レポート第14回:実施(I)、管理(C)

2018/11/27

第2回で、マーケティングの基本プロセス「R・STP・MM・I・C」を紹介したように、実施(I)、管理(C)は、立案、具体化した戦略を実行し、その結果を次の機会にフィードバックするためのプロセスです。

実施(I)には、戦略シナリオを立て、具体的なアクションが起こせるように行動計画を策定することが含まれます。ターゲットおよび具体的な施策である4Pが明らかになっただけでは、行動に移せません。数値にまで落とし込めていないマーケティング計画は絵空事であり、実行すべきかの判断もつかないからです。
戦略に沿った行動計画では、具体的なオペレーションを規定します。マーケティング目標をブレークダウンして、取るべき行動がイメージできるような具体的なKPIや目標値を設定することがポイントです。
ここで注意したいのは、セールスの現場を踏まえない無理なKPIや目標値をマーケティング部門が一方的に設定してしまうと、図1のように想定していたシナリオ通りにはいかず、悪循環に陥ってしまいます。そのため、マーケティング部門とセールス部門の建設的な対話と目標設定した上での実施(I)が重要です。

また、管理(C)では、モニタリングの仕組みを整備して進捗確認や軌道修正を行います。実施状況を確認するためのコントロールシステムを整備できればベストですが、まずはできる限り数値化することから始めましょう。販売量や売上金額、利益率やシェアなどきめ細かい設定を行うことが重要です。
マーケティングにおいても成果を出すためにはPDCAサイクルが必要です。計測できないものは改善もできません。計画時のKPIや目標値とのかい離を常にチェックすることで進捗を管理し、必要に応じて修正行動を検討すべきか判断できる体制を整えましょう。

図1:マーケティングにおけるPDCAサイクル

今回は、実施(I)、管理(C)のプロセスまで踏み込んで帝国データバンクが支援した事例を紹介します。
「セールス現場が使ってもいいと思える施策作り」をコンセプトの一つとして、R・STP・MMから一気通貫のプロジェクト型で支援しました。

~事例:不動産仲介~

<背景>

従来、不動産業者や不動産ファンド等が主要な取引先でしたが、マーケットが成熟し不動産業者間の繋がりが強くなったことで、自社で買い手を探索できるようになり、仲介会社を利用せず取引をするケースが増加していました。そのため、一般事業会社の有望なターゲティングが急務でした。
これまでもマーケティング部門は仮説を元にした戦略・計画を展開していましたが、「勘」と「経験」に頼ったものになっていました。また、半期での成果を求めるあまり、PDCAサイクルを意識することはなく、目標数字の達成に向けて、期初に設定されたターゲットへ密に営業することだけに集中していました。加えて、取引に至ったとしてもその理由やニーズを蓄積しておらず次の戦略策定に活かされていませんでした。


<実施内容>

この事例では、帝国データバンクと当社でプロジェクト体制を組み、以下を実施しました。

・セールス部門へのヒアリング(「勘」と「経験」の洗い出し)

・受注データの分析(「勘」と「経験」の検証)

・営業結果蓄積シートの作成(ニーズの蓄積)

・①分析、②ターゲット提供、③営業、④営業結果フィードバックのサイクル構築(月次の定例会および週次の実務者ミーティング実施)

図2:運用イメージ

<結果>

帝国データバンクの強みである「ストックデータ活用」をもとにPDCAサイクルを回すことで、データに基づくマーケティングの実施(I)、管理(C)が実現できました。
PDCAサイクルを何度も回し、ブラッシュアップされた仮説により「短期的な成果」として投下した資源以上の売上が作れ、またニーズの蓄積とその分析結果から「長期的な成果」として、これまで想定していなかったターゲット像が見えてきました。

計14回にわたるマーケティング講座も今回をもって最終回となります。本講座では、企業の実践の場でTDBのデータを活用する事例の紹介を交えながら、マーケティングについてのヒントを提供できれば、という思いで執筆させていただきました。

「大量生産・大量消費」と言われる高度経済成長期では、セールス部門の大量行動による新規獲得と、「引き合い」といった既存顧客からの要望である程度の売上を作ることができました。しかし、今や高度経済成長やバブルは昔話となり、成熟した市場の中で、他社と競争しながら売上を作らなければいけません。
そのためには、より顧客を理解しニーズを顕在化させる、売れる仕組み「マーケティング」が必要になります。

今後、テクノロジーの進化とともにBtoBマーケティングに関するツールや手法は日々変化していきます。それらを駆使し、マーケティング業務を効率化して成果を出すことがマーケティング部門には求められます。もし、貴社の「マーケティング」に困ったら、「ストックデータ活用」と「調査力」といった強みのある帝国データバンクに一度ご相談ください。

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