レポート協栄生命保険株式会社

2000/10/20

TDB企業コード:985161554 東京都中央区 中堅の生命保険会社 戦後最大の倒産 更生特例法の適用を申請 負債4兆6000億円

中堅生命保険会社の協栄生命保険(株)(資本金575億9821万7000円、東京都中央区日本橋本石町4-4-1、大塚昭一社長、従業員1万3573人)は、10月20日に東京地裁へ更生特例法の適用を申請した。
同社は、戦前の民間生命保険各社の出資によって設立された協栄生命再保険会社を前身として、1947年(昭和22年)5月に設立された株式会社組織の生命保険会社。再保険を取り扱う生保として知られるほか、昭和20年代から業界で始めて定期保険を主力に販売し、また個人年金にも注力し1971年にはいち早く成人病保険を発売するなど、新商品開発にも積極的であった。
2000年3月期の保険料等収入の内訳は、保険料91.3%、再保険収入8.7%で、保有契約高は約56兆4520億円(うち個人保険41兆3869億円)に達し、3月期末の総資産が4兆6099億円と生命保険業界11位にランクされていた。営業面では教職員、防衛庁、商工団体など官公庁関係に強みを発揮し、多くの公的団体の共済制度を引き受けていることでも知られ、早くからブラジルなど海外へも積極的に進出し、ピーク時の94年3月期には年収入高約9655億5100万円を計上していた。
しかし、バブル崩壊以降の低金利、株価低迷など運用環境の悪化で、過去に販売した高利回りの貯蓄性商品など「逆ザヤ」となり体力が低下、また消費者の保険契約見直しとなど生保選別が進む中、保険契約や個人年金保険などの新規契約が伸び悩み、2000年同期の年収入高は約6268億4600万円にまで落ち込んでいた。
さらに、今年5月に資本提携先であった第一火災海上保険(相)(以下、第一火災)が経営破綻し、拠出していた基金約300億円の損失が発生。これは99年3月に協栄生命の優先株170億円を第一火災が引き受けることを見返りに拠出していたものだったが、同社が経営実態を隠したまま基金の拠出を申し入れたとして、その後に第一火災を相手に損害賠償訴訟を起こすなどトラブルが発生していた。
その間、99年8月には91ヵ所あった支社を66ヵ所まで削減し、今年2月には情報システム部門を関係会社の(株)アイネスに移管するなどリストラ、組織改革に注力し、また99年12月には地銀、第二地銀等を対象として47億5000万円の第三者割当増資(優先株)をおこなって資本増強するなど立て直しをはかっていたが、保険金の支払能力を示すソルベンシーマージン比率(200%を下回ると業務改善命令が発動される)も210.6%(2000年3月末時点)と低く(10月9日に倒産した千代田生命は263%)、また多額の株式評価損をかかえることなどで信用は失墜していた。さらに、日産、東邦に続き、今年に入っても第百、大正、千代田と生命保険会社の経営破綻、倒産が相次ぎ、新規契約の低迷や解約も歯止めがかからなくなっていた。
こうした中、今年6月には、米国大手保険会社のプルデンシャル・インシュアランス・カンパニー・オブ・アメリカとの間で、約300億円の出資受入れや新たに販売会社を設立することなどを骨子とする資本・業務提携に臨む方向で協議を開始するとの覚書を締結していたが、この交渉が長期化し最終合意にまでは達せず、ついに自主再建を断念し今回の措置となった。
 負債は約4兆6000億円。なお負債規模は、10月9日に更生特例法を申請した千代田生命保険(相)(東京、負債2兆9366億円)を抜いて戦後最大の倒産となる。