レポート第5回:調査(R)ステップにおける「マクロ環境分析」~その2~

2018/04/27

マクロ環境分析<医療機器市場の事例>

「マクロ環境分析」は政治・経済・社会・技術の4つの観点で情報を整理することが一般的と第3回でご説明しました。これまで、政治・経済について整理しましたので、今回は残りの2つの観点から具体的に考えていきます。


~社会の観点~

社会の観点では、人口や流行、生活者のライフスタイルの変化などが挙げられます。
医療機器業界であれば、人口動態の変化は重要な指標で抑えておく必要があります。特に、年齢構成や家族構成などで細分化すべきです。
図1・2は、国立社会保障・人口問題研究所が発表している人口ピラミッドに関するグラフです。国勢調査をもとにグラフが作成されており、参考までに1995年版と2015年版を記載しています。20年間の比較ですが、圧倒的に老年人口が増加していることが分かります。これは、いわゆる「団塊の世代」(1947年~1949年に生まれた人)が65歳以上となるのが2015年であるためです。

  

図1:人口ピラミッド1995年版

図2:人口ピラミッド2015年版

     

国立社会保障・人口問題研究所 人口ピラミッド

英ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授の著書、「LIFE SHIFT―100年時代の人生戦略」がベストセラーとなり、巷でも「人生100年時代」という言葉を耳にするようになりました。日本政府も、「人生100年時代構想会議」を設けており、着目していますが、その背景として出された試算(内閣府 平成28年版高齢社会白書)では、2060年には、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になるとされています。
また、老年人口が増大することで、医療ニーズが高まることは容易に想像がつきますが、それらは、厚生労働省が発表する国民医療費の推移から確認することができます。
図3は、厚生労働省が発表している国民医療費の統計データを抜粋したグラフです。見事に右肩上がりで上昇推移していることが分かります。

 

図3:国民医療費の推移

厚生労働省 平成27年度 国民医療費の概況

また、厚生労働省が2016年に発表した「医療費の伸びの要因分解」では、医療費の伸び率の要因のおよそ半分は、「高齢化」によるものと試算されており、老年人口の増大に伴い、医療費の増大も進んでいることが証明されています。
老年人口の増大や医療費の増大は「需要」=「市場規模」として捉えられるため、それらに対する「供給」=「生産規模」にギャップがあるのであれば、医療機器事業に注力したいタナカメタル工業にとってはよい影響ということが分かります。

~技術の観点~

技術の観点では、技術変化による影響を捉えます。
閣議決定されている「未来投資戦略2017-Society 5.0の実現に向けた改革-」でも、戦略分野として「健康寿命の延伸」が挙げられており、『団塊の世代が全て75歳以上となる「2025 年問題」に間に合うよう、技術革新を最大限活用し、個人・患者本位で、最適な健康管理と診療、自立支援に軸足を置いた介護など、新しい健康・医療・介護システムを構築する。』と明記されています。
「未来投資戦略2017-Society 5.0の実現に向けた改革-」で記載されている「技術革新」は以下の5つです。


1.データ利活用基盤の構築

2.保険者や経営者によるデータを活用した個人の予防・健康づくりの強化

3.遠隔診療・AI等のICTやゲノム情報等を活用した医療

4.自立支援・重度化防止に向けた科学的介護の実現

5.ロボット・センサー等の技術を活用した介護の質・生産性の向上

医療機器業界における技術変化は他にも多々ありますが、大きな方向性として、政府がどこの分野に「集中と選択」をし、政策資源を投下し、未来投資を促進させようとしているのかを踏まえることは、必要な視点となります。

次回は、これまでの「マクロ環境分析」の4つの観点を踏まえたうえで、自社の強み弱みから、参入する市場への適応性を判断するための「ミクロ環境分析」について掲載する予定です。

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