レポート第10回:セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)

2018/11/27

第8回第9回では帝国データバンクが支援した調査(R)ステップにおけるマーケティング事例について紹介しました。今回はマクロ/ミクロ環境分析を通して把握できた自社の強み・弱み、市場の機会・脅威を踏まえて、市場に効果的にアプローチするために実践するセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)について考えていきます。

まずは、STPの意味を整理します。


~S:Segmentation(セグメンテーション)~

市場全体が同じニーズを持っているとは限りません。しかし、一人ひとりのニーズに全て対応することは現実的に困難です。そのため、共通のニーズや行動をもつグループに市場を細分化することが重要であり、これをセグメンテーションといいます。セグメンテーションには一般的に図1のような切り口がありますが、BtoCとBtoBでは少し異なります。それぞれの特徴について簡単に触れますとBtoCの場合、購入者は消費者となり、その場の思いつきや広告を見た感性で購入することがあります。一方でBtoBの場合、企業の購買担当が情報収集をしたうえで、稟議により複数の承認を経て購入にいたるように、購買までのプロセスはBtoCに比べて複雑です。そのかわり、継続的な取引が発生したり、メンテナンスが必要になったり、関係性は長期的になります。このような特徴を踏まえて切り口を検討していく必要があります。最近では、ITテクノロジーの進化によりアクセス解析ツールやマーケティングオートメーションなどを使うことで、顧客のWeb行動を把握できるため、セグメンテーションの切り口はアイデア次第でいくらでもあり、マーケティング担当者の腕の見せ所といえるでしょう。

図1:セグメンテーションの切り口例


~T:Targeting(ターゲティング)~

セグメンテーションにより、細分化されたグループから自社にふさわしい市場を決めることをターゲティングといいます。ターゲティングした標的市場については、規模や成長性などをみて「魅力がある」かどうか、自社の強みや価格競争力などをみて「自社がその市場で発揮できる能力がある」などの視点で検討します。

コトラーによると、ターゲティングのタイプは大きく以下の3つに分類されます。

1.非差別化マーケティング

市場全体をターゲットとして、ひとつのプロダクトを投入する、いわゆるマス・マーケティングの手法です。市場の平均的なニーズしか満たせないため、機会損失も多いアプローチです。

2.差別化マーケティング

複数のセグメントにあうプロダクトや販売チャネル、プロモーションを用意するため、マーケティングコストが非常にかかります。ガリバー企業がなせるアプローチで、フルライン戦略とも呼ばれます。


3.集中化マーケティング

ある特定のセグメントを選択して、そのセグメントにおけるニーズに対応するためにマーケティング資源を集中します。限られたセグメントに特化することで、細かなニーズにも対応できるようになります。

~P:Positioning(ポジショニング)~

ターゲティングにより選定した標的市場の顧客に対して、競合と比較して自社サービスが相対的にどのようなポジションにあるのか、どのような優位性があるのかを明らかにし、顧客に伝えて認識してもらう必要があります。どれだけ良いサービスであったとしても、その良さが顧客に伝わらなければ意味がありません。自社の視点ではなく、顧客が魅力的なサービスとして認識しているかどうかが重要です。STPはいわば、自社の強みを発揮(ポジショニング)できるように市場をセグメンテーション・ターゲティングすることとも言えます。

過去の講座でもバリューチェーン分析やSWOT分析など自社の強みを整理するフレームワークを紹介しましたが、意外と自分たちでも気づいていない点が、顧客から評価されていることもあります。自社の強みの源泉を掘り下げる手法として、「知的資産経営のススメ」という講座も掲載していますので、是非そちらもご覧ください。

では、タナカメタル工業におけるSTPについて考えてみます。いずれは製品メーカーとなることを目指していますが、段階的戦略として製品に近い医療機器部品製造へチャレンジすることを第7回で触れました。

タナカメタル工業自身は強みとして高い技術力を持っているため、新製品開発に積極的に取り組んでいるというセグメンテーションの切り口などはフィットしそうです。例えば、決算書情報から売上に対する研究開発費の割合が高いという条件でのセグメンテーションです。また、エンドユーザーへの広がりを重視するのであれば、成長市場である新興国へ販路を持っているか否かという切り口でみるというのも面白いかもしれません。いずれにせよ、「高い技術力」や「産学連携の共同開発の実績」などの強みを活かす(ポジショニング)ことができる市場にセグメンション・ターゲティングを行う必要があります。

次回は、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)において、帝国データバンクが支援した事例について掲載する予定です。

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