与信管理の流れ
今まで、与信管理に関する基本的な考え方を示して参りましたが、今回からは実際の運用方法について説明していきます。与信管理の流れを簡単に示すと、以下のようになります。

1.取引先評価
今まで示して来たように、取引先評価にはさまざまな情報や方法があります。最も確かなのは、取引先に対して信用調査なうなど、複数の視点から企業の詳細情報を把握した上で、「リスク指標」を参考に判断していくことですが、営業マンによる会社や担当者のわずかな変化を見逃さないなど、「取引先を見る目」を従業員一人一人に意識させることが大切です。
また、当然のことですが、取引先に関する情報の中に、緊急を要する風評や、評価の急落、リスクの増大等が含まれていた場合には、更なる情報収集と、緊急対応が必要になります。
2.取引判断
取引先の評価を元にして、新規取引先の取引可否判断や、既存取引先の継続可否判断等を行います。また、回収サイト日数や販売価格などの取引条件の、取引先評価による設定や見直しを行います。評価が低い場合には、契約書に付ける特約等の設定や、担保や保証金の設定なども検討することになります。
3.信用枠の設定
取引先評価と、取引先の企業規模や取引規模等を勘案して、信用枠を設定します。これは、ピーク時の売上債権残高の上限を示すものです。
設定方法では、自社の審査担当者による判断や、その経験から自社独自の設定ロジックを構築している企業もあります。また、与信管理に関する各種書籍の中で、さまざまな設定方法が記載されていますので、その中から選択して利用しているケースもあります。
効率性や収益性を優先する場合には、取引先の売上・業種および自社の規模などの各種データを元に、「リスク指標」を活用して自動的に信用枠を算出する方法が良いでしょう。
4.売上債権管理
月末時点の売上債権残高を集計し、月次で信用枠と比較します。取引単位ではなく、企業単位での売上債権残高にしておく必要があります。
もし、売上債権残高が信用枠を超過している場合には、回収促進などを行い、常に売上債権残高が信用枠を下回るようにしておく必要があります。
もちろん、売上債権残高が信用枠を下回っている場合でも、入金予定日を超えても入金が無いなら、回収促進を行う必要があります。
以上のように、この流れを全ての取引先に関して1カ月サイクルで回して行きます。これが与信管理の基本的な流れです。取引先の数や各取引先との取引金額の多寡、取引に関する業界慣習、自社の営業体制など、要素により運用方法は各社各様になりますが、最小単位をこのサイクルとすることに変わりはありません。
取引先のさまざまな情報や売上債権残高をスピーディーに把握し、それを元に判断を下して、設定した信用枠の中で売上債権残高が収まるように回収状況を管理していく、この「与信管理の流れ」をしっかり認識していくことが、「与信管理」のきちんとした運用を行うための大切な一歩になります。

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