い倒産確率と言えます。

このように「倒産確率」を使うと、信用枠を加減する明確な基準として利用できます。

新規取引先判断の流れのまとめ

新規取引先判断の流れの中の各局面で、どのような判断方法や判断基準にするか、考える必要があります。それは、企業の取引状況・与信管理方針によって大きく異なります。自社に合った方法・基準を考えて、明確に文章にしておくことが重要です。
徹底的に安全性にこだわる場合には、明確な客観的な判断基準と共に、担当者が判断するという基準も必要になるかも知れません。その場合には、多くの情報を元に行うことが重要でしょう。
効率的に与信管理を行うためには、外部情報の利用により個別の人的判断が不要なぐらい、明確な判断基準と設定方法等を事前に用意することが重要になります。

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