レポート倒産集計 2019年(1月~12月)

2020/01/14

倒産件数は8354件、2年ぶりの前年比増加
負債総額は1兆4135億8500万円、2000年以降最小

倒産件数

8354件

前年比

+3.6%

2018年

8063件

負債総額

1兆4135億8500万円

前年比

▲13.0%

2018年

1兆6255億5200万円

主要ポイント

  • ■2019年の倒産件数は8354件(前年8063件、前年比3.6%増)と、2年ぶりの前年比増加
  • ■負債総額は1兆4135億8500万円(前年1兆6255億5200万円、前年比13.0%減)と最小だった前年をさらに下回り、比較可能な2000年以降で最小
  • ■業種別に見ると、7業種中6業種で前年を上回った。このうち小売業(1945件)は前年比7.0%増と件数全体を押し上げた。なかでも飲食店(732件)は過去最多となった
  • ■主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は6615件(前年比2.7%増)となった。構成比は79.2%(同0.7ポイント減)を占める
  • ■負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は5163件(前年比3.8%増)となった。構成比は11年連続で上昇し、比較可能な2000年以降最高の61.8%を占める
  • ■地域別に見ると、9地域中7地域で前年を上回った。東北(403件、前年比14.8%増)は3年連続の増加。関東(2981件、同3.6%増)は7業種中5業種が増加
  • ■「人手不足倒産」は185件(前年比20.9%増)、4年連続で最多を更新
  • ■「後継者難倒産」は460件(前年比14.7%増)、6年ぶりに最多を更新
  • ■「返済猶予後倒産」は524件(前年比22.4%増)、6年ぶりの高水準
  • ■負債トップは、MT映像ディスプレイ(株)(大阪府、特別清算)の約1050億円

■件数

2年ぶりの前年比増加

2019年の倒産件数は8354件(前年8063件、前年比3.6%増)と、2年ぶりに前年を上回った。また月別では12カ月中9カ月で前年同月を上回り、とくに下半期で増加が目立った。
2019年の上場企業倒産は、ジャスダック上場の洋菓子製造・販売を手掛ける(株)シベール(民事再生法、山形県、1月)の1件のみ。

■負債総額

2000年以降最小を更新

2019年の負債総額は1兆4135億8500万円(前年1兆6255億5200万円、前年比13.0%減)と最小だった前年をさらに下回り、比較可能な2000年以降で最小となった。月別では、12カ月中6カ月で前年同月を下回った。
負債トップは、パナソニック(株)の連結子会社で、ブラウン管の映像ディスプレイ装置などを製造していたMT映像ディスプレイ(株)(大阪府、特別清算、2月)の約1050億円。

■業種別

小売業、製造業など6業種で前年比増加

業種別に見ると、7業種中6業種で前年を上回った。このうち小売業(1945件)は、人件費の上昇や個人消費の低迷が影響し、前年比7.0%増と件数全体を押し上げた。なかでも飲食店(732件)は過去最多の件数となったほか、家具小売(29件、前年比123.1%増)などでも増加が目立った。製造業(952件、同2.7%増)は、原材料費の高騰などの影響でパルプ・紙・紙加工品製造業(24件、同71.4%増)や繊維製品製造(78件、同52.9%増)などが増加し、2009年以来10年ぶりの増加に転じた。

■主因別

「不況型倒産」の構成比79.2%

主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は6615件(前年比2.7%増)となった。構成比は79.2%(同0.7ポイント減)を占めた。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

■規模別

負債5000万円未満の構成比61.8%、2000年以降最高

負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は5163件(前年比3.8%増)となった。構成比は11年連続で上昇し、比較可能な2000年以降最高の61.8%(同0.1ポイント増)を占めた。負債1億円以上の倒産(2047件、同4.2%増)は10年ぶりの増加に転じた。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産は5597件(前年比6.2%増)、構成比は67.0%(同1.6ポイント増)を占めた。

■地域別

東北、関東など7地域で前年比増加

地域別に見ると、9地域中7地域で前年を上回った。東北(403件、前年比14.8%増)は復興需要の落ち着きなどから3年連続の増加で、東日本大震災のあった2011年(446件)以来の400件超。関東(2981件、同3.6%増)は7業種中5業種が増加し、建設業や小売業の増加が目立った。四国(180件、同20.8%増)は建設業と製造業が大幅に増加した。
一方、2地域は前年を下回り、中部(1156件、前年比6.5%減)は5業種で減少。なかでも製造業(137件)や卸売業(121件)は比較可能な2000年以降で最少となった。また、北海道(213件、同1.4%減)は、2年連続の前年比減少となった。

■態様別

民事再生法は2年連続の前年比増加

態様別に見ると、会社更生法は1件、破産は7716件(構成比92.4%)、特別清算は286件(同3.4%)となった。民事再生法は351件(同4.2%)と、2年連続の前年比増加。

■特殊要因倒産

人手不足倒産

2019年は185件(前年比20.9%増)、4年連続で最多を更新

後継者難倒産

2019年は460件(前年比14.7%増)、6年ぶりに最多を更新

返済猶予後倒産

2019年は524件(前年比22.4%増)、6年ぶりの高水準

今後の見通し

■倒産件数は2年ぶり増、粉飾発覚による倒産が続発

2019年1~12月の倒産件数(8354件、前年比3.6%増)は、小売業(1945件、同7.0%増)の倒産が件数全体を押し上げたことなどから、2年ぶりの前年比増加となった。昨年10月には5年半ぶりに消費税率が引き上げられ、消費者のさらなる節約志向の高まりも懸念されるなか、飲食店の倒産(732件、同12.1%増)は過去最多を記録。地域人口の減少などから食品スーパー、飲食料品小売のほか、病院、診療所などの医療機関でも倒産が増加した。製造業は10年ぶりに増加に転じ、建設業は前年比横ばいで連続減少が10年でストップした。また、負債総額は1兆4135億8500万円と、負債1000億円超の倒産が1件にとどまったことなどで過去最小を更新。2019年も小規模倒産が大半を占める傾向は続いたものの、負債1億円以上の件数(2047件、同4.2%増)が10年ぶりの増加に転じるなど、変化の兆しがみられた。
2019年は不適切な会計処理が発覚した企業による倒産事例が目立った。アパレルブランド「J.FERRY」展開の(株)リファクトリィ(5月、東京都)、子供服店「motherways」経営のマザウェイズ・ジャパン(株)(6月、大阪府)、飲食店経営の(株)ひびき(8月、埼玉県)など続発。融資エリアを拡大した地銀や信金など含め、20前後にもおよぶ複数金融機関から融資を受けた都市部の企業で、負債数十億円規模の倒産が相次いだ。

■事業承継問題の深刻化で「後継者難倒産」が過去最多

後継者不在による事業継続の断念などが要因となった後継者難倒産は2019年に460件発生。これまで最多だった2013年の411件を6年ぶりに更新し、負債総額は487億9200万円にのぼった。代表の体調不良などから経営意欲を失い事業継続を断念した企業や、後継者不在により当初廃業を予定していた企業でも、債務超過から倒産に追い込まれたケースなどが散見された。
全国銀行協会と日本商工会議所は2019年12月、2013年策定の「経営者保証に関するガイドライン」を補完するため、金融機関が事業承継時に新旧経営者へ保証を求める二重保証を原則禁止とする特則(今年4月より適用)を公表。今後は同ガイドラインが積極的に運用されることなどにより、円滑な事業承継が進むとみられるものの、後継者不在のまま業績不振が続く中小企業などは多く、今後の動向が注目される。

■国内外にリスク要因多く、倒産増加懸念強まる

金融機関から返済条件の変更等(リスケジュール)を受けながら、継続支援が困難となった企業などの返済猶予後倒産は、2019年に524件(前年比22.4%増)と6年ぶりの高水準となった。金融機関の収益環境が厳しさを増すなか、2019年12月には金融検査マニュアルが廃止されるなど、各金融機関は融資、支援に対するスタンスを変えざるを得なくなっている。2019年の民事再生件数(351件、同39.3%増)の増加などからも、スポンサー先選定などで早期再生を目指す動きの高まりがうかがわれ、事業の将来性を重視した支援姿勢の広がりがみられる。
今年4月からは約120年ぶりの見直しとなる改正民法(債権関係)が施行され、中小企業への融資における経営者以外の第三者個人保証について、第三者による保証意思確認手続き(公正証書作成)の徹底がルール化される。すでに2011年の金融庁による監督指針など受け、第三者個人保証は原則禁止にあることから、大きな混乱はないと想定されるものの、法制化により今後は零細企業や個人事業主の借入などに影響が出てくる可能性もある。
人件費や物流費、原材料費などの上昇や高止まりで、中小零細企業ほど負担感は強い。中東情勢の緊張の高まりによる原油価格への影響や、為替や株価動向も不安視され、各種リスク要因には引き続き注視を要する。今後の倒産件数は、人口や企業数の減少、産業構造の変化などとも相俟って、緩やかな増加トレンドを辿る可能性が高まっている。

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