レポートAPB株式会社

2025/04/24
倒産速報

TDB企業コード:664025991 次世代リチウムイオン電池「全樹脂電池」の研究、開発、製造 破産手続き開始決定受ける 負債34億8500万円

APB 本社

「福井」 APB(株)(資本金1億円、越前市庄田町31-1-5、代表大島麿礼氏)は、4月15日に福井地裁へ自己破産を申請し、同月23日破産手続き開始決定を受けた。

 破産管財人には寺田昇市弁護士(えちぜん法律事務所、越前市新町9-10-4、電話0778-42-5868)が選任されている。

 当社は、電気自動車用リチウムイオン電池の開発を手がけていた慶應義塾大学特任教授の堀江英明氏と、ベンチャーキャピタルの合弁により、2018年(平成30年)10月に設立された。集電体を金属から樹脂に変えた「全樹脂電池」の研究・開発・製造を行っていた。従来型のリチウムイオン電池の課題であった複雑な製造工程や発火リスクなどを改善しつつ、高エネルギー密度を実現。大規模蓄電池にも応用可能なうえ、形状加工度が高いことから多様な用途への応用も期待されていた。

 2019年3月に三洋化成工業(株)(TDB企業コード:500025003)と資本業務提携。2020年3月以降は、上場企業をはじめとした大手企業を引受先とする第三者割当増資により80億円規模の資金調達を行い、2021年5月には現本店地に「福井センター武生工場」を開所。さらに、投資ファンドからの出資を得るなど、2026年の大規模量産化に向けて資金調達を進めていた。

 しかし、設立以後、技術的な問題が散発したことで量産化に時間を要し、大幅な赤字計上が続いていた。2022年12月には、三洋化成工業(株)が株式を売却し、半導体の設計・開発やデジタルインフラ事業を手がける(株)TRIPLE-1(TDB企業コード:534019598)に筆頭株主が交代。その後も、銀行系列の投資ファンドなどの出資を受けていたものの、2024年3月28日の減資を経て、2024年3月期決算で約9億6200万円の当期純損失を計上。同年6月20日には堀江氏が代表取締役を解任され、(株)TRIPLE-1取締役の大島麿礼氏が代表に就任するなど、動向が注目されていた。

 2024年11月1日には、当社株主である北國銀行グループの(株)QRインベストメント(TDB企業コード:233059385)が東京地裁へ会社更生法手続き開始の申し立てを行い、更生手続きを進めながら事業継続を模索する計画であったが、同月19日までに新エネルギー・産業技術総合開発機構が支援継続停止の措置をとったことで、再建の前提となるDIPファイナンスの調達が困難となり、同月21日に申し立ては取り下げられていた。

 2025年2月には全従業員への退職勧奨と4月末までの休業を告知、3月には県税・市税の滞納により企業立地促進補助金の交付決定が取り消され、交付金約5億円の返還命令を受けるなど混乱を極めるなか、事業継続を断念し、今回の措置となった。

 負債は債権者約200名に対し約34億8500万円。