前回までマクロ/ミクロ環境分析やSWOT分析などについて説明してきました。BtoBマーケティングの調査(R)ステップにおいて、帝国データバンクでは多くの企業を支援した実績があります。調査のアプローチは大きく2つに分類でき、帝国データバンクが保有する企業データを分析する「ストックデータ活用」と、信用調査業務で培った「調査力」を活用して追加情報を収集する方法です。今回は「ストックデータ活用」の事例についていくつか紹介します。
~事例1:広告会社A社~
<目的>
小売業やサービス業を中心に複数の業種を対象として、広告事業を展開しています。戦略を策定するうえで、自社サービスのターゲットとなりうる市場のポテンシャルや成長性、市場の寡占状況などの特徴を客観的に把握し、資源を投下する市場を見極めることが目的でした。PEST分析(マクロ環境分析)における「E:経済」、5フォース分析(ミクロ環境分析)における「買い手の競争力」を把握するために、自社のターゲット市場を分析しました。
<分析内容>
約147万社の企業概要データベース COSMOS2を活用して分析を行いました。COSMOS2は、1,359に分類した業種の情報を保有しており、事例1ではA社が指定する約40の業種について分析を行いました。
分析項目例 | 分析内容例 |
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市場のポテンシャル | プレイヤーの数や市場規模(売上高合計) |
市場の成長性 | その市場の売上高合計の伸び率 |
市場の寡占状況 | 上位何社で売上の80%を占めているのか |
従業員数分布 | 業種ごとの従業員数分布 |
<分析の効果>
ターゲットとする市場を定量的に把握することができたので、どの市場にいくら程度、資源投下すべきかを議論する基礎資料になりました。また、寡占状況がわかったことで、上位のプレイヤーを抑えればよいのか、広い間口にアプローチが必要なのかの戦術をたてやすくなりました。
図1:分析イメージ

~事例2:建築資材卸B社~
<目的>
新たなエリアに事業所を開設するための準備として、早期に市場を把握して効率的な営業展開を進めたいと考えていました。既に競合企業はそのエリアに進出しているため、ターゲットとなる市場のプレイヤー数だけではなく、競合企業やターゲットとなる企業の商流を把握することが目的でした。5フォース分析(ミクロ環境分析)における「買い手の競争力」「既存企業同士の競争」を把握するために、自社のターゲット市場を分析しました。
<分析内容>
約180万社分、蓄積されている信用調査報告書(CCR)には、調査員が現地現認によりまとめた「代表者」「系列・沿革」「業績」「取引先」「取引銀行」「資金現況」「現況と見通し」「財務諸表・財務諸表分析」「不動産登記写」が記載されています。B社の事例では、「取引先」の情報を基にしたデータで分析を行いました。全体を把握したうえで、効率的な営業活動をターゲットリストもあわせて提供しました。
分析項目例 | 分析内容例 |
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有力な建設業者はどこから購入しているのか | 対象企業の「得意先」「仕入先」のデータベースをつかって商流を分析 |
競合企業が販売している先はどこか | |
ターゲットとする企業はどこから購入しているのか |
<分析の効果>
ターゲットとする企業の商流を事前に把握できたため、顧客理解の時間が短縮され、スムーズに営業活動を開始することができました。商流から市場を把握したり、ターゲティングをすることは新しい試みでありましたが、半期で想定以上の実績となりました。
図2:分析イメージ

~事例3:BPOサービス提供C社~
<目的>
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供しているが、事業を拡大していくに際して、自社のサービス領域にどれくらいの競合企業がいて、どのような特徴があるのかを把握したいという姿勢がありました。そのため、5フォース分析(ミクロ環境)における「既存企業同士の競争」「買い手の競争力」を把握するために、競合と自社のターゲット市場を分析しました。BPOサービスにおけるバリューチェーン分析(ミクロ環境)の付加価値を把握するための分析も行いました。
<分析内容>
信用調査報告書(CCR)の「現況と見通し」ページをテキストマイニングすることで、業種よりも細かい提供サービス単位で3つのカテゴリーに参入企業を分類しました。その後、それぞれの市場規模や収益構造、得意先の業種傾向などについて分析を行いました。
分析項目例 | 分析内容例 |
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BPOサービスの分類 | 「経理系」「給与系」「福利厚生」の3つにテキストマイニングして、プレイヤー数や市場規模を算出 |
営業利益率の分布 | 企業規模と営業利益率の関係をプロット |
得意先の業種傾向 | BPOサービスがどのような業種、規模の会社にサービス提供しているか |
<分析の効果>
BPOサービス参入企業の分析を行うことで、自社のポジションを把握することができました。元々、C社はBPOサービスに加えてコンサルティングまで行うことを強みとしていましたが、それが収益性向上となることがデータでも確認することができました。今後は、その強みを維持・向上させるために、コンサルティング人材育成を強化する方針としました。
図3:分析イメージ

ご覧いただいたように、何を把握したいのかによって調査(R)のアプローチは様々です。ストックデータを活用することで、様々な角度からの分析が可能となり、根拠に基づいた戦略立案が可能となります。
今回ご説明した事例は、帝国データバンクが保有する一社一社の情報を積み上げたデータを分析した結果となります。そのため、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)へ進んだ際には、「この市場にいる100社の顔ぶれがどの企業であるか」がわかります。つまり、調査(R)からSTPに至る戦略立案プロセスに一貫性を持つことができます。これが帝国データバンクの「ストックデータ活用」のメリットと言え、お客さまに評価をいただいている点です。
次回は、帝国データバンクの「調査力」を活かした具体例について掲載する予定です。

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