レポート株式会社オルツ

2025/07/30

TDB企業コード:613014046 東京都港区 パッケージソフト業 今年初の上場倒産、不適切な会計処理を行っていた 民事再生法の適用を申請 負債24億円

(株)オルツ ロゴ

「東京」 (株)オルツ(港区六本木7-15-7、代表日置友輔氏)は、7月30日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、保全処分及び監督命令を受けた。

 監督委員には、武田康弁護士(みずき総合法律事務所、新宿区市谷八幡町13、電話03-6280-8701)が選任されている。

 当社は、2014年(平成26年)11月に設立された。高精度自動文字起こしソリューション「AI GIJIROKU」などの開発・販売を手がけていた。主力の「AI GIJIROKU」は、生成AIを利用した高精度の音声認識と日本語最高精度のLLM(大規模言語モデル)を組み合わせ、2020年1月にリリースしたサービス。30カ国語に対応し、リアルタイムで社内会議のテキスト化・要約などが可能なほか、業界別専門用語の認識機能も強化され、数多くの大手企業も導入。これまで調達した資金は累計100億円、導入企業数は9000社を突破したと公表していた。2020年12月期に約5500万円だった年収入高(単体)は、利用者の増加や知名度の向上に伴い2023年12月期には約41億1100万円(同)まで伸長し、2024年10月に東証グロースに株式上場を果たした。初の連結決算となる2024年12月期の年収入高は約60億5700万円となったが、開発業務の外注費やサービス開発・人材投資などの費用が嵩み赤字決算が続いていた。

 こうしたなか、2025年4月25日に「AI GIJIROKU」の有料アカウントに関して、一部の販売パートナーから受注した売り上げについて、実際に利用されていないなど売り上げが過大に計上されている可能性が認められたとして、第三者委員会の設置および2025年12月期第1四半期決算の発表を延期。さらに6月には、実態のない架空取引を繰り返す循環取引で売り上げを水増しして有価証券報告書などに虚偽記載をした疑い(金融商品取引法違反の疑い)で、証券取引等監視委員会が4月に当社の本社や関係先を強制調査していたことが報じられた。7月には2024年12月期までの4期の売上高について、最大9割が循環取引による過大計上だったと第三者委員会に認定された。同月には当社の株式が東証の監理銘柄(審査中)に指定され、代表も辞任するなど動向が注目されていたなか、事業価値の毀損と財務状態の悪化が深刻となるおそれがあることから、申し立てに至った。

 負債は債権者約400名に対し、約24億円(2025年6月30日現在)。

 今後は、事業を継続しつつスポンサーを模索し、当該スポンサーへ事業を承継することで再建を図るとしている。

 なお、上場企業の倒産は2025年に入って初となり、2024年11月の日本電解(株)(東証グロース、民事再生法)以来8カ月ぶり。