倒産件数は708件、18カ月連続の前年同月比減少
負債総額は1601億円、2カ月ぶりの前年同月比減少
倒産件数 | 708件 |
---|---|
前年同月比 | ▲12.5% |
前年同月 | 809件 |
前月比 | +9.4% |
前月 | 647件 |
負債総額 | 1601億円 |
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前年同月比 | ▲46.9% |
前年同月 | 3016億9600万円 |
前月比 | ▲10.7% |
前月 | 1792億4600万円 |

主要ポイント
- ■倒産件数は708件で、前年同月比12.5%の大幅減少となり、18カ月連続で前年同月を下回った。2ケタの大幅減少は4カ月連続となり、1月としては2005年(691件)に次ぐ低水準となった
- ■負債総額は1601億円で、前年同月から46.9%の大幅減少を記録するとともに、2カ月ぶりに前年同月を下回った
- ■業種別に見ると、7業種中5業種で前年同月を下回った。なかでも建設業(117件、前年同月比30.4%減)は28カ月連続の前年同月比減少を記録したほか、卸売業(103件、同20.2%減)が14カ月連続の前年同月比減少となった
- ■主因別に見ると、「不況型倒産」の構成比は83.8%となった
- ■「円安関連倒産」は34件(前月44件)判明、負債総額は集計開始以降の最大を記録
- ■負債額別に見ると、負債5000万円未満の構成比は58.6%と2000年以降で最高となった一方、負債10億円以上の倒産は13件で、ピーク時(132件、2002年2月)の10分の1
- ■地域別に見ると、9地域中7地域で前年同月を下回り、なかでも近畿(163件、前年同月比30.3%減)は30%以上、中部(88件、同27.9%減)など3地域は20%以上の大幅減少
- ■東証1部上場のスカイマーク(株)(東京都)が民事再生法の適用を申請、2013年8月のワールド・ロジ(株)(大阪府、破産)以来、17カ月ぶりに上場企業倒産が発生した
- ■負債トップは、スカイマーク(株)(東京都、民事再生法)の710億8800万円
調査結果
■件数・負債総額
ポイント件数は18カ月連続前年同月比減少、負債総額は2カ月ぶりの前年同月比減少
倒産件数は708件で、前年同月比12.5%の大幅減少となり、18カ月連続で前年同月を下回った。2ケタの大幅減少は4カ月連続となり、1月としては2005年(691件)に次ぐ低水準となった。負債総額は1601億円で、前年同月から46.9%の大幅減少を記録するとともに、2カ月ぶりに前年同月を下回った。
要因・背景
件数…公共工事の増加を背景に、建設業(117件、前年同月比30.4%減)が土木工事を中心に大幅減少し、28カ月連続の前年同月比減少を記録
負債総額…スカイマーク(株)の負債710億8800万円だけで4割以上を占める
■業種別
ポイント7業種中5業種で前年同月比減少
業種別に見ると、7業種中5業種で前年同月を下回った。なかでも建設業(117件、前年同月比30.4%減)は28カ月連続の前年同月比減少を記録したほか、卸売業(103件、同20.2%減)が14カ月連続の前年同月比減少となった。一方、製造業(113件、同13.0%増)が11カ月ぶりの前年同月比増加となったほか、運輸・通信業(36件、同2.9%増)も前年同月を上回った。
要因・背景
- 1. 建設業…公共工事の増加を背景に、土木工事(10件、前年同月比58.3%減)を中心に減少、117件は2000年1月(101件)以来の低水準
- 2.卸売業…全体では減少も、飲食料品(31件、前年同月比19.2%増)などでは増加
■主因別
ポイント「不況型倒産」の構成比83.8%
主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は593件(前年同月比12.8%減)となった。構成比は83.8%(前月80.7%、前年同月84.1%)と、前月を3.1ポイント上回ったものの、前年同月を0.3ポイント下回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、 業界不振を「不況型倒産」として集計
要因・背景
- 1.「返済猶予後倒産」は前年同月と同数となる33件判明
- 2.「円安関連倒産」は34件(前月44件)判明、負債総額は集計開始以降の最大を記録
■規模別
ポイント負債10億円以上の倒産がピーク時の10分の1に
負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は415件で、前年同月を9.4%下回ったものの、構成比は58.6%と2000年以降で最高となった。一方、負債10億円以上の倒産は13件で、2000年以降のピークとなる2002年2月(132件)の10分の1にとどまった。資本金別では、個人経営と資本金1000万円未満の合計が423件、構成比は59.7%を占めた。
要因・背景
- 1. 負債5000万円未満の倒産、業種別では建設業(71件、前年同月比28.3%減)で大幅減少
- 2. 大企業・中堅企業の業績回復や資金繰り改善を受け、大型倒産の抑制状態が続く
■地域別
ポイント9地域中7地域で前年同月比減少
地域別に見ると、9地域中7地域で前年同月を下回り、なかでも近畿(163件、前年同月比30.3%減)は30%以上、中部(88件、同27.9%減)など3地域は前年同月比20%以上の大幅減少となった。一方、四国(15件、同36.4%増)、関東(272件、同6.7%増)の2地域は前年同月を上回った。
要因・背景
- 1. 近畿は、兵庫県を除く5府県で建設業を中心に大幅減少し、6カ月連続の前年同月割れ
- 2. 中部は、愛知県が全7業種で減少し、前年同月を44.3%大きく下回る
■上場企業倒産
東証1部上場のスカイマーク(株)(東京都)が民事再生法の適用を申請、2013年8月のワールド・ロジ(株)(大阪府、破産)以来、17カ月ぶりに上場企業倒産が発生した。
2014年度の上場企業倒産は1件で、依然として低水準にとどまっている。
■主な倒産企業
負債トップは、スカイマーク(株)(東京都、民事再生法)の710億8800万円。(株)千葉国際カントリークラブ(千葉県、民事再生法)の56億9100万円が続く。
スカイマーク(株)の負債710億8800万円は年度内で最大。
■景気動向指数(景気DI)
景気DIは43.9、悪化傾向に歯止め
2015年1月の景気DIは前月比0.9ポイント増の43.9となり6カ月ぶりに改善した。1月の国内景気は、1.原油価格急落による好影響の広がり、2.円安によるインバウンド消費の拡大が特徴的に表れた。ガソリンスタンドなど一部の小売業界では、原油価格の急落により、販売価格の値下げよりも仕入価格の低下スピードが速く進んだタイムラグによる収益回復もみられ、前月まで限定的だった影響が徐々に広がりをみせている。また、円安傾向の継続は訪日観光客の増加につながっており、飲食店や家電小売などで好調な売れ行きを示した。ただし、輸出企業への円安効果は地域間でバラツキがみられ、メリットを大きく受けた『九州』では大企業の景況感が全国で最も大きく改善した。国内景気は、原油価格の急速な下落にともない企業のコスト負担軽減効果が徐々に表れはじめるなど外部要因が改善したことで、悪化傾向に歯止めがかかった。
今後は外部要因の改善が内需を補い、横ばい圏内で推移
原油価格下落によるコスト負担軽減という好影響が、徐々に広がっていくとみられる。また、2014年度補正予算の執行や法人実効税率の引き下げなどの経済対策はプラス材料といえよう。さらに、地方創生が動きはじめ、地域経済の回復に向けた動きが活発化すると予想される。円安傾向はメリット・デメリット双方の要因をはらみ、輸出拡大や原材料価格上昇で、企業活動への影響が二極化する可能性もある。また、人手不足は今後も継続するとみられるほか、統一地方選による公共工事執行への影響や賃金動向にも注視する必要があろう。今後は、力強さに欠ける内需を外部要因の改善が補いつつ、おおむね横ばい圏内で推移すると見込まれる。
今後の見通し
■17カ月ぶりに上場企業の倒産が発生
東証1部上場のスカイマーク(定期航空運送)が、1月28日に民事再生法の適用を申請した。上場企業の倒産としては、今年に入って初めてであるとともに、2013年8月に倒産したワールド・ロジ(総合物流サービス、破産)以来、17カ月ぶりのこととなる。株価上昇や、量的金融緩和政策などを背景に、資金調達環境が大きく改善し、2014年は1990年以来24年ぶりに上場企業の倒産が発生していなかったこともあり、同社の倒産はインパクトがあるものとなった。
スカイマークの倒産要因の一つに、為替の急激な変動による採算悪化がある。航空機の調達に海外のリース会社を利用していたため、円安でドル建てリース料の支払いが大きな負担となったこと、また、燃料の調達コストが嵩んだことが、破綻のきっかけとなった。スカイマークの倒産は航空業界における“円安の負の部分が倒産に結びついた事例”と言えよう。1月の「円安関連倒産」は前月比減少に転じているが、今後、幅広い業界に円安の影響が及ぶ可能性もある。
■「医療法人」が中小企業再生支援協議会の支援対象に
2月2日、中小企業庁は、中小企業再生支援協議会事業が対象とする「中小企業者」に「医療法人(常時使用する従業員数300人以下)」を追加したと発表。これまで、地域住民の生活・雇用に大きな影響を与えると想定される大規模医療法人については、地域経済活性化支援機構が支援をしてきた。しかし、それでは収益低迷や過大な借入負担に悩む小規模医療法人に支援が行き届かないことになる。これを問題視する声は多く、全国地方銀行協会も「高齢化の進展もあり、医療法人の存在は地域の維持・活性化に不可欠だが、その経営環境は人口減少に伴い厳しさを増している」として、医療法人を中小企業再生支援協議会の支援対象に加えるよう、2014年10月に規制改革会議へ要望を提出していた。
数字でも小規模医療法人の厳しさが浮かび上がる。2014年の「病院・開業医」の倒産件数(29件)は前年比減少したが、休廃業・解散を見ると、347件(前年比12.7%増)判明しており、集計可能な2003年以降で最多。そのうち219件(構成比63.1%)が年収入高1億円未満である。また、帝国データバンクが2014年11月に発刊した『全国企業財務諸表分析統計(平成25年4月~平成26年3月)』でも、「医療業」の自己資本比率の平均が38.34%であるのに対し、総資本1億円未満の「医療業」は30.54%と8ポイント程度下回っている。設備投資負担から過剰債務を抱えているケースが散見され、支援を必要としている小規模医療法人は多いと言えよう。
■企業倒産件数は減少傾向が続くも、突発的な大型倒産に警戒
2015年1月における建設業の倒産件数は、前年同月比30.4%の大幅減少で117件となった。これにより、2012年10月以降28カ月連続で前年同月を下回り、2000年以降の最長記録を更新し続けている。2000年1月(101件)以来の低水準となっており、100件割れも視野に入るほど減少傾向が鮮明だ。企業倒産全体の件数でも18カ月連続で前年同月割れが続いている。円安に伴う原材料価格や労務費の高騰は依然として続いているものの、昨年夏場から続く原油価格の下落がそれらのコスト上昇分と相殺する格好となっており、中小企業の経営環境を下支えしているとみられる。とはいえ、中小企業におけるコスト上昇分の価格転嫁は、進んでいる企業と進展がない企業と二極化してきている。原油価格が反転すれば、さらにコストが上昇することは明らか。また、急激な為替変動、中国・欧州経済の失速といった海外情勢の変化や、物価上昇に賃金上昇が追いつかない場合の個人消費の冷え込みといった懸念材料もある。2015年も企業倒産件数の急増は想定しづらいが、スカイマークのように、こうした懸念事項の影響を大きく受けた突発的な大型倒産を警戒しなければならない状況は続くであろう。