レポート倒産集計 2021年 2月報

2021/03/08

倒産件数は442件、2000年以降3番目の低水準
負債総額は777億4500万円、7カ月ぶりの前年同月比増加

倒産件数

442件

前年同月比

▲30.3%

前年同月

634件

負債総額

777億4500万円

前年同月比

+17.1%

前年同月

663億7400万円

主要ポイント

  • ■倒産件数は442件(前年同月比30.3%減)と、2000年以降3番目の低水準
  • ■負債総額は777億4500万円(前年同月比17.1%増)と、7カ月ぶりの前年同月比増加
  • ■負債額最大の倒産は(株)枻出版社(東京都、民事再生)の負債約57億8800万円
  • ■業種別にみると、7業種中5業種で前年同月を下回った。なかでも建設業(72件、前年同月比32.7%減)は2020年5月に次ぐ過去2番目の低水準。小売業(82件、同46.1%減)は8カ月連続で減少し、飲食料品小売(15件)は家庭内消費需要の増加などで引き続き減少傾向。飲食店(28件)は2020年後半にかけての高止まり傾向から一転、3カ月連続の減少
  • ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は325件(前年同月比34.5%減)と、7カ月連続で前年同月を下回った。構成比は73.5%(同4.7ポイント減)を占める
  • ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は275件(前年同月比31.9%減)、構成比は62.2%を占める
  • ■地域別にみると、全地域で前年同月比2ケタ減となった。2カ月連続での全地域減少は2000年以降初。東北(8件、前年同月比61.9%減)は過去最少。関東(188件、同19.3%減)は7カ月連続の減少
  • ■人手不足倒産は5件(前年同月比70.6%減)発生、6カ月連続の前年同月比減少
  • ■後継者難倒産は27件(前年同月比15.6%減)発生、5カ月連続の前年同月比減少
  • ■返済猶予後倒産は37件(前年同月比2.8%増)発生、6カ月ぶりの前年同月比増加


  • ■件数・負債総額

    件数は2000年以降3番目の低水準

    倒産件数は442件(前年同月比30.3%減)と、2020年5月(288件)、2000年1月(354件)に次ぐ2000年以降3番目の低水準。
    負債総額は777億4500万円(同17.1%増)と、依然低水準なものの、2000年以降最小だった前年同月の影響もあり、7カ月ぶりの前年同月比増加。

    ■業種別

    5業種で前年同月比減少

    業種別にみると、7業種中5業種で前年同月を下回った。なかでも建設業(72件、前年同月比32.7%減)は2月としては過去最少、単月ベースでも2020年5月に次ぐ過去2番目の低水準。小売業(82件、同46.1%減)は8カ月連続で減少し、飲食料品小売(15件)は家庭内消費需要の増加などで引き続き減少傾向が続く。また、飲食店(28件、同56.3%減)は2020年後半にかけての高止まり傾向から一転、3カ月連続の減少。
    一方、運輸・通信業(25件、前年同月比8.7%増)、不動産業(17件、同13.3%増)の2業種は増加となった。

    ■主因別

    「不況型倒産」は325件、構成比73.5%

    主因別にみると、「不況型倒産」の合計は325件(前年同月比34.5%減)と、7カ月連続で前年同月を下回った。構成比は73.5%(同4.7ポイント減)を占めた。

    ※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

    ■規模別

    負債5000万円未満の構成比62.2%

    負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は275件(前年同月比31.9%減)、構成比は62.2%を占めた。負債5000万円未満の倒産では、サービス業(80件)が構成比29.1%(同3.4ポイント増)を占め最多、小売業(63件)が同22.9%(同6.1ポイント減)で続く。
    資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が283件(前年同月比34.6%減)、構成比は64.0%を占めた。

    ■地域別

    全地域で前年同月比減少

    地域別にみると、全地域で前年同月比2ケタ減となった。2カ月連続での全地域減少は2000年以降初。東北(8件、前年同月比61.9%減)は過去最少。関東(188件、同19.3%減)は群馬や千葉、東京などで減少し、7カ月連続の減少。近畿(98件、同38.0%減)は、2020年5月に次ぐ過去2番目の低水準。 小売業(20件)などの減少が目立ち、全業種でも2ケタ減。九州(29件、同44.2%減)は8カ月連続で減少し、2018年2月と並び過去最少となった。

    ■態様別

    「破産」は393件、構成比88.9%

    態様別にみると、破産は393件(構成比88.9%)、特別清算は25件(同5.7%)となった。
    民事再生法は24件で、うち14件を個人事業主が占めた。


    ■特殊要因倒産

    人手不足倒産

    5件(前年同月比70.6%減)発生、6カ月連続の前年同月比減少

    後継者難倒産

    27件(前年同月比15.6%減)発生、5カ月連続の前年同月比減少

    返済猶予後倒産

    37件(前年同月比2.8%増)発生、6カ月ぶりの前年同月比増加

    ※特殊要因倒産では、主因・従因を問わず、特徴的な要因による倒産を集計


    ■景気動向指数(景気DI)

    景気DIは35.8、悪化傾向に歯止め

    2021年2月の景気DIは3カ月ぶりに前月比プラス(1.9ポイント)の35.8となった。
    2月の国内景気は、緊急事態宣言が10都府県で延長されたなか、日経平均株価が30年半ぶりに3万円台へ上昇したほか、輸出用の機械関連や半導体、電子部品などの生産拡大もあり、押し上げられた。また、年度末需要に向けた動きが徐々に表れてきたこともプラス要因となった。さらに自宅内消費関連は上向き傾向が続いた。
    他方、外出自粛や営業時間の短縮など新型コロナウイルスの影響による経済活動の抑制がマイナス要因となった。個人消費関連は低水準で推移するなど、業種により景況感に温度差が表れている。

    春以降に緩やかな上向きか

    今後1年程度の国内景気は、新型コロナウイルスの感染状況次第ながら、ワクチン接種の開始による経済活動の正常化に向けた動きなどにより、緩やかな上向き傾向が続くとみられる。また、テレワークの拡大による住宅ニーズの高まりや自宅内消費など新しい生活様式に対応した需要の拡大はプラス要因になると見込まれる。レジャー関連や訪日外国人旅行者数の増加、東京五輪の開催などが期待される。他方、感染状況により消費マインドの後退や雇用・所得環境の悪化、活動自粛の再要請など下振れリスクも依然として大きい。
    今後の景気は、感染状況にともなう下振れリスクを抱えながらも、春以降、緩やかに上向いていくと見込まれる。

    今後の見通し

    ■2月の企業倒産、件数は月ベースで過去3番目の低水準

    2021年2月の倒産件数(442件、前年同月比30.3%減)は、7カ月連続で前年同月を下回った。金融機関による中小企業への資金繰り支援策などの効果が続くなか、月ベースでは2020年5月(288件)、2000年1月(354件)に次ぐ2000年以降3番目の低水準となった。
    負債総額(777億4500万円、同17.1%増)は、7カ月ぶりに前年同月比で増加。負債10億円以上の倒産(18件)が前年同月(11件)の1.6倍となり負債総額を押し上げた。

    ■長期的な資金繰り対策が増加、中小は支援策が追い付かないケースも

    コロナ禍の長期化を見据えた企業の資金繰り対策が多様化している。不測の事態へ備え、円滑な資金調達を目的とする「コミットメントライン契約」を金融機関と締結する上場企業が増加。2020年に同契約締結を公表した上場企業は前年比4.6倍(185社)に達した(「上場企業のコミットメントライン契約動向調査(2020年)」帝国データバンク、2021年2月発表)。また、税制上中小企業の扱いとなる資本金1億円以下に減資し、税負担の軽減による資金繰り改善を目指す動きも、観光や飲食関連の大手企業で散見される。
    企業の資金繰りを支える各種支援策が展開されるなか、急激な売上減少に対策が追い付かず、息切れするケースも出ている。趣味の雑誌・書籍の出版を手がけていた(株)枻出版社(東京都、民事再生、負債57億8800万円)は、出版事業が低迷するなか金融機関から支援を受けるも、コロナ禍で集客イベント関連事業や広告収入が激減、2月の負債額最大の倒産となった。また、冷凍マグロなどの卸売を手がける(株)海商(静岡県、民事再生、負債16億7400万円)は、コロナ禍で金融機関の支援を取り付けていたものの、時短営業などで厳しい経営が続く飲食店向けの受注が低迷し自力再建を断念した。

    ■建設業の倒産件数、過去最低水準ながら懸念材料も

    建設業の年度ベースの倒産件数に目をむけると、土木工事や木造建築工事を中心に倒産が減少した結果、2月までの累計は1068件と前年同期比19.0%減となった。建設業の倒産はリーマン・ショックの影響を受けたピーク時の2008年度には3556件を記録。その後、倒産件数は総じて減少基調をたどり、2020年度はピーク時から6割以上減少し過去最低になると見込まれる。
    他方、懸念材料もある。2020年の新設住宅着工戸数は、前年比9.9%減の81万5340戸と4年連続で減少。2021年1月も前年同月比3.1%減と19カ月連続で前年同月を下回った(国土交通省)。分譲住宅が15カ月ぶりに前年同月比で増加したものの、金融機関の審査厳格化などを背景にアパートなどの貸家が低迷。同建築に特化した業者は、コロナ禍における対面型営業の見直しをはじめ、業態転換への対応などが注目される。

    ■2020年度の倒産件数は過去最低水準の見込み、倒産抑制のひずみ解消が課題に

    新型コロナの新規感染者数は一定の落ち着きをみせ、加えて国内でのワクチン接種拡大などを背景に経済活動が正常化にむかうことが期待されている。国をあげた新型コロナ対応の資金繰り支援策が奏功するなか、年度ベースの倒産件数は、2020年4月~2021年2月累計で6666件(前年同期比13.8%減)に抑制された。
    宿泊業の倒産が年度ベースで2月までに累計114件発生し、すでに前年度(75件)の1.5倍に達するなど、業種によって明暗が分かれる課題を抱えているものの、2020年度の倒産件数は前年度(8480件)から減少し、過去最低水準となる見込みになった。他方、借入金の返済猶予等で支えられている企業を中心に、業況回復や業態転換等への取り組みが課題となっており、倒産抑制が続く水面下で生じているひずみと反動を注視したい。

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